後輩の夜事情(2/5更新)

狂言巡

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関係

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 先輩の稔央みのおと何となく肉体関係を結んで半年が経つ。辛いとも悲しいとも思わないし、最中はただただ夢中になれるけれど、ふとした時に襲い来る空虚感だけはどうにもならない。
 例えばバンダナで前髪を上げる、タオルの柄を変えてみる。極めて『そう見える』ように夜の誘い方に意味合いを持たせてみた。それが経過と行為で発散された時、虚無感だったり、空虚感だったり、ただ漠然とした空しさが渚の心を席巻した。それでも半裸のまま気持ち良さそうに惰眠を貪るだらしない顔を見れば、幸せだなんてシンプルな答えに帰結するのだ。要するに渚は稔央が好きで、それ以外の事は些末な事であると、渚本人すら自認していた。

「ミノさん、おはよーございます」

 揺り動かすも、起きる気配はない。優しさを持って起こすのは、精々あと三ラリー程。最近では起こし方もマンネリを感じ、バリエーションをつけたくなってきた。

「ミノさん、」

 頬をつつく。

「おはよーございます」

 腕を叩く。

「起きて」

 布団を剥がす。唸り声がするも、完全覚醒には至らない。タイムアウトだ。元々そんなに気の長い方ではない。特に、この男に関しては。さあ何を試そうか。自分の労力を大して使わず、確実に恋人が飛び起きる方法――。耳元に

「ミノさん、エッチしよ」
「……へ、あっ!?」

 耳元へ吹き込んだ睦言が決め手となるのも情けない。しかし効果は覿面だった。飛び起きた稔央の丸く開いた口からは涎の軌跡がついている。

「ほら、また遅刻しますよ。ちゃっちゃと支度しましょーね」
「は……ちょっと待って渚ちゃん……そーいう起こし方は良くないと思う……」
「ほんなら一回で起きて下さい。ていうかそもそも自分で起きなさい、大人でしょ」
「夜、覚えてろよ……」

 歯噛みする稔央が捨て台詞を吐いてベッドから滑り落ちる様は、純粋に愉快だった。示し合わせも明確な名の関係でも、それなりに歳を重ねた二人して拙いワルツ踊っているのも悪くないと思うのだ。
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