理想世界の創り方

無限キャラ

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超時空城へのインタビューとそのまとめ

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甘太郎たちの失敗を知った不自由な世界解放会議のメンバーたちは、けんけんがくがくの議論を続けていた。


「なんてことだ! あんなに甘太郎ちゃんががんばったっていうのに!許さないわ!あたし」


「そうだよ、いくらなんでもあれは酷すぎるよ。もう強制的にボスどもを鎮圧した方がいいんじゃね?」


「なんとかならないの?」


「そうは言っても物質世界というのは、世界や肉体の基本仕様に不自由な制限がありすぎて難しいんだよ」


「だから、それならその基本仕様を変えたらいいじゃないの!」


「だからそれをやると、生存本能一族が激怒して俺たちが訴えられたりするんだって」


「そんなこと言ったって、その生存本能の作りがそもそもダメなんでしょう?」


「それはそうだけど、それでも生存し続けたいと本気で望んでしまっているんだから、その願いを無碍にもできないだろう?」


「じゃあ、どうするのよ」


「どうって、何で俺に聞くんだよ。先生に聞けばいいだろう!」


そんな逃亡者同士のけんけんがくがくのテレパシー会話に先生と呼ばれる超時空城の意識体が参加してきた。


「どうすればいいか……それを皆で考えるのがこの不自由な世界解放会議のまあ、目的であるわけなんで答えはこれから一緒に考えてゆくというスタンスでいるといいよ。

君たちの不自由な世界でのいろいろな体験などが役立つ可能性があるんだから、どうすればいいのかの答えを君たちが考えることも大事なことだよ。


ただそうだねえ、目指すべき方向性はもう決まっているんだよ。


あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる状態を実現する方向に進化すればいい。

そこは決定事項だから、あとは、どうすればそうした状態を実現できるかってことを考えればいい。


つまりゴールはすでに明確になっているんだよ。


そのゴールに至る方法が、いろいろなタイプの不自由な世界があるから、まだ決まっていないだけなんだよ」


そうした説明を聞いて、


「なるほど、であればそんなに難しくないのかもしれないなあ……」


などと逃亡者たちは思い始める。


「そう、考える方向性はとても単純、でも、不自由な世界側にいろいろな難しい障壁があるって感じだね」


「よくぞまあ、これほどまでに難しくしやがったものだよなあ……」


「不自由な世界のボスたちにとっては、それが生きがいだったんだろうなあ……」


「そんな風に考えると、なんだかちょっとかわいそうになってきちゃうわね」


「何言ってんだよ! 俺がどれだけ酷い目にあったと思ってるんだよ!甘すぎるよ、おめーはよ!]


「まあまあ、そう激高しないで、今は問題解決の方法を考えることに集中しようよ」


超時空城でいろいろなことを学び成長したらしく結構まじめなことを言う者もいる。


「ねえねえ、じゃあ、ほら、この超時空城の仕組みをそっくりコピーして不自由な世界に貼り付けちゃったらいいんじゃない?」

「お前なあ、そんな簡単にできるわけないだろう」


「いやいや、今のアイデアはなかなかいいよ、確かにそっくりそのまま貼り付けちゃうってのは無理でも、ここでうまくいってる仕組みをできるだけ不自由な世界に可能な範囲で展開することならできるからね」


「へー、できるんだ…ならやれば?」


「おいおい、そんな他人事みたいな言い方やめろよな」


「じゃあ、あたしが超時空城にインタビューして基本仕様を聞き出すから、あなたたちはメモでも取っておいてよね」


「えー、俺たちをメモ係にするわけ?」


「だって、みんなで一度にインタビューなんてできないでしょう?」


そんな会話があり、超時空城がインタビューを受けることになってしまった。


超時空城は独自の意志をもっていて、超時空体たちが複数体で運営していた。


現在の超時空城の代表管理超時空体は、とある不自由な世界を改革するために自主独立の精神を掲げて世界から税金というものを廃止し、誰もが自主独立した生活ができるようにするために個人用完全自立型宇宙船の研究開発中に宇宙船事故で亡くなったピレネー君だった。

その個人用完全自立型宇宙船は、後にその不自由な世界の市民すべてに配給されるようになり、その結果、誰もが自分の個人用宇宙船で完全自給自足できるようになったのだ。


その宇宙船は、水陸空宇宙のあらゆる場所を自由に移動できる仕様になっていた。


その孫のピレニー君とムゲンがその宇宙船で遭遇したことが超時空体験図書館に記録されている。
(詳しくは無限世界の無限キャラ本編参照)


そのピレネー君は、その命がけの不屈の精神が評価されて今は超時空城の管理をしていたのだ。
時々、同じく超時空体のコメットさんなども担当している。


そして逃亡者のインタビューがはじまった。


「あの、ぶしつけですけど、超時空城様、インタビューさせてもらってもいいでしょうか?」


超時空城は、笑いながらうなづいている。逃亡者たちのテレパシー会話をすでに聞いていたらしい。


「ではですね、初めの質問なんですが、超時空城様は、どんな食べ物がお好きですか?」


他の逃亡者が、


「おいおい、なんだその質問は…ちょっと待て!」などと騒いでいる。


しかし超時空城様は動じない。


「うん、そうだなあ……良い意志が好きかなあ……」などと答えている。


「え? 良い意志ですか? それって食べれちゃうんですか?」


「うん、知らなかったかな? 君たちも今、僕のお腹の中にいるんだよ」


「そ、そんな……あたしたち、食べられちゃってたわけですか?」


「いやいや、食べるというと語弊があるけど、超時空城は皆の良き意志によって存在しているわけだから、似たようなものかなと思うんだけど抵抗ある?」


「抵抗……ですか……それはなんともあるようなないような……」


「まあ、抵抗があれば、別の時空間を紹介してあげることもできるんだけど、希望があれば申し出てくれていいよ」


「そ、それは特に不満もありませんので、申し出はしません」


「それはよかった、君たちをここに無理に閉じ込めておく気はないんで、いつでも不満があれば申し出してもらいたいね」


「それって、あれですか? こことは別に他の超時空城もあるってことなんですか?」


「そりゃあ、超時空世界には私たち以外にも超時空体たちがたくさんいるわけだからね、他にも超時空城はたくさんあるんだよ」

「そ、それは知りませんでした…すごいですね」


「そうかな、普通だと思うけどね」


「そうなんですか……ちょっとあなたたちちゃんとメモとってる?」


「とってるよ、超時空城様は、他にもたくさんいるってメモしたよ」


「まあ、実際には超時空体がたくさんいるわけなんだけどね、管理する超時空体の構成が変わると超時空城の仕様などが変わったりもするんだよ」


「へー! そうなんだ……なんだかそれって王様が変わると国の雰囲気も変わるみたいな感じですか?」


「なかなかいい理解だね、確かにそれに似ているところはあるね」


「え? じゃあ、変な……というか、ダメな超時空体様とかが管理者になったらまずいんじゃないですか?」


「そこはまあ、超時空体だからね、あんまりダメなのはいないから安心していいよ」


「あんまりって、たまにはいたりもするんですか?」


「それはまあ、自由意志がある以上、低確率でだけど、変なのもたまには生まれてくるかもしれないけど、今のところはみんな信頼できる良い意志をもっているから心配しないでもいいよ」


「それってなんだかちょっと不安ですよねえ」


「でも未来永劫、絶対大丈夫とも言えないからなあ……もし不安なら君たちが良い意志をもつ超時空体に進化してくれるとありがたいんだけどね」


「その良い意志って、どんな意志のことを言ってるんですか?」


「ああ、そうだね、それを説明しないとわからないよね。良い意志とは、今の時点ではあらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれるように目指す意志みたいな定義になっているよ。

でも、この定義は、もっと良い意志が見つかったら進化してゆく定義でもあるんだよ」


「良い意志の定義が進化するんですか……」


「そうさ、だって君たちの望みや願望も変化するし、世界も変化してゆくからね、良い意志の定義もその変化に応じて変化してゆく可能性があるわけだよ。まあ、ちょっとやそっとの変化ではそうそう変わらないけどね」


「良い意志の定義ってそんなに不安定なものだったんですか?」


「いやいや、不安定なのは私たち体験者なんだよ。私たち体験者の願いが正反対の願いになることも何兆年とかの規模ではよくあることなんだよ」


「何兆年って……そんな先のことまで考えなきゃいけないんですか?」


「いやいや超時空世界では、何兆年も一年も変わらないんだよ」


「そんなことってあるんですか? 信じられません!」


「まあ、今の君には信じられないことかもしれないけど、超時空体になればわかるようになるよ」


「超時空体になるのにはどれくらいかかるんですか?」


「そうだなあ、まあ少なくとも今の君たちなら数億年くらいはかかるかもなあ」


「いくらなんでも数億年とか…かかりすぎではないですか?」


「そうかなあ……時のない部屋で修行すればすぐだよ」


「いや、なんか、それって怖いですけど……」


「怖いといえば怖いのかもしれないけど、遅かれ早かれ進化するんなら怖い体験も多少はしなきゃならなくなるからなあ」


「なんで楽しいだけの体験じゃダメなんですか? あたし、怖いのやだな……」


「いや、あくまで必要ならばって話で、怖い体験をしなくてもあらゆる場面で良い選択ができるようになれるなら怖い体験をしなくてもいいともいえるんだけど、体験しないとわからないことっていうのもあるからねえ」


「じゃあ、あたしが怖い体験なんてしなくてもあらゆる場面で良い選択ができるような道を切り開けばいいんですよね」


「そうだねえ、そうしてくれると助かるねえ、君、なかなかいい心構えをしているじゃないか」


「あら、そうですか? そんなこと言われたらやる気になっちゃうじゃないですか」


「まあ、これでも超時空体だからね、君たちをやる気にさせるのが仕事でもあるんだ」


「まあ、こっそり私を教育していたってことですか?」


「いや自然体でそうなってしまうんだよ」


「では、自然体でそうなるまでずっと修行をされたということですか?」


「まあ、修行と言えば修行だったのかもしれないけど、まあ当時はそれが修行だとも思っていなかったけどね…」


「なんだか複雑な心境です……」


「まあ、君たちは避難してきたばかりだし、そんなに難しく考える必要はないよ」


「ありがとうございます。それじゃあ、次の質問に移っても良いでしょうか?」


「良いよ、良いよ、ご自由にどうぞ」


「ではですね、あ、そうそう、あれです……超時空城様の基本仕様といいますか、仕組みはどうなっているのでしょうか?

できれば、不自由な世界にコピーして貼り付けたいんですけど…」


「あははは、なるほど、良いアイデアだね。

すでに言ったように、超時空城は良き意志で維持されているんだよ。つまり、君たちのその不自由な世界に良き意志を増やせばいいってことになるかな…」


「え? でも良き意志って進化してしまうんでしたよね」


「あはは、確かにそれはそうなんだけど、君たちが体験者であるうちはそう簡単には進化しないから安心していいよ」


「そうなんですか? 体験者? あたしたちが体験者でなくなることもあるってことなんですか?」


「だから、それは当分はないからそこは今は深く考えすぎなくても大丈夫だよ。何兆年規模での話だから」


「あーもう、なんだかもうよくわからなくなってきましたけど……超時空城様がそうおっしゃるのなら、深く考えないことにしますね」


「うんうん、今はその方がいいよ」


「で、ではですね、えーと、そうそう、良き意志を増やせばいいんでしたよね。で、良き意志とはあらゆる体験者が自分の意志だけで自分の体験を自由に選んで楽しみ続けれる世界を実現しようとする意志と……

それであってますか?」


「うん、今のところはね、もっと良い意志があると主張する者があらわれて自業自得検証システムで合格となれば、変わるかもしれないけど、まあ、当分は変わらないと思うよ」


「あの、勇者たちが全滅しているというあれですか?」


「でもわからないよ。ひょっとしたら突然、合格者が出るかもしれないし……」


「なるほど、では、良き意志とはその自業自得検証システムというものを使って調べればいいわけですか…」

「うんうん、昔はそうしたシステムがなくて大変だったんだよ。いちいち大失敗の歴史を繰り返していたから、それはもうたくさんの犠牲者が出続けていたんだよ」


「それは大変ですね、自業自得検証システム……ありがたいですね、感謝です」


「まあ、そうしたシステム装置を使わなくても、君たちの想像力を使ってもかなりの程度検証できるようにもできるから、簡単な検証は想像力でやればいいよ。それならいちいち失敗して大変な思いをしなくてもいいからね」


「それってどういう感じで想像力を使えばいいんですか?」


「それは、君たちの世界にいるすべての体験者を自分自身だと想像すればいいだけだよ。それで自分がどうしても嫌だと思うような状況が発生するような政策とかルール決定とか改革とかはしないようにすればいいんだよ。まあ、想像するだけじゃあ完璧に相手の立場に立つことはできないんだけど、かなりの程度までなら想像力だけでおよその予測ができるからね」


「なかなか想像力って便利ですね」


「うんうん、ぜひ活用すればいいよ」


「えっと、ありがとうとざいます。他にはどんな仕組みがあるんですか?」


「そうだねえ、後は選択の自由が保障提供されている点とかかな」


「選択の自由?」


「うん、君たちのような体験者たちが、自分の体験や運命を自由に選べるようになっているね」


「完全に自由なんですか?」


「あはは、完全という言葉の意味次第だけど、他の体験者の同じ権利を侵害するような選択は自由ではないかな」


「なるほど、体験者同士は公平に体験選択の権利を尊重しあう必要があると……」


「なかなか飲み込みが早いね、君はなかなか素質があるかもしれないよ」


「またまた~、そんなにおだてても何も出ませんよ、超時空城様ったら!」


「いや自然にほめたくなっただけなんだけどねえ」


「自然体の超時空城様も素敵ですよ」


「おいおい……」というざわめきが周囲に生じた。


「外野が騒ぎ始めているので、お仕事続けますね、後でデートしてください」


「これはまいったなあ、僕にデートのお誘いなんてしてきた逃亡者は君が初めてだよ」


「そうなんですか? 信じられない……」


「いや超時空体は基本嘘はつかないんだけどね」


「基本……、まあいいです、後でスピアたちの演技プレイルームのゴジラの口のところで待ってますので、嫌じゃなければ、よろしくお願いしますね」


「まあ、コメットさんが交代してくれたら、検討してみるよ」


「ありがとうございます! ではお仕事続行ですね。 超時空城様はデートのお誘いがあれば応じる可能性がある……ということがわかりましたので、メモしてください」


「いや、それは超時空城の仕様とはちょっと違うんじゃないかね?」


「だって超時空体の性格が超時空城の仕様に反映するってさっき言われてましたよね」


「それはそうだが……その部分はカットしたほうが不自由な世界にとっては良いんじゃないかなと思うよ」


「えー、そうなんですかあ……それはちょっと残念です。では、何を追加すればいいのでしょう?」


「そうだなあ……あとは素晴らしい体験をわかちあう仕組みがあるね」


「ほう…それはどういう意味ですか?」


「皆の想像力が生み出したいろいろなイメージとかプライベート世界とか作品とかで良くできたと思ったものを自由に交換して分かち合う仕組みだよ。

それによってどんどんと楽しめる体験が増え続けるような仕組みがあるよ」


「それはまたいい感じですね。楽しめることが増え続けるわけですね」


「うんうん、そこの部分はぜひ取り入れるといいよ。各々の体験者が自分が気に入った部分だけ良いとこどりをするだけなら、まったくデメリットはないからね」


「あたしもそれいいなって思いました。ぜひ取り入れたいなって思います」


「うん、この部分は絶対に間違いなしだと思ってくれてもいいよ。むしろこの仕組みがない世界だとつまらないという理由で滅んでしまった世界もあるくらだからね」


「つまらないという理由だけで滅んでしまうんですか?」


「そうだよ、それが何百億年とか続けば、うんざりしてしまうらしいね」


「じゃあ、何が何でもその仕組みを取り入れないとなりませんね」


「まあ、すでにある程度は不自由な世界群でも取り入れているところもあるんじゃないかな?」


「そうですね、空想小説の分かち合いとかならそこそこそういう状態になっていたかもしれません。でも特許権がどうたらこうたらとかで良いものが生まれても自由に分かち合えないようなこともあったような」


「まあ不自由な世界では、何不自由ない生活っていうものがあらゆる体験者に完全に必要十分に保証されていないからそうした権利などが必要になるんだろうねえ。

ここ超時空城では、何かをしなければならないみたいなことが一切ないから、そんな権利なんていらないんだよ。まあどうしても特許権という権利が欲しいと言えば、与えてあげるし、自分の創造したものを非公開にする権利だってあるし、特定の体験者にだけ公開することもできるし、そういうのはそれぞれの自由なんだ。

ただ望めば分かち合うことができる仕組みがあるってだけで、分かち合うことが義務ではないんだよ」


「つまり、何でもありの自由があるってことですか?」


「そうだね、ほぼ何でもありだね。ただ他の体験者の体験の自治権を故意に奪う行為だけは禁止されているよ」


「あー、それは重要な点ですよね。なるほど、他の体験者の体験の自治権を故意に奪う行為は禁止と……メモメモお願いね」


「でも、なんでもありだと危険なこととか、問題とか発生しないんですか?」


「そこは完全プライベート世界という個人用の安全な世界が望めば得られるようになっていて、そこでありとあらゆる体験が完全にプライベートで楽しめるようになっているんだよ。ムゲンさんが設計して提供してくれたんだけどね」


「ムゲンさん? あのアホ太郎のことですか? あんなのにさん付けなんですか?」


「あー。それはムゲンさんの劣化した分身体の一体のことで、ムゲンさんの本体というか統合体はもっとずっとましなんだよ」


「そうなんですか、あんなのがそんな大それたものを超時空城様に提供しただなんて、なんだか癪ですね」


「まあまあ、君はまだ本体のムゲンさんに会ったことがないからそう言うだけで、大昔のことだけどムゲンさんは世界支配者の地位を自ら捨てて僕にその地位を譲ってくれたんだよ」


「えー! 嘘みたい」


「まあ、動機は世界支配者になるなんてめんどくさい…とかだったのかもしれないけど」


「やっぱり……」


「まあそう言わずに、そうそうムゲンさんは超時空大遊園地も作ってくれたんだよ」


「あの有名な昭夫ダンジョンのある遊園地のことですか?」


「そうそう、あれが大ヒットしてまるでブラックホールみたいに体験者たちを惹きつけて無数の体験者たちがそこに住み着いてしまったんだよ」


「なんだか相当な精神的な訓練をしてから入らないとまず出てこれなくなるとか……あの噂は本当なんですか?」


「嘘ではないねえ……まあ、入った者たちは皆心から感謝しているから良いんだけどね」


「でも出てこれなくなったらその方のご家族とかが心配したり、困ったりしないんでしょうか?」


「そういう場合は、ご家族ごとたいていは住み込むことになるみたいだねえ。

まあ、問題があれば元に戻る機能を使えば、入る前の状態に戻れるから心配する必要はないんだよ」


「それって、すごい機能ではないですか!」


「まあ、超時空世界では当たり前のことだよ」


「ちょっとこれメモしといてね、えーと元に戻る機能! 不自由な世界にあるといいわよね」


「ああ、でも不自由な世界は、普通の時空間の世界だから元に戻る機能をそのまま輸出することはできないよ」


「それはわかっています。でも劣化版でも取り入れたいではないですか」


「なるほど、まあ、やり直しができるいろいろなシステムということなら可能だろうね」


「さすが超時空城様、物分かりが早い!」


「君もなかなか褒め上手になってきたねえ」


「そりゃあ、もう、超時空城様のご指導のたまものですわ」


「そうおだてられるともっといろいろアドバイスがしたくなってくるよ。やるねえ、君」


「えへへ」


「じゃあ、もうひとつアドバイスしておこう。

不自由な世界群でよく見かける問題は、意識を成長させてゆくのではなくて、知識だけをたくさん増やせばいいという教育方針があることかな。

知識をいくら増やしても、意識が成長していないとたいてい問題が発生するんだよ。

意識が成長できなければ、むしろ知識を増やせば増やすほど問題が発生するようになるんだよ。

自分たちを滅ぼす知識を必死で探して手に入れて滅亡するとかね…

あるいは、自分たちを苦しめるための知識を増やして、その知識のために苦しみ続けるとかもある。


体験者を苦しめるための毒の開発をした結果、その毒を自分が飲むはめになるようなことも発生するし、
体験者の体験を操作する技術や知識を見つけ出してしまって、その技術や知識で体験者全体が苦しむような結果にもなったりする。


だから知識はあくまで意識が良い意志を持てるようになるまではむやみにたくさん得ない方が良い場合が非常に多いんだよ。

これは、ほとんど法則みたいなものだと思っていた方がいいよ」


「アドバイスありがとうございます! これメモメモしてね」


「まあ、他に聞きたいことがあれば、いつでも聞きに来るがいいよ」


「じゃあ、超時空城様、あたしのこと好きですか?」


「うんうん、好きだよ」


周囲にいた逃亡者たちが大歓声を上げた。


「うれしい……でもなんだか返事が軽いですよね」


「そうかなこれが僕の自然体なんだが…」


「じゃ、じゃあここにいるメモ係は好きですか?」


「うんうん、好きだよ」


「………」


「じゃあ、ひょっとしてここにいるカラス族のカラス天狗も好きなんですか?!」


「う、うんうん、好きだよ」


「……………」


インタビュアーはちょっとプンスカした。





こうして、超時空城様へのインタビューを終えた逃亡者たちは、超時空城の仕組みの中でコピーすべき部分を話し合ってまとめはじめた。


★★★体験の自治権をあらゆる体験者に提供すること

★一番良き意志を持っている者たち複数を共同世界管理者にすること、また積極的に良き意志を育て増やしてゆくこと

★知識よりも意識や意志を成長させること

★良い発明や作品や体験を分かち合える仕組みをつくること、ただし義務ではなく自由参加型にすること

★個人用の完全自給自足できる安全度の高い宇宙船を大量生産して皆に配ること

★完全プライベート空間を、それが欲しいと思う体験者たちに提供すること

★誰もがスタンドアロンで必要十分に満足できる状態を得れるようにしてゆくこと、その基礎の上に心からの合意が前提の関係性から生まれるお楽しみ体験が選べるようにしてゆくこと

★変身術や分身術や演技力やシナリオ空想力などを希望者が学べるようにすること

★種族の違いは、着ぐるみの違いだという価値観を広めること。種の違いを超えて、皆、体験者であるという価値観を教えてあげること

★元に戻る機能を劣化版でもいいので、やり直し、復元、再チャレンジ可能システム各種…として各分野に導入してゆくこと

★体験者たちが心から楽しめる遊園地やアトラクションを創ること

★小さなことは気にせず、愉快な遊び心を大事にすること

★弱肉強食の仕組みをできるだけそうでない仕組みに変えてゆくこと、殺生行為を伴う肉食を減らして行くこと



★上記の改革を確信犯で妨害するような悪党には甘すぎる対応をしないようにすること


などを不自由な世界群の状況に応じて可能な範囲で導入してゆけばいいのではないか…という感じのまとめ覚書がなされた。





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