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超時空城に救助されたウサ子
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またとある不自由な世界では、
オオカミ族と虎族が互いに世界の統治権をめぐって争っていた。
オオカミ族も群れとなり、虎族も群れとなり、群れ同士の激しいバトルを繰り広げていた。
ウサギ族やネズミ族などは、なんとかその覇権争いから逃れたいと思いあちこち逃げ回っていた。
ウサギ族の一体が言う。
「もうオオカミ族も虎族も消えてしまえばいいのに…」
ネズミ族もうんうんとうなづいている。
そこに人間族がやってきて、最新式の機関銃でオオカミ族と虎族を撃ち殺してしまった。
ウサギ族のウサ子は、唖然としてその光景を見ていた。
「なに、あれ……とんでもない兵器だわ……逃げなきゃ…」
ウサ子は、脱兎のごとく走り出して地面の穴の中に身を隠した。
すると、
「ウオン、ウオン、ウオン…………」
という音が聞こえてきた。
小さな穴の中から天を見上げると大きな大きな宇宙船が出現していた。
ウサ子はもう驚いてしまって、ぶるぶると震えていた。
穴の中からそっと外を見ていると、ものすごい爆発音が聞こえてきた。
ウサ子は穴の奥に一目散に潜る……
地響きが聞こえてくる……
もうダメだ……とウサ子は思う……世界の終わりだ……ウサ子はそう思った。
しばらく穴の奥で固まっていたウサ子だったが、静かになったのでおそるおそる穴の入り口から顔を出してみた。
すると……
そこには広大な焼野原があるだけで、あったはずの大きな栗の木や草などが全部焼けてしまって消えてしまっていた。
どうやら人間族も焼けて消えてしまったらしい。いない……
ウサ子は、ひょっとしてあたしが「もうオオカミ族も虎族も消えてしまえばいいのに…」と思ったからこうなってしまったんじゃないだろうか……と気になり始めた。
まさかここまで全部消えてしまうなんて……と愕然としている。
ウサ子の好物だった草も全部燃えてなくなってしまっている。
これじゃあダメね……と思う。
ウサ子は、元に戻るボタンを押した。
すると、すべてが元通りになって復元された。
オオカミ族と虎族がまた覇権争いを始めている。
ウサ子は、今、超時空城の完全プライベート世界にいたのだ。
もうかれこれ50回くらいは、元に戻るボタンを押してしまっていた。
この完全プライベート世界での体験はすべて夢の世界での体験みたいだ。
実際の体験者はウサ子一体だけなので、何を想像して具現化しても被害者は発生しない。
強いてあげればウサ子自身が被害者になる可能性があるだけだが、ウサ子が望めばすべて元に戻せたり、時間停止もできる。
それでもウサ子は不満だった。
いろいろ試しても、なかなか思うような体験にならないからだ。
こんなはずじゃないのに……との不満がつのっている。
ウサ子はとある惑星から救助されたウサギ族の一体だった。
その惑星では、宇宙人の侵略によってウサ子が焼かれてしまったのだ。
そのトラウマがあって、どうしても過去の体験の思い出が混じってきてしまうのだ。
安全な超時空城の完全プライベート世界にいるというのに、ウサ子は恐怖の体験を何度も繰り返してしまっていた。
すでに想像力のトレーニングなどは一通りスピアたちから教えてもらい一定の想像力を使えるようにはなっていた。
しかし、どうしてもトラウマとなっているイメージが想像の中に混じってしまうらしい。
必死にイケメンの青年ウサギなどをイメージしたりもするのだが、どこかで世界全体がまる焼けになるイメージが出現してせっかく生み出したイケメン青年ウサギもまる焼けになってしまったりして苦しんでいるのだ。
そんなことを何度も何度も繰り返してしまっていた。
ウサ子は不貞腐れて、体験テレビを点ける。
そこでは、超時空城にいるいろいろな体験者たちの創作したドラマや映画やアニメや音楽や……を見たり聴いたりできるのだ。
さらにそうした娯楽の一部は、その作品世界に意識を投入して遊べる実体験を伴った体験ゲームのようにもなっていた。
手の込んだゲームなどもたくさんあり、飽きることなく楽しめるようになっていた。
見るだけ、遊ぶだけなら自由なので良い暇つぶしにはなるし、結構面白くて見始めるとずっと見てしまったりするし、中には娯楽作品の中に意識をずっと投入し続けてしまう体験者も一部いた。
完全プライベート世界では、そうした過ごし方をすることも自由だとされていた。
また、自分が望む体験ゲームや娯楽番組がなければ、自分で自作する仕組みも備わっていた。
無数の作品群は、そうした自作アイテムがあったことで創作されたものだった。
そして作品群は、内容もどんどん変わるので飽きない。見たり遊んだりする速度よりも、新しく創作されてくる作品の数の方が圧倒的に多かったのだ。
超時空城にはありとあらゆる不自由な世界から無数の体験者が救助されていて住み込んでいたので、長く超時空城に住んでいると、早晩、手の込んだ素晴らしい作品などをどうしても作りたくなってしまうらしく、そうした娯楽自由自在の状況になっていた。
ウサ子はしかし、そうした娯楽三昧の中でも焼け死んでしまったトラウマがどうしても消えないので、いっそ自分が超時空城に来るずっと前まで戻れないかと試したが、それはできなかった。
ただし思い出として残っている記憶を再現することはできた。
記憶にある赤い人参などは、だから思い出せば再現できて実際に味も記憶の味のままで楽しめる。
「こんなことなら、もっといろいろな体験をしていろいろな思い出を作っておけばよかったわ……」
と、ウサ子はちょっと後悔していた。
スピアたちは、そんなことしなくても超時空体験図書館にアクセスすれば無数にあるいろいろな体験を知ることができるから問題ないのだと説明されていたが、ウサ子は超時空体験図書館にアクセスするための資格試験にまだ合格していなかった。
資格試験というのは、どうやら体験に対する耐性を調べる試験らしい。とはいえ、ウサ子はそんな説明をされてもぜんぜん意味が分からなかった。
なんだか怖いと感じたのでそそくさとその試験会場から逃げてしまったのだ。
超時空城は無理やり何かを強制することはなかった。
ウサ子が逃げ出したいと思えば、その選択をやさしく尊重してくれる。
守るべきルールは、ただ一つだけであり、
「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」
だけだったので、ウサ子もそれだけのルールくらいは覚えていることができた。
不自由な世界では、無数の法律やルールなどがあり、それが消えたり発生したり変化したりし続けていたが、超時空城のルールはそれだけであり、そのルール内容は、ずっと変化していないらしい。
ウサ子のいた惑星の人間族のルールも、その惑星を取り囲んでいた宇宙のルールも、霊的世界のルールも…超時空城のルールに反したおかしなルールがたくさんあり、また、ややこしく難しい言葉だったので知性の低い体験者たちが覚えておくのが難しかった。
不自由な世界群では、
多数決に従うべきだとか、独裁者に従うべきだとか、宗教指導者に従うべきだとか、神族に従うべきだとか、宇宙連合総司令官に従うべきだとか、愛という名の意志存在に従うべきだとか、親に従うべきだとか、上司に従うべきだとか、裁判所の判決に従うべきだとか……そんな感じだった。
つまり、皆が皆のために公平に従うべきモラルが教えられていなかった。
いずれも独裁的であったり、排他的であってり、利己的であったり、不条理であったり、公平性が欠落していたり、上から目線であったり、とにかく従え…という価値観が強制されてしまっていた。
互いに公平に守りあうルールではなく、誰かが誰かに何かを一方的に命令したり強制するようなルールばかりだった。
体験者全員にとって公平になるルールが示されていなかった。
あらゆる体験者があらゆる体験者のために公平に従うべきモラルが教えられていなかった。あるいは、そうしたモラルが最高法規になっていなかった。
一部の権力者や特権者やその部下やイエスマンばかりが優遇され、「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる状態」を本気で実現しようとしていた体験者の多くが迫害攻撃されたり、そのルールを世界の最高法規にするように…との切実な要請を無視されたりしていた。
そうした状況は、不自由な世界あるあるだった。
逆に言えば、そうした状況がまだ存在している世界は、まだ未成熟な不自由な世界だと超時空城に判定された。
それゆえに物質世界と呼ばれる世界に内包されていた世界のほとんどが不自由な世界だと判定されていたし、体験強制ピラミッドシステムが存在している世界は、もっと問題のあるより不自由な世界だと判定されていた。
上意下達的な命令に体験者たちが無理やり従わねばならないようなピラミッドシステムが存在している世界は、意識の成長レベルが低い世界であると判定されていた。
意識のレベルが高い世界と判定された世界では、その世界のメンバーのほぼすべてが、
「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」
というルールを誰かの命令がなくとも、罰則がなくとも「自発的に」守っていた。
そして、誰かからそのルールに反したことをするようにと命令されたり、強要されても、その命令や強要に従わない強い自分自身の断固たる意志を持っていた。
その結果、一部の乱心した者が権力システムを掌握して他の体験者を「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」
というルールに反して支配することがほぼ不可能な状態になっていた。
そんな感じだったので、超時空城でウサ子は、「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」というルールさえ守ってさえいれば、他の誰かにあーしろこーしろ、世界に貢献して働け…などと言われることはなかった。
それが意識の高い世界群の普通の状態だった。
その後、ウサ子は、無数のスピアたちが制作した無数のゲームをしまくっているうちに次第に遊び心が目覚めてしまい、とうとうスピアたちが運営している愉快な超時空オンラインゲームに自発的に参加してしまい、そのままスピアたちの友人ができて、引きこもり状態から楽しみながら自然に脱することになった。
今も、時々刻々、超時空城の完全プライベート世界はありとあらゆる娯楽を増やしながら至れり尽くせりの仕組みを付加しつつ、進化し続け、ありとあらゆる体験者を癒し続けているらしい。
超時空城では、そうした癒し作品作りを生きがいとする体験者が完全プライベート世界を提供してさえいれば自然増加してゆく状態になっていたので、そうした状況になったらしい。
そのような無限の好循環が超時空城には存在していた。
その結果、もはや誰かを癒し助けるために誰かが無理して必死に努力しなければならないような状況は一切なくなっていた。
ただ、皆が純粋に楽しんでいるだけで、自動的にそうした結果になるようになっていたのだ。
超時空城では、そんな感じの進化した状況がすでに完成していた。
そのため、辛い魂のお勉強……などというものは、一切必要なくなっていた。
ウサ子は、いつの間にかスピア軍団の一員になってしまった。
オオカミ族と虎族が互いに世界の統治権をめぐって争っていた。
オオカミ族も群れとなり、虎族も群れとなり、群れ同士の激しいバトルを繰り広げていた。
ウサギ族やネズミ族などは、なんとかその覇権争いから逃れたいと思いあちこち逃げ回っていた。
ウサギ族の一体が言う。
「もうオオカミ族も虎族も消えてしまえばいいのに…」
ネズミ族もうんうんとうなづいている。
そこに人間族がやってきて、最新式の機関銃でオオカミ族と虎族を撃ち殺してしまった。
ウサギ族のウサ子は、唖然としてその光景を見ていた。
「なに、あれ……とんでもない兵器だわ……逃げなきゃ…」
ウサ子は、脱兎のごとく走り出して地面の穴の中に身を隠した。
すると、
「ウオン、ウオン、ウオン…………」
という音が聞こえてきた。
小さな穴の中から天を見上げると大きな大きな宇宙船が出現していた。
ウサ子はもう驚いてしまって、ぶるぶると震えていた。
穴の中からそっと外を見ていると、ものすごい爆発音が聞こえてきた。
ウサ子は穴の奥に一目散に潜る……
地響きが聞こえてくる……
もうダメだ……とウサ子は思う……世界の終わりだ……ウサ子はそう思った。
しばらく穴の奥で固まっていたウサ子だったが、静かになったのでおそるおそる穴の入り口から顔を出してみた。
すると……
そこには広大な焼野原があるだけで、あったはずの大きな栗の木や草などが全部焼けてしまって消えてしまっていた。
どうやら人間族も焼けて消えてしまったらしい。いない……
ウサ子は、ひょっとしてあたしが「もうオオカミ族も虎族も消えてしまえばいいのに…」と思ったからこうなってしまったんじゃないだろうか……と気になり始めた。
まさかここまで全部消えてしまうなんて……と愕然としている。
ウサ子の好物だった草も全部燃えてなくなってしまっている。
これじゃあダメね……と思う。
ウサ子は、元に戻るボタンを押した。
すると、すべてが元通りになって復元された。
オオカミ族と虎族がまた覇権争いを始めている。
ウサ子は、今、超時空城の完全プライベート世界にいたのだ。
もうかれこれ50回くらいは、元に戻るボタンを押してしまっていた。
この完全プライベート世界での体験はすべて夢の世界での体験みたいだ。
実際の体験者はウサ子一体だけなので、何を想像して具現化しても被害者は発生しない。
強いてあげればウサ子自身が被害者になる可能性があるだけだが、ウサ子が望めばすべて元に戻せたり、時間停止もできる。
それでもウサ子は不満だった。
いろいろ試しても、なかなか思うような体験にならないからだ。
こんなはずじゃないのに……との不満がつのっている。
ウサ子はとある惑星から救助されたウサギ族の一体だった。
その惑星では、宇宙人の侵略によってウサ子が焼かれてしまったのだ。
そのトラウマがあって、どうしても過去の体験の思い出が混じってきてしまうのだ。
安全な超時空城の完全プライベート世界にいるというのに、ウサ子は恐怖の体験を何度も繰り返してしまっていた。
すでに想像力のトレーニングなどは一通りスピアたちから教えてもらい一定の想像力を使えるようにはなっていた。
しかし、どうしてもトラウマとなっているイメージが想像の中に混じってしまうらしい。
必死にイケメンの青年ウサギなどをイメージしたりもするのだが、どこかで世界全体がまる焼けになるイメージが出現してせっかく生み出したイケメン青年ウサギもまる焼けになってしまったりして苦しんでいるのだ。
そんなことを何度も何度も繰り返してしまっていた。
ウサ子は不貞腐れて、体験テレビを点ける。
そこでは、超時空城にいるいろいろな体験者たちの創作したドラマや映画やアニメや音楽や……を見たり聴いたりできるのだ。
さらにそうした娯楽の一部は、その作品世界に意識を投入して遊べる実体験を伴った体験ゲームのようにもなっていた。
手の込んだゲームなどもたくさんあり、飽きることなく楽しめるようになっていた。
見るだけ、遊ぶだけなら自由なので良い暇つぶしにはなるし、結構面白くて見始めるとずっと見てしまったりするし、中には娯楽作品の中に意識をずっと投入し続けてしまう体験者も一部いた。
完全プライベート世界では、そうした過ごし方をすることも自由だとされていた。
また、自分が望む体験ゲームや娯楽番組がなければ、自分で自作する仕組みも備わっていた。
無数の作品群は、そうした自作アイテムがあったことで創作されたものだった。
そして作品群は、内容もどんどん変わるので飽きない。見たり遊んだりする速度よりも、新しく創作されてくる作品の数の方が圧倒的に多かったのだ。
超時空城にはありとあらゆる不自由な世界から無数の体験者が救助されていて住み込んでいたので、長く超時空城に住んでいると、早晩、手の込んだ素晴らしい作品などをどうしても作りたくなってしまうらしく、そうした娯楽自由自在の状況になっていた。
ウサ子はしかし、そうした娯楽三昧の中でも焼け死んでしまったトラウマがどうしても消えないので、いっそ自分が超時空城に来るずっと前まで戻れないかと試したが、それはできなかった。
ただし思い出として残っている記憶を再現することはできた。
記憶にある赤い人参などは、だから思い出せば再現できて実際に味も記憶の味のままで楽しめる。
「こんなことなら、もっといろいろな体験をしていろいろな思い出を作っておけばよかったわ……」
と、ウサ子はちょっと後悔していた。
スピアたちは、そんなことしなくても超時空体験図書館にアクセスすれば無数にあるいろいろな体験を知ることができるから問題ないのだと説明されていたが、ウサ子は超時空体験図書館にアクセスするための資格試験にまだ合格していなかった。
資格試験というのは、どうやら体験に対する耐性を調べる試験らしい。とはいえ、ウサ子はそんな説明をされてもぜんぜん意味が分からなかった。
なんだか怖いと感じたのでそそくさとその試験会場から逃げてしまったのだ。
超時空城は無理やり何かを強制することはなかった。
ウサ子が逃げ出したいと思えば、その選択をやさしく尊重してくれる。
守るべきルールは、ただ一つだけであり、
「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」
だけだったので、ウサ子もそれだけのルールくらいは覚えていることができた。
不自由な世界では、無数の法律やルールなどがあり、それが消えたり発生したり変化したりし続けていたが、超時空城のルールはそれだけであり、そのルール内容は、ずっと変化していないらしい。
ウサ子のいた惑星の人間族のルールも、その惑星を取り囲んでいた宇宙のルールも、霊的世界のルールも…超時空城のルールに反したおかしなルールがたくさんあり、また、ややこしく難しい言葉だったので知性の低い体験者たちが覚えておくのが難しかった。
不自由な世界群では、
多数決に従うべきだとか、独裁者に従うべきだとか、宗教指導者に従うべきだとか、神族に従うべきだとか、宇宙連合総司令官に従うべきだとか、愛という名の意志存在に従うべきだとか、親に従うべきだとか、上司に従うべきだとか、裁判所の判決に従うべきだとか……そんな感じだった。
つまり、皆が皆のために公平に従うべきモラルが教えられていなかった。
いずれも独裁的であったり、排他的であってり、利己的であったり、不条理であったり、公平性が欠落していたり、上から目線であったり、とにかく従え…という価値観が強制されてしまっていた。
互いに公平に守りあうルールではなく、誰かが誰かに何かを一方的に命令したり強制するようなルールばかりだった。
体験者全員にとって公平になるルールが示されていなかった。
あらゆる体験者があらゆる体験者のために公平に従うべきモラルが教えられていなかった。あるいは、そうしたモラルが最高法規になっていなかった。
一部の権力者や特権者やその部下やイエスマンばかりが優遇され、「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれる状態」を本気で実現しようとしていた体験者の多くが迫害攻撃されたり、そのルールを世界の最高法規にするように…との切実な要請を無視されたりしていた。
そうした状況は、不自由な世界あるあるだった。
逆に言えば、そうした状況がまだ存在している世界は、まだ未成熟な不自由な世界だと超時空城に判定された。
それゆえに物質世界と呼ばれる世界に内包されていた世界のほとんどが不自由な世界だと判定されていたし、体験強制ピラミッドシステムが存在している世界は、もっと問題のあるより不自由な世界だと判定されていた。
上意下達的な命令に体験者たちが無理やり従わねばならないようなピラミッドシステムが存在している世界は、意識の成長レベルが低い世界であると判定されていた。
意識のレベルが高い世界と判定された世界では、その世界のメンバーのほぼすべてが、
「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」
というルールを誰かの命令がなくとも、罰則がなくとも「自発的に」守っていた。
そして、誰かからそのルールに反したことをするようにと命令されたり、強要されても、その命令や強要に従わない強い自分自身の断固たる意志を持っていた。
その結果、一部の乱心した者が権力システムを掌握して他の体験者を「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」
というルールに反して支配することがほぼ不可能な状態になっていた。
そんな感じだったので、超時空城でウサ子は、「他の体験者の体験の自治権を故意に否定しないこと」というルールさえ守ってさえいれば、他の誰かにあーしろこーしろ、世界に貢献して働け…などと言われることはなかった。
それが意識の高い世界群の普通の状態だった。
その後、ウサ子は、無数のスピアたちが制作した無数のゲームをしまくっているうちに次第に遊び心が目覚めてしまい、とうとうスピアたちが運営している愉快な超時空オンラインゲームに自発的に参加してしまい、そのままスピアたちの友人ができて、引きこもり状態から楽しみながら自然に脱することになった。
今も、時々刻々、超時空城の完全プライベート世界はありとあらゆる娯楽を増やしながら至れり尽くせりの仕組みを付加しつつ、進化し続け、ありとあらゆる体験者を癒し続けているらしい。
超時空城では、そうした癒し作品作りを生きがいとする体験者が完全プライベート世界を提供してさえいれば自然増加してゆく状態になっていたので、そうした状況になったらしい。
そのような無限の好循環が超時空城には存在していた。
その結果、もはや誰かを癒し助けるために誰かが無理して必死に努力しなければならないような状況は一切なくなっていた。
ただ、皆が純粋に楽しんでいるだけで、自動的にそうした結果になるようになっていたのだ。
超時空城では、そんな感じの進化した状況がすでに完成していた。
そのため、辛い魂のお勉強……などというものは、一切必要なくなっていた。
ウサ子は、いつの間にかスピア軍団の一員になってしまった。
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