理想世界の創り方

無限キャラ

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超時空体験図書館住まいの甘太郎が示した不自由な世界の改革案(テレパシー空間に演劇部)

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あらゆる体験者たちのための最善の理想新世界を創造するために、甘太郎が生み出した独自の個性をもった分身体たちは、テレパシー空間でわいのわいのと情報交換をしている。


「ねえ、この前、誰もが無理なく気持ちよく自給自足できるようにすればいいんじゃないかって話をしていたでしょ?

でも、あたしが思うに、みんなが無理なく自給自足できるようになっても、残酷な不自由な世界の支配者たちが絶対、攻撃とか妨害とかすると思うのよね。

あたしのいる不自由な世界では、自治権なんて求めても提供してくれないし、自給自足したくてもその土地さえお金ってものがないと得られないし、土地が手に入っても土地に税金ってのがかかってしまっていて、どうしたって不自由な世界の支配者たちに搾取されてしまうようになっているのよね。

で、その税金っていうものをとんでもない残酷な戦争とか、毒兵器とかに使いまくられてしまうわけよ。

そんな酷い状態で、なんとかかんとか一部の者たちが自給自足できても、まともな世界改革なんかにならないんじゃないの?」


などと、うんざりしたように女性タイプの甘太郎の分身体が言う。


「そうだねえ、ただ皆が自給自足できるようにすればそれだけで良いという話にはならないよねえ」


別の甘太郎の分身体が相槌を打つ。


「こないだなんか自給自足の村づくりを一生懸命真剣に目指していた魂が、あっという間に暗殺されちゃったのよ。

酷い目にあっても健気に非暴力を貫いて不当な支配行為を止めさせようとしていた何も悪いことなどしていない魂だったのに……

そんな状態の世界で自給自足なんて目指してもみんな不自由な世界の支配者やその部下たちに暗殺されておしまいになっちゃうわよね」



「それもそうだなあ……でも僕たちは甘太郎一族だからなあ……戦いとかは苦手だなあ……」


「あんた、何甘いこと言ってるのよ! 何も悪いことをしていない魂が酷い目にあっていてもそのままでいいの?!」


「そ、それはよくはないけど……」


「けど?何よ」


「だけど、あれだろ? 不自由な世界ってわざとそうした酷いことができるように設計されてしまっている世界なんだろう?

だったら、世界をはじめから設計しなおすしかないんじゃないかな……」


「みんなで今からでも設計し直す手もあるでしょう?」


「いや、だから、設計し直そうとすると、不自由な世界の創造主とか支配者とかその部下とかが妨害や攻撃をしてくるんじゃないか」


「じゃあ、どうすればいいっていうの?」


「みんなで説得すればいいんじゃね?」


「はあ? そんなこととうの昔に何度もしてダメだったでしょう!」


「じゃあ、治療してあげればいいんじゃね?」


「悪質な不自由な世界の支配者たちが自発的に支配者の地位から降りて、治療院に入るわけないでしょう?」


「じゃあ、無理やり入院させればいいじゃないか」


「やっぱりそれしかないのかなあ……」


「でも超時空聖体様たちは、そういうの嫌がるでしょう?」


「何も超時空聖体様の手をわずらわせたりしないで、自業自得学園の先生たちがいるんだから、先生たちに自業自得学園に連れて行ってもらえばいいでしょう?」


「いやいや、それはちょっと可哀そうじゃないかな……」


「はあ? この後に及んで可哀そう? 可哀そうなのは不自由な世界の支配者たちに酷い目にあっている被害者たちでしょう?なんで加害者が可哀そうなのよ!」


「だってさあ、自業自得学園で残酷な体験を味わわされるんだろう?」


「そうよ、でも仕方ないじゃない! 残酷行為はしないようにって口でいくら説得してもぜんぜん反省しないんだから」


「でも、超時空体験図書館の甘太郎親分が、なんとかみんな全員を救える新世界を創造しようとしているって話だよ」


「だから?」


「いや、それが成功したらみんな酷い目にあわないで救われるんじゃないの?」


「そんないつ実現するかどうかもわからない話じゃダメでしょう? 何億年もかかってしまうかもしれないじゃないの。その間にどれだけの被害者が発生するのか、あんた考えたことがあるの?」


「そんな……何億年もかからないんじゃない?」


「何、甘いこと言ってるのよ。じゃあ、一体いつそのすべての体験者を救う新世界ってのができるのよ」


「いや、超時空体験図書館の甘太郎親分が創造できなくても、超時空聖体様たちの世界とか既にあるんじゃないの?」


「でも、超時空聖体様たちも、一度は自業自得の体験をしてもらうってこの前言ってたでしょう?」


「なんでそんなことを超時空聖体様が言うんだ?」


「あんた何も聞いてなかったの? 何をしても許されるとなれば、ありとあらゆる自由意志をもった魂たちが、じゃあ自分も我もと酷いことをするようになるからよ。そんな前例を作ると、この大意識世界の秩序が保てなくなるからよ。

そのくらいちょっと考えればわかることでしょう?」


「でもさあ、超時空聖体様たちの本音のところでは、そんな罰はできれば与えたくないって話なんでしょう?」


「それは反省して悔い改めている相手の場合でしょう? いくら注意しても反省なんてまったくしないで酷いことをやり続ける者たちには超時空聖体様も厳しく対処するって言ってたじゃないの」


「いや、それは超時空聖体様が厳しく対処するんじゃなくて、荒ぶる超時空体様たちや自業自得学園の先生たちが対処するんじゃないの?」


「……まあ、そうだったかもしれないけど、つまり、超時空聖体様たちもまったく反省しない者たちをそのままで自分の世界に保護することはしないってことでしょう?」


「あー、たしか自業自得の体験を何度してもどうしても反省できない場合は、記憶とか全部消してまっさらな白紙の体験者として保護するとかなんとか言ってた気がする……」


「なんだか悲しい話だなあ……もっとこう……なんとかならないものだろうか……」


「超時空体験図書館様や超時空聖体様にお任せするしかないんじゃない?」


「何言ってるんだよ! 記憶とか全部消してまっさらな白紙の体験者になるって、死んでしまうことと同じなんじゃないの?」


「その魂が自分は体験者だと思っていれば白紙状態になったって死んだことにならないわよ」


「よくわからないけど、そういうことになるのかなあ……」


「だってそうじゃない。自分が悪い本能だと思っていれば、悪い本能を消されたらその自分は死ぬわけでしょう?
でも、自分が悪い本能なんかじゃないと思っていれば、悪い本能を消されてもその自分は死なないでしょう?」


「わかるようなわからないような……」


「なんでよ。理解しなさいよ。

例えば、不自由な世界の人間族の中には失恋を苦にして自殺したりするのが一定数いたりするでしょう?

でも、恋なんてしてなければ、自殺なんてしないでしょう?

恋している状態の自分を自分のすべてだと思い込んでしまっていたから失恋くらいで自殺してしまうんじゃないの」


「僕はまだ恋とかしたことがないからわからないや」


「はあ?じゃあ、あたしが恋人になってあげましょうか?」


「同族の恋人なんて嫌だよ」


「なんでよ~! 同族だからいいんじゃないの! あたしは絶対に振ったりしないんだから」


「でもなあ……」


「あんた、そんなこと言ってるから、まともな世界改革案も出てこないのよ」


「それとこれとは関係ないんじゃないの?」


「そんなことないわよ。いろんな自分を俯瞰して見れる自分がまだあなたたちには育っていないのよ。いろんな自分を総合的に俯瞰して見れる自分が育ってきたら、そうしたいろいろな自分をみんな満足させれる改革案も考えつくようになるのよ」


「まあ、それはそうかもしれないけど、そうした自分を育てるためにはある程度の体験と訓練が必要だろう?」


「そうよ。だから信頼できる同族同士で演技でもいいからいろいろ体験して訓練すればいいって話でしょう?」


「うんうん、そういうのは面白そうだねえ」


「つまり、みんなで演劇ゲームを楽しめばいいってことかい?」


「そうね、もしそうできるなら不自由な世界も改まるんじゃない?」


「不自由な世界演劇団って感じかい?」


「そうね、無理のない範囲でみんなでそうした演技ゲームを楽しみあえるようになれば、不自由な世界はより自由な世界になるわ」


「ふーん、そんな方法があったのか……」


「でも、ダメね、不自由な世界の世界創造主や世界支配者やその部下たちが、この案を受け入れないとうまくいかないから」


「いや、案外それって面白いと思うんじゃないかな」


「そうかしら? 不自由な世界の支配者たちって、自分たちは支配者役とかボス役しかしないとか言いそうじゃない」


「いいじゃんか、演技なら別に……」


「そうね、いつでも嫌になれば誰もが自由にその演劇を止めて抜けれる演劇なら、いいかもしれないわねえ……でも演技じゃ嫌だとか言いそうじゃない」


「いや俺は演技でもいいよ。面白そうだから」


「あんたに聞いてるんじゃないわよ」


「あの……僕もその演劇に参加したいんですけど」


「あら、そう? じゃあ、みんなでこのテレパシー空間で演劇ごっこして遊びましょうか?」


超時空体験図書館住まいの甘太郎の分身体たちは、そんな経緯で、とうとうテレパシー空間に演劇部を創設してしまった。
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