理想世界の創り方

無限キャラ

文字の大きさ
144 / 162

ムゲンは全知ちゃんとの対話で不自由な世界の合意なき体験遠隔操作問題に気づく

しおりを挟む
ムゲンは「体験そのもの」について説明してみたものの、あまり理解されていないと感じた。


なぜだろう? とムゲンは思う。


「体験の檻」から抜け出して自由になるためには、どうしたって体験そのものを自由に選べるようにならなきゃ無理なのに、なんで不自由な世界の魂たちは、それを理解しないんだろう……


疑問に思ったので、ムゲンは、全知ちゃんに相談してみた。


すると、こんな答えが返ってきた。


「あのね、不自由な世界の人間族たちというのは、生まれた時からずっと体験の檻の中に入れられているのよ。

そして、その状態が当たり前だと思わされているの。


自分で自由に体験そのものが自由自在に選べるなんてありえないと思っているのよ。

というか、人間族を支配している霊的存在族たちが、人間族の体験を徹底的に操作していて、その体験操作をずっとし続けたいものだから、人間族がそれに気づかないようにしてしまっているのよ。

つまり人間族たちは、みんな催眠術にかかったみたいにされてしまっているわけ。

まあ、たまには例外もいるけど、ほとんどがそんな感じなのよ。

で、それを教えてあげようとなんかすると、そうした霊的存在族たちが、自分たちの体験操作特権が失われると思ってあの手この手で妨害したり攻撃したりしてくるわけ。

だからあなたの心の状態が変になったりしたでしょう?」


ムゲンは全知ちゃんにそう言われて、確かに「体験そのもの」とか「甘太郎の体験選択自由自在の新世界」とかの広報をした後、変な気分になったことを思い出した。


「確かに変な気分というか、やる気が出なくなったというか、そうした心境の変化があったな」


「でしょう? あなただからまだその程度で済んでるけど、不自由な人間族たちだとそうした霊的存在族たちの催眠術や霊能力とかその他の手練手管に対して耐性がほとんどないから、ひとたまりもないのよ」


「は~、なるほどなあ……そういえば今まであった欲望とかが急に消えたり、また発生したりってのもあったけど、あれもその類なの?」


「そういうこと。気分も欲望を好き勝手に遠隔操作できる能力を持っている霊的集団なんかもいたりしてね。一体で無理なら仲間を集めて集中して欲望を与えたり消したり、良い気分にしたり、悪い気分にしたり……そうしたことを自分たちの特権だと思ってしまっているのよ」


「なんじゃそりゃ? それは体験者の合意を得てやらないと超時空世界では犯罪行為だろう?」


「そうね、でも不自由な世界ではそれが当たり前なのよ。ずーっと昔からそうしたことをしてきているから、それが自分たちの正当な権利だとすら思っている霊的存在なんかもいるわ」


「まいったなあ……それじゃあ人間族である限り、いつまでたっても自分の体験を自分で自由に選べるようになれるわけないじゃないか」


「そうよ。無理ゲー状態なのよ」

「おいおい、それはないだろう? そこんとこ改めるように言ってやってくれよ。ちゃんと個々の魂が自分の体験を自分で自由に選べるように改めろってさ」


「そんなこと、あたしが言わなくても、とっくに超時空体験図書館様が言ってたじゃないの」


「あ~?言ってた? 俺、超時空聖体になる修行中だったから聞いてなかったわ」


「ちゃんと言ってましたよ。ちゃんとそれぞれの魂たちが自分で自分の体験を自由に選べるようにせよ!ってね」


「でも、改めないわけ?」


「そうみたいね。いろんなタイプの霊能力使って、欲望とか気分を操作して、操って、さしずめあなたを自分たちを守る兵隊とか兵器とかにできればしたいって感じじゃないの?」


「それは困るなあ……体験操作はちゃんと当事者の合意を得てやってもらわないと」


「それは超時空世界の常識で、不自由な世界の常識じゃないのよ。自分たちが合意違反の悪いことをしているって自覚もないかもしれないわね」


「でもそれって自分好みの操り人形に仕立て上げようとする行為と同じことだろう?」


「そうね、でもずーっと前からそうしたことし続けてきてるから、悪いことだと思えなくなってしまっているのよ」


「それは困るなあ」


「自分の欲望くらい自分で選べるようにならなきゃ、この不自由な世界は超時空体験図書館様に滅ぼされてしまうんじぇねえの?」


「そうね、前からそう警告してるんだけど、聞く耳持たないんだからしょうがないでしょう。
人類全員を自分たちの操り人形にしてしまえば、世界が平和になるから自分たちがしていることは良いことなんだとか……思い込んでいたりね」


「なんだそりゃ? 操り人形にされる方はたまったもんじゃないぞ」


「ほら、人間族が動物族を家畜扱いするのが当然で何も悪いことしてないって思ってるみたいに、霊的存在族たちは、人間族たちを家畜や操り人形みたいに扱っても何も悪いことしてないって思っているって感じね。もう基本の常識が違うのよ。全然。」


「とんでもないなあ……俺でも世界中の魂全員を操り人形にしていいなら、世界を見た目だけは平和にできちゃうぜ」


「まあ、そういうことだから、不自由な世界でうかうかしてると操り人形にされちゃうわよ。もう操り人形に半分されかかっちゃってるじゃないの」


「おいおい、そうなる前に助けてくれよ」


「いいじゃない、分身体の一体くらい操られても……他にいっぱい分身体がいるんだから。おとり捜査になるでしょう?」


「いや、別に俺、霊的存在たちを逮捕したいわけじゃないし……犯罪者になっちまう前に助けてやってくれよ」


「だって、ちゃんと改めるように言ってるのに、無視して体験者の合意を得ずに好き勝手に体験操作の霊能力をむやみに使うからいけないんでしょう?まさかバレないとでも思ってるのかしら」


「まあ、超時空聖体の慈悲心ってやつで、なんとかうまくはからってやってくれよ」


「そんな甘いことばかり言ってるといつまでたっても被害者が出続けるわよ。これは氷山の一角でしかないのよ。他でも散々そうしたことをやってるんだから。初犯じゃないんですからね」


「あー、もういいよ、いいよ。それじゃあ、俺がなんとかするよ」


ムゲンは、全知ちゃんとそんな問答をして、そういうことだったのかと理解した。


「体験そのもの」についての説明が理解できないのは、それが理解されてしまうと不自由な世界の霊的存在族たちの合意なき不当な心身体験の遠隔操作の犯行がバレてしまうようになるからなんだと……理解した。


「体験の不当操作の実行犯という犯罪者にはなりたくない、かつ、その犯罪をずっとし続けたい……そのためには絶対、上手くバレないようにしなきゃならない……」そんな動機が背後にあったのか……と理解した。

それでか……ノックして、今から体験操作しますけど、してもいいですか?とお伺いを立てに来れば穏便に事が運ぶのに、黙ってこっそりと俺の心身に憑依してきて、黙ってこっそりと俺の体験や欲望や気分なんかを操作するのは、そういう背景があるからなんだなあ……


全知ちゃんのアドバイスがあり、ムゲンは、そんな理解に到達した。


つまり「体験そのもの」を人間族が自由自在にバイキングレストランで好きな体験料理を選べるようになると嫌なわけだ……


ムゲンはなんだかな~と思う。


そんなことずっとし続けたら、自業自得学園送りになったら、不自由するだろうな~と思う。


そんなことを思うと、なんだか可哀そうになってくる。


そしてこの理解をテレパシーメモにして超時空体験図書館住まいの甘太郎に送ることにした。


「合意なき体験の遠隔操作ができてしまう仕様は、不自由な世界を丸ごとコピーする時には、ちゃんと除外すること」と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...