理想世界の創り方

無限キャラ

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超時空甘太郎の不自由な世界に対する理解とムゲンの劣化問題

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すると、超時空甘太郎からすぐに返信がきた。


「わかりました。そのように計らいます。でも、ムゲンさん、体験の遠隔操作ができてしまう仕様は、何も霊的存在族だけの問題じゃないんじゃないですか?」


などと。


「どういうこと?」とムゲンは聞き返す。


すると、


「あのですね。ムゲンさん、不自由な世界のその体験の遠隔操作というのは、人間族同士でも日常で無意識で発動し続けているみたいですよ」


そんなことを超時空甘太郎は言う。


どうやら超時空体験図書館で一瞬で不自由な世界の裏事情を調べたらしい。


「よくわからないなあ。もっとちゃんと説明して」


「はい。つまり不自由な世界では、自由意志の力を使った肯定と否定の作用が、ほとんど自動的に他者の体験に肯定的、否定的な影響を与えてしまうような法則になってしまっているようですよ。

ほら、不自由な世界ではみんな感謝することが大事とか言われているでしょう?

あれは、互いの体験者同士の自由意志が相手の体験状態に肯定的、あるいは否定的な影響を与えてしまうシステムだから、生まれた価値観のようです。

みんなで互いを肯定しあうと気持ちよくすごせる……そんな感じでしょうね。

でも、そうした相互の魂たちの自由意志の力による体験操作影響力の自動発動システムという法則が不自由な世界群に付与されてしまったために、とうとう悪いことをする者たちにまで感謝すべきだという教えとか価値観まで出てきてしまって、どんどん倫理的におかしな世界になっていってしまったみたいです。
皆に自分を賛美させ尊敬させ感謝させるためには、どんな手を使ってもいいんだ……などと考える悪党たちまで出てきてしまったようですよ。

それじゃあ、さすがにあからさますぎてバレるから、相手が善であろうが悪であろうが、とにかくすべてに感謝すればそれでいいんだ……みたいな感じで。
すごく酷いことをされているのに、不幸や苦しみの試練を与えてくれて、ありがとう……とか思うようにされてしまっている魂も不自由な世界には結構いるみたいですよ。
結果、悪者たちにとって都合のいい価値観になってしまってるようですね。


でも安心してください。ムゲンさん。僕の新世界では、そもそもそうした自由意志が他者の体験に影響を一切与えない基本仕様にしてありますから。

でも、それでもどうしても肯定しあいたい、否定しあいたい、そうした肯定と否定の意志の影響を不自由な世界と同じように与え合う体験がしたい……と本気で願い求める場合は、そうした体験もオプションで相手との合意が成立すれば選べるようにもしていますから。

だから感謝しあう体験も、憎しみあう体験も、どうしてもしてみたいのなら、安全に配慮した上で、耐性チェックもした上で、思う存分味わえるようにしてありますから、心配いらないですよ」


超時空甘太郎は、嬉々としてそんな説明をしてきた。


ムゲンは甘太郎も成長したなあ……と再度思う。


とっくにムゲンよりも理解力が高くなってしまっている。


そして答える。


「そうか、そうか、抜け目なくそんな設計まですでに組み込んでいたのか……それなら愛別離苦とか怨憎会苦とか、味わわなくても済みそうだなあ……」


「はい。自由意志の力も使い方を間違うと暴力になってしまいますから、ピストルや拳骨と同じですから、相手の合意なく他者の体験に影響を与えるタイプの力はすべて無効化してあります」


「でも、相思相愛の体験とかしたければ、それも体験できるんだろう?」


「それはもちろんですよ。ただし互いの合意が間違いなく成立している場合だけですけど」


「まあ、そうだろうなあ……そうじゃないと不自由な世界の魂たちは絶対文句を言うだろうからなあ」


「そこのところはぬかりありませんよ。特に素晴らしい系の体験は、すべて自由に選べるようにしていますし、相思相愛の体験も、体験そのもの としてありとあらゆるタイプの相思相愛の体験を相手なしでもよりどりみどりで選べるようにしています」


「そうだよなあ……そこがすごいところなんだが、どうも不自由な世界の魂たちは、あんまりいいねって反応しないんだよ」


「まあ、体験してみればわかるんじゃないですか?それにそうした体験そのものを使った体験がしたくなければ、当然、無理に体験しなくてもいいんですから、心配する必要はないですよ」


「いやいや、そうなると、お前の新世界に行きたいと思う魂が増えてゆかない感じなんだけど、それでもいいわけ?」


「別に、何が何でも僕の新世界に来なくてもいいんです。ただ、不自由な世界が嫌になってきたくなれば思い出してきてくれれば僕はそれでいいと思ってますよ」


「それなら、まあ、なあ……俺も無理に広報しなくて済むから気が楽なんだけど、ほんとにそれでいいの?」


「いいですよ。無理強いしてもしょうがないじゃないですか。というか、無理強いしたら助けてあげることにならなくなって、意味ないじゃないですか」


「そうなの?なんだ、それならそうとはじめに言ってくれればいいのに、不自由な世界の全員を救いたいって言うから、なんとかしなきゃって悩んじまったよ。その結果、警戒されて体験の遠隔操作まで受けちまってんだけど……」


「ええ!……そうなんですか、ムゲンさん、すいません。ご無理のない範囲で広報してくれればいいので、無理しないでください。でも、ムゲンさんともあろう方が、体験の遠隔操作なんて受けちゃうんですか?」


「それがなあ……ほら、あっちこっちの世界が見たくて、分身体を増やしすぎてなあ……ほら、知ってるだろう? 俺が分身しすぎたら劣化するって。で、不自由な世界用の俺の分身体も劣化してしまって、いろいろ影響を受けちまってるんだよ」

「どれだけ分身体を増やしたんですか?」


「いや、無限に……」


「それはさすがに増やしすぎではないですか?」

「いや~それがなあ……超時空世界が爆発的に進化しすぎて、俺の分身体の生成速度よりも、新しく生まれる新世界の生性速度の方が早くなっちまってなあ……ほら、やっぱ、新世界が生まれたらどうしても味見に体験しにゆきたいだろう?」

「爆発的進化に無理してつきあわなくても、ほどほどに楽しめばいいのではないですか?」


「まあ、そうだよなあ……そう言われるとそうなんだけど、やっぱり気になるじゃん」


「だめですよ。ムゲンさん、僕の予測ではそのまま突き進むと劣化しすぎて正常な判断力すら失いかねないですよ」


「そうかあ~、もうすでに失いかけてるのかもしれないなあ……半分操り人形とか全知の奴に言われちゃったし……」


「じゃあ、僕の分身体を統合してもいいですよ」


「そうなの?いいの?」


「まあ、これ以上分身体を増やさないと約束してくれるなら」


「あれ? そんな制限つきなの?」


「だってムゲンさんが劣化しすぎたら、広報もできなくなる可能性がありますから」


「俺って信用されてないな~」


「だってすでに劣化してますからねえ」


「しょうがないなあ、わかったよ、じゃあ、お前の分身体を統合してキャキャウフフと遊ぶことにするよ」


「なんですか? それは?」


「まあ、なんだか知らないけど、まあ、そんなことどうでもいいじゃねーか」


そんなムゲンを見て、甘太郎は心配して、せっせとある程度回復するまで自分の分身体をムゲンのもとに送り込んだ。
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