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転生者は木と成り杖となる
7話 小さな村と、畑を耕す青年
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森を抜けた先に、
小さな村があった。
柵は低く、
見張りもいない。
畑と井戸。
木造の家が十数軒ほど並ぶだけの、
エルザリア王国でも地図の隅に追いやられるような場所だ。
「……のどかね」
ソフィアが、肩の力を抜いて言う。
(王都の使者は、来ないだろうな)
「ええ」
「来たとしても、三年に一度くらい」
村の中心では、
一人の青年が鍬を振っていた。
年の頃は二十前後。
日焼けした顔。
体格は細身だが、無駄がない。
「こんにちはー」
ソフィアが声をかける。
青年は、鍬を止めて振り返った。
「あ、旅の人?」
人懐っこい笑顔。
警戒心は薄い。
だが――
(……妙だ)
俺は、彼から目を離せなかった。
(魔力反応が、ほとんど“ない”)
それなのに――
存在そのものが、異様に安定している。
「ここ、何もないでしょ?」
青年は笑いながら言う。
「でも、土はいいし、水もきれいで」
「暮らすには、ちょうどいいんですよ」
(……名前は)
「カズマです」
(……やはり)
ソフィアも、微かに違和感を覚えたらしい。
「村の人、少ないわね」
「みんな年寄りです」
「俺が一番若いくらいで」
「だから、畑仕事は俺担当なんです」
愚痴でも自慢でもない。
ただの事実。
(王都の召集網から、完全に漏れている)
ソフィアは、何気ない風を装って尋ねた。
「カズマさん、王都には?」
青年は、即答した。
「行きたくないです」
理由を聞く前に、
彼は続ける。
「人多いし、忙しそうだし」
「俺、今の生活が気に入ってるんで」
(……典型的だな)
「剣は?」
「振れますけど、畑の方が向いてます」
「魔法は?」
「使えません」
嘘はない。
だが――
俺は、確信していた。
(この男、老いていない)
時間の流れが、
彼の周囲だけ緩やかだ。
(……転生者)
ソフィアも、杖を強く握る。
「……ねえ、カズマさん」
「もし」
「世界が、危機に瀕していると言われたら?」
青年は、少し考え――
困ったように笑った。
「うーん……」
「誰かが、やるんじゃないですか?」
(他人事だな)
「でも」
彼は、畑を見る。
「守りたい場所が、ここにあるなら」
「逃げないとは、思います」
その言葉に、
ソフィアの目が見開かれた。
(……条件反射じゃない)
(意志で、立つタイプだ)
ソフィアは、鑑定を使った
(思った通り)
(彼は、まだ“畑にいる”)
カズマは、軽く手を振った。
ソフィアが息を吐いた。
「……いたわね」
(ああ)
(間違いない)
「でも」
彼女は、少しだけ微笑む。
「今は、畑が世界なのよ」
(勇者が、剣を取るとは限らない)
(世界が、彼を必要とするまでは)
遠くで、
鍬の音が響いていた。
畑を耕す青年は、まだ知らない。
自分が――
この世界で、ただ一人の《勇者》であることを。
小さな村があった。
柵は低く、
見張りもいない。
畑と井戸。
木造の家が十数軒ほど並ぶだけの、
エルザリア王国でも地図の隅に追いやられるような場所だ。
「……のどかね」
ソフィアが、肩の力を抜いて言う。
(王都の使者は、来ないだろうな)
「ええ」
「来たとしても、三年に一度くらい」
村の中心では、
一人の青年が鍬を振っていた。
年の頃は二十前後。
日焼けした顔。
体格は細身だが、無駄がない。
「こんにちはー」
ソフィアが声をかける。
青年は、鍬を止めて振り返った。
「あ、旅の人?」
人懐っこい笑顔。
警戒心は薄い。
だが――
(……妙だ)
俺は、彼から目を離せなかった。
(魔力反応が、ほとんど“ない”)
それなのに――
存在そのものが、異様に安定している。
「ここ、何もないでしょ?」
青年は笑いながら言う。
「でも、土はいいし、水もきれいで」
「暮らすには、ちょうどいいんですよ」
(……名前は)
「カズマです」
(……やはり)
ソフィアも、微かに違和感を覚えたらしい。
「村の人、少ないわね」
「みんな年寄りです」
「俺が一番若いくらいで」
「だから、畑仕事は俺担当なんです」
愚痴でも自慢でもない。
ただの事実。
(王都の召集網から、完全に漏れている)
ソフィアは、何気ない風を装って尋ねた。
「カズマさん、王都には?」
青年は、即答した。
「行きたくないです」
理由を聞く前に、
彼は続ける。
「人多いし、忙しそうだし」
「俺、今の生活が気に入ってるんで」
(……典型的だな)
「剣は?」
「振れますけど、畑の方が向いてます」
「魔法は?」
「使えません」
嘘はない。
だが――
俺は、確信していた。
(この男、老いていない)
時間の流れが、
彼の周囲だけ緩やかだ。
(……転生者)
ソフィアも、杖を強く握る。
「……ねえ、カズマさん」
「もし」
「世界が、危機に瀕していると言われたら?」
青年は、少し考え――
困ったように笑った。
「うーん……」
「誰かが、やるんじゃないですか?」
(他人事だな)
「でも」
彼は、畑を見る。
「守りたい場所が、ここにあるなら」
「逃げないとは、思います」
その言葉に、
ソフィアの目が見開かれた。
(……条件反射じゃない)
(意志で、立つタイプだ)
ソフィアは、鑑定を使った
(思った通り)
(彼は、まだ“畑にいる”)
カズマは、軽く手を振った。
ソフィアが息を吐いた。
「……いたわね」
(ああ)
(間違いない)
「でも」
彼女は、少しだけ微笑む。
「今は、畑が世界なのよ」
(勇者が、剣を取るとは限らない)
(世界が、彼を必要とするまでは)
遠くで、
鍬の音が響いていた。
畑を耕す青年は、まだ知らない。
自分が――
この世界で、ただ一人の《勇者》であることを。
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