『転生したら木でした』 一万年後、世界樹はエルフの杖となる――

鬼神柴犬

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転生者は木と成り杖となる

13話 王都に属さぬ勇者

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王都からの召集令状が届いた夜。

静かな村の外れ。

「……どう思う?」

ソフィアが、杖に問いかける。

淡い緑光が灯る。

『王都へ行けば、彼は囲われる』

低く、落ち着いた声。

それはソフィアにしか聞こえない。

「やはり、そうですか」

カズマは首を傾げる。

「誰と話してるんです?」

「アル様です」

「俺には聞こえないんですよね、それ」

『当然だ』

ソフィアの意識にだけ、声が響く。

『私はお前の杖だ』

インテリジェンスウェポン。

世界樹の端末意識。

契約者はソフィア。

カズマは“選ばれていない”。

だが。

『しかし――』

杖の光が、わずかに強まる。

『世界は、彼を中心に動いている』

「……勇者、ということですか?」

『称号に意味はない』

静かな断言。

『だが、あの男は“枠”に収まらぬ』

そのとき。

カズマが苦笑する。

「王都に縛られるの、ちょっと嫌なんですよね」

「理由は?」

「スローライフしたいので」

即答だった。

ソフィアは小さく笑う。

だがその目は真剣だ。

「もし、王都に従わなければ?」

「独自で動きます」

軽い口調。

「魔王軍、放置はできませんし」

『……ふ』

ソフィアの中で、アルが微かに笑った。

『面白い男だ』

「アル様も、王都行きは推奨されません」

「やっぱり?」

「王都は、あなたのアイテムボックスを調査するでしょう」

空気が変わる。

城一つ分の容量を持つ、規格外の収納。

国家管理対象になるのは明白。

「没収は嫌ですね」

「ええ」

『そして』

アルの声が、少しだけ低くなる。

『私も解析対象になる』

世界樹の杖。

国家が見逃すはずがない。

ソフィアは静かに決める。

「ならば、王都には属しません」

カズマを見る。

「私と、旅をしてください」

王命ではない。

契約でもない。

選択。

カズマは、少し照れくさそうに笑う。

「喜んで」

その一言で、決まった。

翌朝。

王都への返答は簡潔だった。

“協力はする。
 だが指揮下には入らない”

使者は理解する。

この男は、管理できない。



村の外れ。

旅立ち。

ソフィアが杖を握る。

『接続、安定』

視界が拡張する。

魔力流動。
地脈。
遠方の魔物反応。

カズマは目を瞬かせる。

「なんか、急に索敵精度上がってません?」

「アル様が補助しています」

「便利ですね」

『便利で済ませるな』

ソフィアだけが、くすりと笑う。

カズマには聞こえない。

それでも三人は噛み合っている。

北の空に漂う、黒い瘴気。

魔王軍。

王都とは別の道。

ソフィアとアル。

そして、その隣に立つ男。

『守るのだな』

アルが問う。

「はい」

ソフィアは即答する。

「彼を、世界を」

カズマは何も知らないまま、前を向く。

「じゃあ、行きますか」

王都に属さぬ勇者。

世界樹の杖を持つエルフ。

そして無自覚の規格外。

世界の均衡が、静かに動き出した。
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