『転生したら木でした』 一万年後、世界樹はエルフの杖となる――

鬼神柴犬

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転生者は木と成り杖となる

14話 王子レオンハルト軍VS魔王軍四天王 激突

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第一王子レオンハルト。
王都ではすでに「勇者」と呼ばれていた。

だがそれは称号であって、選定ではない。

彼は戦士職。剣技は王国最上位。魔力適性も高く、宮廷魔導士が調整した一級魔装具を複数所持している。剣は聖鋼製、対魔結界のマント、魔力増幅の籠手。装備も技能も、勇者に迫る水準。

しかし――実戦経験だけが足りなかった。

勇者パーティはすでに“結成されている”と王都は喧伝していた。

隣に立つのはエルフ族賢者リーリア。
百年単位で研鑽を積んだ探知と支援魔法の達人。静かな口調で的確に戦場を読む。

もう一人はドワーフ族戦士ドリー。
重斧を操る前衛の要。鍛冶も戦も一流、頑固だが義に厚い。

王子は焦っていた。

「北へ進軍する。最短距離で魔王領へ」

作戦会議でそう言い切った。

リーリアが穏やかに問い返す。

「大森林は魔族の伏兵に適しています。段階的に戦果を積む方が」

「時間がない」

王子の声は強い。

「功績を示さねば、王国は不安に呑まれる」

ドリーが腕を組む。

「功績は追うものではなく、積み重なるものじゃがのう」

王子は笑った。

「私は王子だ。結果で示す」

討伐隊は“ある程度”整っていた。
聖騎士三十、魔導士二十、補給兵十。精鋭ではあるが、長期遠征には不安の残る即席編成。

それでも北へ。



大森林

木々は天を覆い、光を遮る。

夜営。
焚き火の前でドリーが呟く。

「静かすぎる。鳥も鳴かん」

リーリアは目を閉じる。

「監視されています。三方向」

王子は立ち上がる。

「ならば好都合だ。正面から叩く」

リーリアの視線が揺れる。

「殿下、魔族は正面からは来ません」

その言葉は、やがて現実になる。

森を抜けた瞬間、地面が発光。

「伏せろ!」

爆炎。後方壊滅。

霧が立ち込める。

「歓迎しよう、偽りの勇者」

姿を現したのは四天王軍《幻策将グリモル》。

背後には魔族兵百余。

ドリーが吠える。

「円陣!王子を中心に!」

リーリアが詠唱。

「《真視》《魔力標定》――本体は左前方!」

王子が踏み込む。

「突破する!」

斬撃は鋭い。確かに強い。
魔族兵が数体、即座に倒れる。

グリモルが笑う。

「技は一級。だが経験が浅い」

霧の中、味方の悲鳴。

幻影が混ざる。

「敵味方識別不能!」

リーリアが叫ぶ。

「殿下、無理に突撃しないで!」

「好機だ!」

王子は前へ出る。

ドリーが横薙ぎで道を作る。

「前に出すぎるな!」

王子の剣がグリモルの肩を裂く。

「捉えた!」

だが地面が爆ぜる。
隠蔽陣。二次爆発。

後衛壊滅。

霧の中から子供の声。

「勇者さま、助けて」

王子の刃が止まる。

「幻影です!」

その一瞬。

闇槍がドリーを貫く。

「ぐ……!」

リーリアが拘束陣に捕らわれる。

「精神干渉……強すぎる……!」

王子は怒号を上げる。

「卑怯だ!」

グリモルが冷笑する。

「戦とは効率だ」

王子は全力で斬りかかる。

確かに強い。

だが連携は崩れている。

即席の討伐隊は、混乱に耐えられない。

次々と倒れる。

ドリーが血を吐きながら叫ぶ。

「退け、王子!」

「退かない!」

三本の闇槍が王子を貫く。

膝が折れる。

周囲は静寂。

仲間は動かない。

グリモルが近づく。

「王子。勇者ごっこは終わりだ」

王子の手が震えながら指輪に触れる。

帰還の指輪――王家秘宝。

「私は……勇者だ」

光が爆ぜる。

荒野に残るのは屍だけ。



王城

転移光が玉座に弾ける。

王子は血塗れで倒れる。

「リーリア……ドリー……」

誰も答えない。

王子は拳を震わせる。

「私は、弱かったのか……?」

その時、報告が届く。

「辺境の村に勇者適性反応」

王子が顔を上げる。

「誰だ」

「農民の青年、と」

沈黙。

「農民……?」

「異常な戦闘適応能力を示しました」

王子の声が震える。

「私は王族だ。鍛えられ、選ばれ、備えた」

叫びが響く。

「なぜ私ではない!」

玉座の間は静まり返る。

王子は膝をつく。

「私は……勇者でありたかった」

遠い田舎村。
畑を耕す青年は、まだ自分が選ばれたことを知らない。

そして王子は初めて知る。

勇者とは、望む者ではなく――選ばれる者なのだと。
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