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転生者は木と成り杖となる
18話 剣は沈黙する
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剣は沈黙する
鉱山都市グランヴァルト。
山肌を削る巨大な露天掘りの奥、街の中央広場。
そこに“それ”はある。
巨大なミスリル鉱石に、深々と突き刺さった一振りの剣。
――聖剣エクスカリバー。
陽光を浴びてなお、刃は眩しくない。
鈍く、静かに、世界を見下ろしている。
「王子だ……」
「また力自慢か?」
群衆がざわめく。
レオンハルトは鎧を纏わず、外套のみで歩み出た。
挑戦者たちは皆、まず力を誇示する。
怒号と共に剣を握り、絶叫し、筋を浮き上がらせる。
だが彼は違った。
剣の前に立ち、手を触れない。
ただ、見つめる。
「……お前には意思があるのだろう」
周囲がざわつく。
「何だ? 祈りか?」
「怖気づいたか?」
レオンハルトは無視する。
「私は、選ばれなかった」
その言葉に、何人かが息を呑む。
王子の口から“弱さ”がこぼれた。
「勇者ではない。だが国を守りたい」
風が吹く。
ミスリル鉱石が鈍く鳴る。
「力を貸せとは言わない」
一歩、近づく。
「ただ、問いたい」
広場は静まり返る。
「勇者とは何だ」
沈黙。
剣は光らない。
震えない。
ただ在る。
レオンハルトは続ける。
「農民が勇者で、王子が違う理由は何だ」
群衆の視線が刺さる。
「王子、抜かぬのか!」
「語りかけてどうする!」
笑いが起きる。
子どもが囁く。
「変な王子……」
その言葉が耳に届く。
だが彼は動じない。
ゆっくりと、柄に触れる。
冷たい。
拒絶の熱はない。
だが、歓迎もない。
「私は、お前を道具にはしない」
それは本心だった。
「象徴にも、飾りにも」
刹那。
微かな魔力の震え。
だが――
次の瞬間、何も起きない。
沈黙。
完全な沈黙。
エクスカリバーは応じない。
レオンハルトの額に汗が滲む。
「……足りぬか」
低い声。
剣は答えない。
観衆の一人が笑う。
「ほらな! 王子でも無理だ!」
「勇者じゃなきゃな!」
その言葉。
心の奥が軋む。
だが彼は怒鳴らない。
握りしめることもしない。
ただ、手を離す。
「今日は抜かぬ」
ざわめき。
「逃げたぞ!」
「やっぱり口だけだ!」
レオンハルトは振り返らない。
広場を去る。
背後で笑い声。
蔑み。
失望。
だが。
誰も気づかなかった。
剣の刃先が、ほんのわずかに震えたことを。
ほんの、わずか。
拒絶ではない。
様子見。
評価未了。
エクスカリバーは“怒らなかった”。
それだけで異常だった。
宿へ戻る途中。
密偵長が囁く。
「殿下……いかがでしたか」
レオンハルトは静かに答える。
「沈黙だ」
「拒絶ではなく?」
「……判断保留だ」
その言葉に、密偵長が目を細める。
レオンハルトは空を見上げる。
「対話には時間がいる」
彼は理解していた。
武器は力を測るのではない。
“心の純度”を測る。
だが彼の心は、今。
嫉妬と理屈と焦燥で濁っている。
それを剣は見抜いている。
「ならば磨く」
小さな呟き。
勇者でなくとも。
選ばれなくとも。
認めさせる。
その道を。
だが遠くの空で、白銀の鳥が旋回していた。
鉱山都市グランヴァルト。
山肌を削る巨大な露天掘りの奥、街の中央広場。
そこに“それ”はある。
巨大なミスリル鉱石に、深々と突き刺さった一振りの剣。
――聖剣エクスカリバー。
陽光を浴びてなお、刃は眩しくない。
鈍く、静かに、世界を見下ろしている。
「王子だ……」
「また力自慢か?」
群衆がざわめく。
レオンハルトは鎧を纏わず、外套のみで歩み出た。
挑戦者たちは皆、まず力を誇示する。
怒号と共に剣を握り、絶叫し、筋を浮き上がらせる。
だが彼は違った。
剣の前に立ち、手を触れない。
ただ、見つめる。
「……お前には意思があるのだろう」
周囲がざわつく。
「何だ? 祈りか?」
「怖気づいたか?」
レオンハルトは無視する。
「私は、選ばれなかった」
その言葉に、何人かが息を呑む。
王子の口から“弱さ”がこぼれた。
「勇者ではない。だが国を守りたい」
風が吹く。
ミスリル鉱石が鈍く鳴る。
「力を貸せとは言わない」
一歩、近づく。
「ただ、問いたい」
広場は静まり返る。
「勇者とは何だ」
沈黙。
剣は光らない。
震えない。
ただ在る。
レオンハルトは続ける。
「農民が勇者で、王子が違う理由は何だ」
群衆の視線が刺さる。
「王子、抜かぬのか!」
「語りかけてどうする!」
笑いが起きる。
子どもが囁く。
「変な王子……」
その言葉が耳に届く。
だが彼は動じない。
ゆっくりと、柄に触れる。
冷たい。
拒絶の熱はない。
だが、歓迎もない。
「私は、お前を道具にはしない」
それは本心だった。
「象徴にも、飾りにも」
刹那。
微かな魔力の震え。
だが――
次の瞬間、何も起きない。
沈黙。
完全な沈黙。
エクスカリバーは応じない。
レオンハルトの額に汗が滲む。
「……足りぬか」
低い声。
剣は答えない。
観衆の一人が笑う。
「ほらな! 王子でも無理だ!」
「勇者じゃなきゃな!」
その言葉。
心の奥が軋む。
だが彼は怒鳴らない。
握りしめることもしない。
ただ、手を離す。
「今日は抜かぬ」
ざわめき。
「逃げたぞ!」
「やっぱり口だけだ!」
レオンハルトは振り返らない。
広場を去る。
背後で笑い声。
蔑み。
失望。
だが。
誰も気づかなかった。
剣の刃先が、ほんのわずかに震えたことを。
ほんの、わずか。
拒絶ではない。
様子見。
評価未了。
エクスカリバーは“怒らなかった”。
それだけで異常だった。
宿へ戻る途中。
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「殿下……いかがでしたか」
レオンハルトは静かに答える。
「沈黙だ」
「拒絶ではなく?」
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彼は理解していた。
武器は力を測るのではない。
“心の純度”を測る。
だが彼の心は、今。
嫉妬と理屈と焦燥で濁っている。
それを剣は見抜いている。
「ならば磨く」
小さな呟き。
勇者でなくとも。
選ばれなくとも。
認めさせる。
その道を。
だが遠くの空で、白銀の鳥が旋回していた。
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