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転生者は木と成り杖となる
19話 カズマ剣を拾う
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旅の途中、二人は鉱山都市グランヴァルトへ立ち寄った。
石畳は煤で黒ずみ、空気はわずかに鉄の匂いを帯びている。
だが活気はある。
露店から立ちのぼる香ばしい煙。
炭火で焼かれる分厚い串肉。
脂が弾け、焦げ目から肉汁が滴る。
岩塩と黒胡椒が振られ、香りが鼻腔を刺す。
山菜と燻製チーズを包んだ焼きパンは、割ると中からとろりと溶け出す乳脂。
表面はぱりっと香ばしく、中はもっちり。
大鍋では鉱夫シチュー。
牛骨を長時間煮込んだ濃厚なスープに、芋と人参と塊肉が沈む。
粗く砕いた胡椒が浮き、湯気と共に旨味が立ち上る。
露店から漂う香ばしい匂い。
「……あ、いい匂い」
ソフィアが足を止めた。
「まずは食事ね」
ソフィアは当然のように席を確保した。
カズマは苦笑する。
「腹ごしらえ?」
「当たり前でしょ。空腹は判断力を鈍らせるの」
ニ人分の皿が並ぶ。
カズマが一口、肉を噛む。
「……うまっ」
炭の香り、塩の刺激、肉汁の甘み。
ソフィアはシチューを口に運び、目を細めた。
「これ、王都より美味しいかも」
アルも味覚共有し満足している
アルが心の声ダダ漏れで美味い美味いと連呼している。 「そういえば」
「この町の中央に、勇者の剣が刺さっているそうだぞ」
視線が中央広場へ向く。
カズマがパンを咥えたまま止まる。
「勇者の剣?」
「巨大な鉱石に刺さったまま、誰も抜けないらしい」
ソフィアの目が、ゆっくりとカズマへ向いた。
「カズマ」
嫌な予感。
「貴方、その剣抜いてきなさいよ」
「は?」
「勇者なんでしょ?」
「いや、まだ自称というか……」
ソフィアはスープを一口。
「試す価値はあるわ」
アルが笑う。
「抜けたら話が早い」
「軽いなぁ……」
だがカズマは立ち上がる。
「まぁ、見るだけなら」
広場は人で溢れていた。
中央。
巨大なミスリル鉱石。
そこに――
聖剣エクスカリバー。
群衆がざわめく。
「また挑戦者か?」
「若いな」
カズマは首を傾げる。
「なんか……思ったより普通の剣だな」
「失礼よ」
ソフィアが呟く。
カズマは近づく。
柄に触れようとして、止まる。
「抜けなかったら笑われるよな」
「もう見られてるわよ」
振り返ると、完全に注目の的。
「……はぁ」
覚悟も野望もない。
功績欲もない。
ただ――
「……よろしく?」
カズマは、ぐっと引く。
動かない。
「やっぱ無理か」
観衆から小さな笑い。
カズマは眉を寄せる。
「……なんかさ」
もう一度、両手で握る。
「剣が重いんじゃなくて、台座が重い気がするんだけど」
誰も理解しない。
「せーのっ」
力を込める。
グゴゴっと音がした。
地面がひび割れる。
観衆がざわめく。
「おい……?」
次の瞬間。
ドゴンッ!!
地面ごと、持ち上がった。
剣ではない。
巨大なミスリル鉱石そのものが、地面から引き抜かれた。
砂煙が舞う。
観衆が絶句。
カズマは鉱石を抱えたまま固まる。
「……あれ?」
剣は、まだ刺さったまま。
その時。
カァン――
澄んだ音が鳴った。
刃が微かに光る。
内部から、何かが目覚める気配。
「……ん?」
低く、幼い声。
誰にも聞こえない。
カズマ以外には。
『……なにこれ。浮いてる?』
カズマが瞬きをする。
「え?」
『え? ここどこ? 暗っ……いや明るっ……』
剣の中で、意識が混乱している。
『寝てたんだけど私』
完全に眠っていた。
“選別待機状態”。
挑戦者のほとんどは触れた瞬間に拒絶されたため、
剣は深層待機に入っていた。
だが。
今。
本体ごと引き抜かれた衝撃で覚醒。
『ちょっと待って、なんで本体ごと?』
カズマは鉱石を抱えたまま呟く。
「……剣が喋った?」
ソフィアが目を見開く。
「何て?」
「寝てたって」
アルが静かに言う。
「興味深い。完全覚醒ではないな」
剣の声が響く。
『え、あなた誰。勇者? 違うよね? 勇者もっとキラキラしてる』
「失礼だな!?」
観衆は静まり返っている。
鉱石を抱えた青年。
光る聖剣。
「……抜けたのか?」
「いや違う……」
「地面ごとだぞ!?」
剣はぶつぶつ言う。
『ちょっと待って、状況整理するから。降ろして』
「重いんだけど」
『知らないよ!』
カズマが鉱石を地面に置く。
剣はまだ刺さっている。
だが、今。
はっきりと目覚めた。
聖剣エクスカリバーは、
初めて“興味”を示した。
遠く王都で。
報告が届く。
「殿下……農民の青年が……」
「抜いたのか」
「いえ……鉱石ごと」
沈黙。
レオンハルトの瞳が揺れる。
「……意味が分からぬ」
だが、確実に。
剣は目覚めた。
石畳は煤で黒ずみ、空気はわずかに鉄の匂いを帯びている。
だが活気はある。
露店から立ちのぼる香ばしい煙。
炭火で焼かれる分厚い串肉。
脂が弾け、焦げ目から肉汁が滴る。
岩塩と黒胡椒が振られ、香りが鼻腔を刺す。
山菜と燻製チーズを包んだ焼きパンは、割ると中からとろりと溶け出す乳脂。
表面はぱりっと香ばしく、中はもっちり。
大鍋では鉱夫シチュー。
牛骨を長時間煮込んだ濃厚なスープに、芋と人参と塊肉が沈む。
粗く砕いた胡椒が浮き、湯気と共に旨味が立ち上る。
露店から漂う香ばしい匂い。
「……あ、いい匂い」
ソフィアが足を止めた。
「まずは食事ね」
ソフィアは当然のように席を確保した。
カズマは苦笑する。
「腹ごしらえ?」
「当たり前でしょ。空腹は判断力を鈍らせるの」
ニ人分の皿が並ぶ。
カズマが一口、肉を噛む。
「……うまっ」
炭の香り、塩の刺激、肉汁の甘み。
ソフィアはシチューを口に運び、目を細めた。
「これ、王都より美味しいかも」
アルも味覚共有し満足している
アルが心の声ダダ漏れで美味い美味いと連呼している。 「そういえば」
「この町の中央に、勇者の剣が刺さっているそうだぞ」
視線が中央広場へ向く。
カズマがパンを咥えたまま止まる。
「勇者の剣?」
「巨大な鉱石に刺さったまま、誰も抜けないらしい」
ソフィアの目が、ゆっくりとカズマへ向いた。
「カズマ」
嫌な予感。
「貴方、その剣抜いてきなさいよ」
「は?」
「勇者なんでしょ?」
「いや、まだ自称というか……」
ソフィアはスープを一口。
「試す価値はあるわ」
アルが笑う。
「抜けたら話が早い」
「軽いなぁ……」
だがカズマは立ち上がる。
「まぁ、見るだけなら」
広場は人で溢れていた。
中央。
巨大なミスリル鉱石。
そこに――
聖剣エクスカリバー。
群衆がざわめく。
「また挑戦者か?」
「若いな」
カズマは首を傾げる。
「なんか……思ったより普通の剣だな」
「失礼よ」
ソフィアが呟く。
カズマは近づく。
柄に触れようとして、止まる。
「抜けなかったら笑われるよな」
「もう見られてるわよ」
振り返ると、完全に注目の的。
「……はぁ」
覚悟も野望もない。
功績欲もない。
ただ――
「……よろしく?」
カズマは、ぐっと引く。
動かない。
「やっぱ無理か」
観衆から小さな笑い。
カズマは眉を寄せる。
「……なんかさ」
もう一度、両手で握る。
「剣が重いんじゃなくて、台座が重い気がするんだけど」
誰も理解しない。
「せーのっ」
力を込める。
グゴゴっと音がした。
地面がひび割れる。
観衆がざわめく。
「おい……?」
次の瞬間。
ドゴンッ!!
地面ごと、持ち上がった。
剣ではない。
巨大なミスリル鉱石そのものが、地面から引き抜かれた。
砂煙が舞う。
観衆が絶句。
カズマは鉱石を抱えたまま固まる。
「……あれ?」
剣は、まだ刺さったまま。
その時。
カァン――
澄んだ音が鳴った。
刃が微かに光る。
内部から、何かが目覚める気配。
「……ん?」
低く、幼い声。
誰にも聞こえない。
カズマ以外には。
『……なにこれ。浮いてる?』
カズマが瞬きをする。
「え?」
『え? ここどこ? 暗っ……いや明るっ……』
剣の中で、意識が混乱している。
『寝てたんだけど私』
完全に眠っていた。
“選別待機状態”。
挑戦者のほとんどは触れた瞬間に拒絶されたため、
剣は深層待機に入っていた。
だが。
今。
本体ごと引き抜かれた衝撃で覚醒。
『ちょっと待って、なんで本体ごと?』
カズマは鉱石を抱えたまま呟く。
「……剣が喋った?」
ソフィアが目を見開く。
「何て?」
「寝てたって」
アルが静かに言う。
「興味深い。完全覚醒ではないな」
剣の声が響く。
『え、あなた誰。勇者? 違うよね? 勇者もっとキラキラしてる』
「失礼だな!?」
観衆は静まり返っている。
鉱石を抱えた青年。
光る聖剣。
「……抜けたのか?」
「いや違う……」
「地面ごとだぞ!?」
剣はぶつぶつ言う。
『ちょっと待って、状況整理するから。降ろして』
「重いんだけど」
『知らないよ!』
カズマが鉱石を地面に置く。
剣はまだ刺さっている。
だが、今。
はっきりと目覚めた。
聖剣エクスカリバーは、
初めて“興味”を示した。
遠く王都で。
報告が届く。
「殿下……農民の青年が……」
「抜いたのか」
「いえ……鉱石ごと」
沈黙。
レオンハルトの瞳が揺れる。
「……意味が分からぬ」
だが、確実に。
剣は目覚めた。
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