『転生したら木でした』 一万年後、世界樹はエルフの杖となる――

鬼神柴犬

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転生者は木と成り杖となる

24話 会心の一撃

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町を出てすぐ、石畳は土道に変わる。

遠くに連なる山脈。
その向こうが峡谷。

カズマのアイテムボックスで
荷は軽い。

ノエルは先頭。
一定の歩幅。無駄がない。

ソフィアは周囲を警戒しつつ、時折空を見上げる。
イカロスの姿はない。

アルノームが低く言う。

(風向きは安定。伏兵は無し。今日は進めるだけ進もう)

エクスが鼻を鳴らす。

(平和ね。嵐の前ってやつかしら)

日が落ちる前に野営。

カズマが手際よく結界石を配置。
ソフィアが簡易防御魔法を重ねる。

ノエルは薪を割る。

火を起こし
パチパチと音。

干し肉を炙る。
保存パンを温める。
簡易スープを煮る。

湯気が立つ。

ノエルは黙って肉を噛む。

ソフィアは丸太に腰掛け、足をぷらぷらさせてギルドカードを眺めている。

「Fランク、ねぇ……」

火の明かりに照らされる文字。

「薬草採取とか~ゴブリン退治とか、そういうのよね普通」

カズマが苦笑。

「俺たち、四天王狩りから始めてる」

それから小さな笑い。

エクスが誇らしげに言う。

(スケールが違うのよ)

アルが穏やかに。

(そうだね)

ノエルが静かに言う。

「……狩り潰してやりましょう」

声は低い。
だが火より熱い。

笑いが止まり、空気が少し締まる。



■ 二日目 ― 空気が変わる

山道は細くなる。

鳥の声が減る。

風が冷たい。

アルが言う。

(魔力濃度が上がっている。近いな)

ソフィアの表情も真面目になる。

野営。

会話は減る。

作戦確認。

アルが整理する。

(時間との勝負だ。長引けば不利になる)
霧が出たら、まずソフィアが振動波。俺は魔素浄化をする。
カズマとエクスは前衛突破。
ノエルは本体核へ直行
グリモルを討つ。

ノエルが頷く。

「了解」

緊張が、静かに積み上がる。



■ 三日目 ― 前触れ

朝。

空が妙に静か。

風がない。

アルが短く言う。

(……早いな)

まだ峡谷手前。

だが足元が白む。

薄い霧。

ソフィアが立ち止まる。

「予定より手前よ」

カズマが剣に手をかける。

霧が濃くなる。

音が吸われる。

火の残り香すら消える。

ノエルが盾を持つ。

「来たな」

アルの声が低く、冷える。

(野営地を選ばれた。
不意打ち)

霧が満ちる。

視界が白に閉ざされる。

ソフィアが杖を掲げる。

「アル、重ねるわよ!」

風圧。
振動。
魔力の共鳴。
魔素浄化展開。
霧が裂ける。


アルが叫ぶ。

(今だ、ノエル!)

同時にカズマが前に出る。

魔物の群れを聖剣で蹴散らす。

「道は俺が作る!」

エクスが高らかに笑う。

(雑魚は任せなさい!)

雑魚を斬り伏せ、一直線の突破路ができる。

ソフィアが強化魔法重ね掛け。

「身体強化、感覚拡張、魔力循環加速!ダブル、トリプル」

光がノエルを包む。

ノエルは一言。

「……行く」

地面を蹴る。

爆ぜるような踏み込み。

グリモルの本体へ、鍛え上げたロングソードが振り下ろされる。

会心の一撃。

――だが。

手応えがない。

空を斬った。

アルの声が鋭く響く。

(後ろだ、ノエル!)

振り向く暇はない。

背後に、冷たい魔力。

グリモルの刃が振り下ろされる。

「父と同じだ」

淡々とした声。

その瞬間――

空が裂けた。

凄まじい光が峡谷を貫く。

白銀の影が急降下。

轟音。

ノエルの背に届くはずだった刃を、白銀の翼が弾き飛ばす。

光の中から声。

(間に合った)

イカロス。

翼が折り畳まれ、形を変える。

白銀の盾。

(ノエル。私を使え)

ノエルの瞳が揺れない。

静かに、それを掴む。

「……借りる」

盾と剣。

両手に宿る光。

グリモルが初めて表情を変える。

「想定外だ」

ノエルが地面を蹴る。

凄まじい爆音と衝撃波。

雷光のような突進で
魔物が吹き飛ぶ。

イカロスの盾で魔力障壁を粉砕。

一瞬で距離を詰める。

ロングソードが閃く。

真正面から。

策も幻も関係ない。

「父の仇だ!」

会心の一撃一閃。

地を裂く衝撃。

グリモルの身体が崩れる。

霧が晴れていき

倒れ伏したグリモルが、最後に呟く。

「魔王様……」

そして大きな魔石を残して消滅した。

ノエルは砕けそうなロングソードを杖にし立ったまま、呼吸を整える。

イカロスが静かに語る
(良い一撃だった)

「仇がとれた。本当にありがとう。」

峡谷に気持ち良い風が通る。

父を越えた娘の背が、夕陽に照らされていた。
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