『転生したら木でした』 一万年後、世界樹はエルフの杖となる――

鬼神柴犬

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転生者は木と成り杖となる

23話 《幻策将グリモル》討伐へ動き出す

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山道を抜けた先に、小さな交易町があった。

石造りの城壁はところどころ崩れ、門番の鎧も擦り切れている。
魔物の被害が増えている証だった。

勇者たちはまず、町外れに現れた魔物の群れを片付ける。

ノエルが前に立つ。

盾で一撃を受け止め、踏み込み、大剣を横薙ぎに払う。
衝撃が地面を震わせる。

その背後で勇者の聖剣が閃く。

ソフィアが魔法を発動し
アルが完全制御する
MP消費無し
支援魔法と回復
合間に追尾連撃魔法を速射する。

連携は早くも噛み合っている。

粗方、討伐を終えた頃には、町の空気が変わっていた。
怯えよりも、安堵が勝っている。

「助かった……」

商人たちが頭を下げる。
子供が勇者を見上げ、目を輝かせる。


宿に入り、温かい食事を囲む。

ドワーフ仕込みの濃い麦酒を、ノエルは一息で飲み干した。

鎧を外した姿は小柄だが、背筋は伸びている。

卓に運ばれてきたのは、分厚い牛肉の鉄板焼きだった。
表面は香ばしく焦げ、刃を入れれば赤い肉汁が静かに滲む。

岩塩の粒が光り、溶けた脂が湯気を立てる。

ソフィアがスープを口にする。
根菜と骨の出汁が優しい。

「生き返るわね」

その横で、世界樹の杖が淡く揺れた。

(ほぉ……悪くない)

三十代半ばの、妙に現実的な響き。

アルノームだ。

(俺が人間だった頃もな、こういう宿飯はご馳走だった。出張帰りに一杯やってなぁ……)

「また前世の話?」

ソフィアが小声で笑う。

向かいでカズマが苦笑する。

その腰の聖剣が、ぴくりと震えた。

(ちょっと 何で転生者が杖やってんのよー)

甲高く、勝ち気な少女の声。

聖剣エクス。

「……賑やかだな」

ノエルが静かに言う。

カズマは一拍置き、彼女を見る。

「言っておく。こいつらはインテリジェンスウェポンだ」

ノエルの視線が、杖と聖剣へ移る。

「……意思が、あるのか」

(あるとも。俺は世界樹の杖アルノーム。元・人間。今は杖だが人格は健在だ)

(私は聖剣エクス。そこらの鉄くずと一緒にしないでね)。

「人前でも喋るの?」

(常識はあるさ。あまり人前で喋れば面倒になるからな)

(私だって分かってるわよ)

ノエルは小さく頷く。

「了解した」

そのとき、エクスがふと呟いた。

(ねぇ、ノエル)

「どうした?」

(ミスリルの鞘、作ってくれない? 
あれ、寝心地いいのよ)

ノエルが瞬きをする。

「……寝心地?」

(魔力の巡りが滑らかになるの。落ち着くのよ)

少し黙ってから、ノエルは小さく頷いた。

「聖剣にふさわしい鞘を用意しよう」

(やった。約束よ)

アルノームが穏やかに笑う。

食後、外に出るとソフィアが空を見上げると。

白銀の翼が、夜の蒼を滑るように旋回している。

イカロス。

「珍しい、皆んな見て」

「空を飛ぶインテリジェンスウェポンイカロスよ。」

ソフィアの目が、ゆっくりとカズマへ向いた。

「カズマ」

嫌な予感。

「貴方、捕まえて来なさいよ」

「無理でしょ」

即答。

笑いが広がった。

(エクスは先代の魔王討伐でイカロスと同じパーティだったはず)

アルが穏やかに言う。

フフーン
(エクスとイカロスは、ずっ友で戦友)

(まぁその内降りて来るんじゃない?)

――――――

翌朝、道具屋へ向かう。

干し肉、保存食、水袋、簡易テント、予備ロープ、松明、解毒薬。
魔物素材用の保存袋も追加。

「全部まとめて」

カズマのアイテムボックスへ吸い込まれていく。

店主が目を丸くした。

「便利だな……」

勇者は苦笑する。

――――――

冒険者ギルド。

重厚な扉を開けると、酒と革の匂い。

古びた看板。
掲示板には討伐依頼が並ぶ。

受付嬢が丁寧に説明する。

「ランクはFからSSSまでございます。
FランクはFランク相当の魔物を単独討伐可能と判断された実力が基準です」

Eは複数戦闘。
Dで安定討伐。
C以上は危険地帯。
Bは国家依頼級。
Aは英雄格。
Sは国防戦力。
SSSは国家災害級への対抗存在。

勇者一行は登録を済ませる。

現時点ではF。

だが受付嬢は聖剣を見て、わずかに目を細めた。

「昇格は実績次第です」

ギルドカードが手渡される。

これで公的に動ける。

ノエルが静かに言う。

カズマは本題に入る。

「《幻策将グリモル》の情報は?」

受付嬢の顔色が変わる。

「四天王の一人……霧を操る将ですね」

最近、中央北部の峡谷で“味方同士が斬り合う”事件が続いているという。
霧が出る。
退路が消える。
生き残りは、口を揃えて同じ名を出す。
《幻策将グリモル》

ノエルの指が、盾の縁を強く握る。

静かに問う。

「……定点は無いのか」

「はい。ですが霧の発生地点は記録しております」

地図が差し出される。

空には白銀の守護。

風が優しく背を押す。

そして、アルノームが静かに語った。

(旅とはいいものだ。肩書きも過去も関係ない。ただ前へ進める。
俺は今、杖としてだが――確かに生きている)
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