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01 チュートリアル
07 Baltroy (インタビュー)
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「よし、行くか」
「はい」
引っ越しをして別々の部屋になった。お互いの部屋に声紋キーをつけたので、また万が一俺がおかしくなっても安心。今日は例のAVレーベルに行く。オートキャリアを使う。
「ブリングの連絡用IDを交換するんだけど、お前のはいいや。俺のだけで。今日はまあ、お前は初めてだからメモでも取ってろ」
「わかりました」
「わかった」
「わかった」
「あと、これ。現場に出るんなら付けとかなきゃな。足出しな。足首」
恐る恐るヴェスタが出した細い足首に、テープのようなタグを付ける。
「これはビーコン。登録されたやつにしか外せない。つまり、俺にしか外せない。お前の健康状態がやばくなると音が鳴って、死にそうになるとデータが救急に飛ぶ。うちの部署のやつはみんな付けてる。わかったか?」
「わかりま……わかった」
指定されたビルに着くと、かなり古い建物だった。エレベーターが箱型。窓も全面じゃなくて、サッシで嵌め込まれたタイプ。人工大理石の床。小綺麗に見えるが、年代物だ。
「三階の応接室にどうぞ」
一階の受付で、先日コールを受けてくれたらしい細身の髪の長い女性がエレベーターを手で示した。リニアじゃないエレベーターなんて初めて乗る。なんだか開放感がなくて息が詰まる。
三階に降りる。三階は人工大理石すら貼られていない。うちっぱなしのコンクリートの寒々とした壁。両側に部屋がある。一番手前が応接室だった。ノックして入る。
「こんにちは、キュリオシスタのエヴァーノーツです。本日はご快諾頂きまして」
ドアの中にはモンシャと、不健康そうな髪がチリチリした色黒の男性がソファに座っていた。
「どうも。わたくし、モンシャのマネジャーです」
「モンシャです」
モンシャは戸籍に登録されていた写真よりだいぶ痩せている。くまも濃く、体を覆う黒い服に身を包んでいても、骨と皮のような体の線が見える。血の匂いがする。どこかに傷があるんだろう。
「モンシャさんはすごく過激な撮影ばかりされてますよね。それで興味を持ったんですが。普段どんな生活されているんですか?」
「モンシャはそういうの秘密なんですよ。ミステリアスが売りなんで。な?」
マネジャーを名乗った男が答える。
「はい、そうなんです」
「なるほど。そうですよね、とってもミステリアスでお綺麗だなと思います。モンシャさんはご自分の作品の中で一番おすすめなのはありますか?」
「最近のですと、『今夜も! イキまくり輪姦百連発』でしょうかね。な?」
「そうですね」
「あれはすごかったんですよ。AV俳優15人くらい呼んで。代わり番こでね。何時間もかかったけどおかげさまでいい感じに撮れました。気持ちよかったんでしょ?」
「気持ちよかったです」
「なるほど。もともとそういうのがお好きなんですか?」
「そうなんですよ。何やっても感じちゃって楽しくプレイするんでね、こっちも企画し甲斐がありますよね。な?」
「はい。好きです。楽しいです」
「そうですか。ありがとうございました。お勧めいただいた動画なんですが、記事にタイトルとあらすじを入れたいので何か宣伝用のものがあったらいただけますか?」
「ちょっと待っててくださいね」
マネジャーの男が席を外す。モンシャと俺たちだけになる。
「……モンシャさん、今日は晴れですね。明日の天気はどうでしょうね?」
モンシャは少し考えて、
「明日は曇りのち晴れ、一日を通じて湿度56%ですよ」と言った。
ガチャンとドアが開き、男がデータチップを持って戻ってきた。
「これ、宣伝用のコピーです。どうぞ」
「ありがとうございます。申し訳ないんですが、穴埋め用の記事なんで、掲載されるかお約束はできませんが」
「いいですよ。どうもどうも」
オートキャリアに乗り込む。
「どうだった。取材は」
ヴェスタに水を向けると、ヴェスタは首を傾げた。
「何もわかりませんでした」
「何もわかんなかった」
「何もわかんなかった」
「だろ。一介の記者が核心に迫るインタビューなんかしたらだめなんだよ。怪しいだろ。記者のふりする時はただの下見だと思いな。でもひとつわかった。どうやってるのか知らないけど、支配率をいじってるな」
「なんでわか…んの?」
「よくできました。最後に天気を聞いたろ? お前に聞くけどさ、明日の天気はなんだと思う?」
「え? うーん……晴れ…かな?」
「そうだろ。そんなもんだ。でもな、レプリカントは支配度が上がれば上がるほど詳しく定型的になっていくんだ。なんとかのちなんとか、湿度何%、降水確率どうのこうの。湿度まで言うのはだいたい支配率50%くらいだ。あと、まばたき」
「瞬き」
「ずーっと同じ間隔で瞬きしてたろ」
「気づかなかった……」
「普通気づかねーよ。知ってないとな。ヒューマンはさ、感情とかその場の雰囲気とかで瞬きの間隔って変わるけど、支配率の高いレプリカントは瞳を乾燥から守るためだけにまばたきするから、室内では一定になるんだ」
ヴェスタがぱちぱちっと大きな目をまばたきさせた。こいつは瞳の乾燥だけでまばたきするタイプではないらしい。
「とりあえず、捜査官としてはあのレプリカントの意思確認をしなきゃならない。本当にあの仕事が好きでやってるのか、無理矢理やらされてるのか。でも支配率上げられてるとすれば、やりたくてやってると言うだろうな……」
ここで手詰まり。人権持ちが自分の意思でやってると言ってしまえば保護はできない。
「どうだったら踏み込めるん…踏み込めるの?」
「そうだなあ……例えば、撮影の時以外は鎖に繋がれてるとか、食事させてもらえないとか、客観的に非人道的な様子を押さえられれば。でなきゃ、もろに非合法のレプリカントを使ってるのを見つければ。芽があるとすればこれかな」
「わかった」
ヴェスタはブースに戻ってからさっさとスニッフスナッフが出している動画を洗い、使われている俳優をリストアップして画像検索をかけ始めた。その合間に今週納品分のレプリカントの現状確認をする。本当にできる奴だ。俺のやる事がなくなる。さて。何をしようかな。
もう少し、この前かかった画像を見てみることにした。一人一人。さっき会ったモンシャ。ニフェルトか。オーナーが死んでから、街でのショットが全くなくなっている。これがもはやおかしいと言えばおかしいけど、通販で生きていこうと思えば出来るからな……。
オーナーとの最後の写真を見つける。発注者がオートキャリアに頭を突っ込んで、横にニフェルトが立ってる写真。目が虚ろだ。オーナーはオートキャリアに乗っている誰かと話をしてるようだ。日付。オーナーが死んだ日だ。何か引っかかった。
オーナーの方を同じ日付で画像検索する。同じ写真。オートキャリアの誰かと話している。その後の写真。一人で街を歩いている。ニフェルトはさっきの車に乗せたのか? 次の写真。どこかのビルの非常階段を登っている写真。次は手すりから身を乗り出している。最後。地面に横たわって──ありていに言うと潰れている写真。以上。ニフェルトを誰かに渡して、すぐに自殺したんだ。その足で、まっすぐ。
「うーん……」
自分は死ぬから、ニフェルトが生活に困らないように誰かに預けたと取れなくもないけど。でもこの後すぐにニフェルトはモンシャとしてあんな動画に出るわけだ。どうもピンと来ない。オーナーの死亡時の調書を読んでみる。死亡者は、パートナーとの関係に悩んでいたとの友人からの談。パートナーか。ニフェルトのこと? ニフェルトの他に誰かいて、三角関係だった? でもニフェルトを手放したのなら片付きそうな悩み。
「バル、見つかった」
ヴェスタに呼ばれてブースに行く。モニタに一人の可愛らしい少女が映し出されている。
「この子、戸籍に登録がない。納品は半年前で、支配率34%」
「第三種でもない? よな。よし! よくやった」
ヴェスタの緑の髪をくしゃくしゃと撫でた。まず本人の保護、スニッフスナッフの代表の事情聴取、そしてオーナーの確保と起訴だな。
局長にざっくり話して応援を頼み、明日踏み込むことになった。それまでに少しヴェスタに仕込んでおかないといけない。
「ヴェスタ。こっち来な」
地下の訓練室に入る。防弾シールドとゴーグルを付けて銃をいくつか並べる。
「これが普通の実弾銃。最近は俺たちも使ってない。使ってるのはこっち。パルスガン」
言ってヴェスタの足を撃つ。
「痛った!!」
「でも痛いだけさ。今のは出力が小。中にすると足全体が痺れて動けなくなるかな。これもサウンドブレイカーと似た仕組みで、パルスで細胞を震わせて痛みを与えるんだ。防弾シールドも通過。頭を向けて撃つと脳震盪を起こして相手が昏倒する。でもそのまま起きなくなっちゃう事もあるから、頭は勘弁してやれ。これが流行りのサウンドブレイカー。撃ってみな」
「は?」
俺の右手のひらをヴェスタに向けてトントンと指す。ここに撃ってみろよ。距離は1メートルもない。
「俺は大丈夫だから撃ってみな」
ヴェスタは何度も逡巡したが、促されて引き金を引いた。何の音も手応えもない。ただ、引き金を引いた瞬間、撃たれた手が空中で弾かれたように踊った。
「痛ってえな」
「バルが撃てって言ったんでしょう!」
「そうなんだけどさ。痛いもんは痛い。な。これも通過。見ろ。弾が貫通した跡がわかるだろ?」
手のひらは、5センチほどの円形に赤くなって震えている。手の甲にも同じ大きさの赤みが出ている。
「俺でもしばらくは痺れてる。これを普通のやつが食らうとどうなるかというと」
ブリングで検索画像を映す。火傷のような水膨れの写真。皮膚が剥がれて浸潤液でてかてかになっている写真。
「だから、注意しろよ。実弾は怖くない」
言いながら、バンバンバンとヴェスタを撃つ。
「ちょっと!!!」
防弾シールドが全て弾き返す。
「怖くないって言っただろ」
「さっきもだけど、急に撃つなよ!」
「お。砕けてきたな。いい調子」
手のひらはもう治っていた。
「はい」
引っ越しをして別々の部屋になった。お互いの部屋に声紋キーをつけたので、また万が一俺がおかしくなっても安心。今日は例のAVレーベルに行く。オートキャリアを使う。
「ブリングの連絡用IDを交換するんだけど、お前のはいいや。俺のだけで。今日はまあ、お前は初めてだからメモでも取ってろ」
「わかりました」
「わかった」
「わかった」
「あと、これ。現場に出るんなら付けとかなきゃな。足出しな。足首」
恐る恐るヴェスタが出した細い足首に、テープのようなタグを付ける。
「これはビーコン。登録されたやつにしか外せない。つまり、俺にしか外せない。お前の健康状態がやばくなると音が鳴って、死にそうになるとデータが救急に飛ぶ。うちの部署のやつはみんな付けてる。わかったか?」
「わかりま……わかった」
指定されたビルに着くと、かなり古い建物だった。エレベーターが箱型。窓も全面じゃなくて、サッシで嵌め込まれたタイプ。人工大理石の床。小綺麗に見えるが、年代物だ。
「三階の応接室にどうぞ」
一階の受付で、先日コールを受けてくれたらしい細身の髪の長い女性がエレベーターを手で示した。リニアじゃないエレベーターなんて初めて乗る。なんだか開放感がなくて息が詰まる。
三階に降りる。三階は人工大理石すら貼られていない。うちっぱなしのコンクリートの寒々とした壁。両側に部屋がある。一番手前が応接室だった。ノックして入る。
「こんにちは、キュリオシスタのエヴァーノーツです。本日はご快諾頂きまして」
ドアの中にはモンシャと、不健康そうな髪がチリチリした色黒の男性がソファに座っていた。
「どうも。わたくし、モンシャのマネジャーです」
「モンシャです」
モンシャは戸籍に登録されていた写真よりだいぶ痩せている。くまも濃く、体を覆う黒い服に身を包んでいても、骨と皮のような体の線が見える。血の匂いがする。どこかに傷があるんだろう。
「モンシャさんはすごく過激な撮影ばかりされてますよね。それで興味を持ったんですが。普段どんな生活されているんですか?」
「モンシャはそういうの秘密なんですよ。ミステリアスが売りなんで。な?」
マネジャーを名乗った男が答える。
「はい、そうなんです」
「なるほど。そうですよね、とってもミステリアスでお綺麗だなと思います。モンシャさんはご自分の作品の中で一番おすすめなのはありますか?」
「最近のですと、『今夜も! イキまくり輪姦百連発』でしょうかね。な?」
「そうですね」
「あれはすごかったんですよ。AV俳優15人くらい呼んで。代わり番こでね。何時間もかかったけどおかげさまでいい感じに撮れました。気持ちよかったんでしょ?」
「気持ちよかったです」
「なるほど。もともとそういうのがお好きなんですか?」
「そうなんですよ。何やっても感じちゃって楽しくプレイするんでね、こっちも企画し甲斐がありますよね。な?」
「はい。好きです。楽しいです」
「そうですか。ありがとうございました。お勧めいただいた動画なんですが、記事にタイトルとあらすじを入れたいので何か宣伝用のものがあったらいただけますか?」
「ちょっと待っててくださいね」
マネジャーの男が席を外す。モンシャと俺たちだけになる。
「……モンシャさん、今日は晴れですね。明日の天気はどうでしょうね?」
モンシャは少し考えて、
「明日は曇りのち晴れ、一日を通じて湿度56%ですよ」と言った。
ガチャンとドアが開き、男がデータチップを持って戻ってきた。
「これ、宣伝用のコピーです。どうぞ」
「ありがとうございます。申し訳ないんですが、穴埋め用の記事なんで、掲載されるかお約束はできませんが」
「いいですよ。どうもどうも」
オートキャリアに乗り込む。
「どうだった。取材は」
ヴェスタに水を向けると、ヴェスタは首を傾げた。
「何もわかりませんでした」
「何もわかんなかった」
「何もわかんなかった」
「だろ。一介の記者が核心に迫るインタビューなんかしたらだめなんだよ。怪しいだろ。記者のふりする時はただの下見だと思いな。でもひとつわかった。どうやってるのか知らないけど、支配率をいじってるな」
「なんでわか…んの?」
「よくできました。最後に天気を聞いたろ? お前に聞くけどさ、明日の天気はなんだと思う?」
「え? うーん……晴れ…かな?」
「そうだろ。そんなもんだ。でもな、レプリカントは支配度が上がれば上がるほど詳しく定型的になっていくんだ。なんとかのちなんとか、湿度何%、降水確率どうのこうの。湿度まで言うのはだいたい支配率50%くらいだ。あと、まばたき」
「瞬き」
「ずーっと同じ間隔で瞬きしてたろ」
「気づかなかった……」
「普通気づかねーよ。知ってないとな。ヒューマンはさ、感情とかその場の雰囲気とかで瞬きの間隔って変わるけど、支配率の高いレプリカントは瞳を乾燥から守るためだけにまばたきするから、室内では一定になるんだ」
ヴェスタがぱちぱちっと大きな目をまばたきさせた。こいつは瞳の乾燥だけでまばたきするタイプではないらしい。
「とりあえず、捜査官としてはあのレプリカントの意思確認をしなきゃならない。本当にあの仕事が好きでやってるのか、無理矢理やらされてるのか。でも支配率上げられてるとすれば、やりたくてやってると言うだろうな……」
ここで手詰まり。人権持ちが自分の意思でやってると言ってしまえば保護はできない。
「どうだったら踏み込めるん…踏み込めるの?」
「そうだなあ……例えば、撮影の時以外は鎖に繋がれてるとか、食事させてもらえないとか、客観的に非人道的な様子を押さえられれば。でなきゃ、もろに非合法のレプリカントを使ってるのを見つければ。芽があるとすればこれかな」
「わかった」
ヴェスタはブースに戻ってからさっさとスニッフスナッフが出している動画を洗い、使われている俳優をリストアップして画像検索をかけ始めた。その合間に今週納品分のレプリカントの現状確認をする。本当にできる奴だ。俺のやる事がなくなる。さて。何をしようかな。
もう少し、この前かかった画像を見てみることにした。一人一人。さっき会ったモンシャ。ニフェルトか。オーナーが死んでから、街でのショットが全くなくなっている。これがもはやおかしいと言えばおかしいけど、通販で生きていこうと思えば出来るからな……。
オーナーとの最後の写真を見つける。発注者がオートキャリアに頭を突っ込んで、横にニフェルトが立ってる写真。目が虚ろだ。オーナーはオートキャリアに乗っている誰かと話をしてるようだ。日付。オーナーが死んだ日だ。何か引っかかった。
オーナーの方を同じ日付で画像検索する。同じ写真。オートキャリアの誰かと話している。その後の写真。一人で街を歩いている。ニフェルトはさっきの車に乗せたのか? 次の写真。どこかのビルの非常階段を登っている写真。次は手すりから身を乗り出している。最後。地面に横たわって──ありていに言うと潰れている写真。以上。ニフェルトを誰かに渡して、すぐに自殺したんだ。その足で、まっすぐ。
「うーん……」
自分は死ぬから、ニフェルトが生活に困らないように誰かに預けたと取れなくもないけど。でもこの後すぐにニフェルトはモンシャとしてあんな動画に出るわけだ。どうもピンと来ない。オーナーの死亡時の調書を読んでみる。死亡者は、パートナーとの関係に悩んでいたとの友人からの談。パートナーか。ニフェルトのこと? ニフェルトの他に誰かいて、三角関係だった? でもニフェルトを手放したのなら片付きそうな悩み。
「バル、見つかった」
ヴェスタに呼ばれてブースに行く。モニタに一人の可愛らしい少女が映し出されている。
「この子、戸籍に登録がない。納品は半年前で、支配率34%」
「第三種でもない? よな。よし! よくやった」
ヴェスタの緑の髪をくしゃくしゃと撫でた。まず本人の保護、スニッフスナッフの代表の事情聴取、そしてオーナーの確保と起訴だな。
局長にざっくり話して応援を頼み、明日踏み込むことになった。それまでに少しヴェスタに仕込んでおかないといけない。
「ヴェスタ。こっち来な」
地下の訓練室に入る。防弾シールドとゴーグルを付けて銃をいくつか並べる。
「これが普通の実弾銃。最近は俺たちも使ってない。使ってるのはこっち。パルスガン」
言ってヴェスタの足を撃つ。
「痛った!!」
「でも痛いだけさ。今のは出力が小。中にすると足全体が痺れて動けなくなるかな。これもサウンドブレイカーと似た仕組みで、パルスで細胞を震わせて痛みを与えるんだ。防弾シールドも通過。頭を向けて撃つと脳震盪を起こして相手が昏倒する。でもそのまま起きなくなっちゃう事もあるから、頭は勘弁してやれ。これが流行りのサウンドブレイカー。撃ってみな」
「は?」
俺の右手のひらをヴェスタに向けてトントンと指す。ここに撃ってみろよ。距離は1メートルもない。
「俺は大丈夫だから撃ってみな」
ヴェスタは何度も逡巡したが、促されて引き金を引いた。何の音も手応えもない。ただ、引き金を引いた瞬間、撃たれた手が空中で弾かれたように踊った。
「痛ってえな」
「バルが撃てって言ったんでしょう!」
「そうなんだけどさ。痛いもんは痛い。な。これも通過。見ろ。弾が貫通した跡がわかるだろ?」
手のひらは、5センチほどの円形に赤くなって震えている。手の甲にも同じ大きさの赤みが出ている。
「俺でもしばらくは痺れてる。これを普通のやつが食らうとどうなるかというと」
ブリングで検索画像を映す。火傷のような水膨れの写真。皮膚が剥がれて浸潤液でてかてかになっている写真。
「だから、注意しろよ。実弾は怖くない」
言いながら、バンバンバンとヴェスタを撃つ。
「ちょっと!!!」
防弾シールドが全て弾き返す。
「怖くないって言っただろ」
「さっきもだけど、急に撃つなよ!」
「お。砕けてきたな。いい調子」
手のひらはもう治っていた。
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