Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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03 トライアル (2)エア・ランナー

12 Baltroy (息抜き)

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「おい、ターズの件、報告書は?」
「あ、ごめん。忘れてた」
「午後からサリム・ウィリントンのところ訪問に行ける?」
「それまでにはやる」

 その他に何か俺のバディが忘れていないかをチェックして、ほっと息をつく。ヴェスタは最近本当にぼんやりしている。調書出すのは忘れるし、コールの時も必要事項を聞き損なったり。髪も青っぽい事が多い。

「しっかりしろよ。本当にパイロットに転職か?」

 ただの冗談だった。最近身が入ってないぞっていう。大きな目から音もなく涙が流れて、パラパラっと落ちたのでぎょっとした。ヴェスタが黙って涙を拭いた。

「ごめん」
「泣くな! 大丈夫だから。とりあえず報告書作れよ」

 情緒不安定か。パーティのあたりからおかしいんだよ。

 パーティの後、ヴェスタは結局翌日の昼過ぎに帰ってきた。身体中にアラスターのにおいをつけて。うまくいってんだなと思った。それ以上は俺が首を突っ込むところじゃない。でも。

 余計なことだと思うけど、なんで緑にならないんだろう。髪はずっとブルーが混じっている。

 ヴェスタが午後一で報告書をちゃんと持って来たので、予定通りサリムのところに行く。これはレプリカントが行方不明になった件。ヒューマンならただの家出だが、レプリカントは基本的には家出しないから、事件に巻き込まれている可能性がある。ヴェスタは昔家出したけど。

「ほら。サリム・ウィリントン。レプリカントが行方不明」

 公用車の中で相手方のおさらい。

「いなくなったのは昨日から。知り合いの家におつかいに出して戻ってこなくなった。今日は話を聞いてみて、関係者の情報をもらう。聞いてるか?」
「うん」

 本当か?

 サリムの家で話を聞く。サリムは小太りで人の良さそうな男性だった。背が小さい。ヴェスタくらい。リビングにサリムと、屈託のない笑顔の男性が写っている写真がたくさんあった。もしかして……

「ああ。その写真の、これが探していただきたいレプリカントです。レイと言います」

 誘拐するにはガタイがいい。想像と違った。

「コールでもお話しましたが、昨日ロートモンの友人の家に届け物をしてもらったら、戻って来なかったんです。友人の家には行ったようで……」
「支配率はどのくらいですか?」
「15です」
「かなり低いですね。そのくらいだと家出の可能性も出て来ますが、お心当たりは?」
「うーん……仲は良い方だと思っていますし、こんなことは今までなかったので」
「コールしてみましたか?」
「しました。でも充電が切れているようで」

 本人の画像とお使い先の友人の情報をもらう。

「このご友人にはこちらからコールしても大丈夫ですか?」
「はい。捜査に入ってもらうことは言ってありますから」

 サリムの家を後にして、公用車の中で資料を整理する。レプリカントのレイ。外見は二十代後半といったところ。局に戻ったらメーカーのデータを見てみよう。そして画像照合だな。

「家出だと思う?」

 ずっと黙っていたヴェスタがぽつりと言った。

「うーん、半々。かなり低いだろ。支配率が。そういや、お前も家出したことあったよなあ」

 メイハンの件のときだ。2日帰ってこなくて探したら野原に捨てられてた。

「あれはひやっとしたな。殺されてるかもしれないと思ったもんな」
「懐かしい」
「懐かしいな!」

 髪がだいぶ緑色に近くなってきた。もうちょっとなんだけどな。

「あ。セントラルゲームセンター……」

 ヴェスタが窓の外を見てつぶやいた。

「この辺だったな。寄ってくか?」
「はは。今? 任務中でしょ?」
「昼休みじゃね?」
「三時だけど」
「昼も働いてた。たまにいいだろ。捜査局のジャケットだけ脱げよ」

 こらえきれないと言うようにヴェスタが笑った。久しぶりだな。こんなに笑ってるの。髪もやっと緑になる。目立たないところに公用車を停めて、先日の続き。二面は廃墟のステージ。HPの多いやつが出てくるのがめんどくさい。

「チェーンソーのやつ、攻撃範囲広くなってるから気をつけろよ」
「あれ以上どう広くなるの?」
「どう見ても当たってないのに切れるんだよ。念力かっての」

 あはは、とヴェスタがまた笑った。

 局に帰ってからは、ヴェスタは落ち着いてちゃんと仕事をし始めた。なんだろう。ストレスが溜まってたかな? 土日もエアランナーの免許取りだったり、慣れないパーティだったりで疲れてるのかもしれない。






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