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05 追跡
05 Baltroy (欲しいもの)
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雪だ。今年は雪がよく降る。ヴェスタは嬉しそうに、ひたひたと日曜日の誰もまだ歩いていない雪の歩道の上に足跡をつける。
「お前、誕生日だったんだな。3歳の」
「3歳って言わないで!」
寒さに頬を紅くして言う。3歳だろ。久しぶりのセントラルゲームセンターだ。ヴェスタが手を俺の手に絡める。不思議な感じがする。三年一緒にいて、今まで手を繋いで歩いたことがなかった。当たり前か。ただのバディだったんだから。
ヴェスタの髪は、仕事で何かない限りずっと鮮やかな緑色だ。ほっとする。わかりやすいやつでほんとに助かる。途中になってたガンシューティングのゲームをやる。うまくなったなと思う。エクストリームモードが出てきた。でもまだヴェスタから、この前からずっと言いたそうにしていることを聞けていない。そんなに言いにくいことあるか?
「お前あの店のトルティーヤ好きだろ」
「好きって言うか……癖になるんだよね。でもバル、においがだめなんだろ?」
「タコスの方なら大丈夫。お前好きなの食えよ」
俺には制限が多い。ヴェスタが可哀想になる。若い頃に、我慢しようと思ったことがある。ただの匂いなんだからって。その時付き合ってた女の子のことも、自分の体質に付き合わせたくなかった。でもだめなんだよな。結局だめだった。
「タコスの方はおいしい!」
「お前まで付き合わなくていいのに」
「だって……キスしてくれなくなるでしょ?」
かわいいやつ。
鼻が効きすぎる。25くらいで時が止まる。怪我をしてもすぐに治る。
一つ一つは大したことじゃなく見えるのに、より集まるとどうしようもないミュータントに見える。ゴーシェに聞きたかったことを思い出した。「誰かと生きようと思ったことはあるか?」あいつくらいらしいから。俺と同じなのは。
永遠に生きられるのかも知れない。生きようと思えば。無限に再生する細胞。あれほどの癌を駆逐する生命力。でもそれに付き合えるやつはいない。誰と一緒に歩いても、いつか一人になる。
「バル、何か取って」
「プライズ?」
「うん。誕生日だったんだろ? 俺」
「欲しいもんあるか?」
ヴェスタはガラスにひたいをつけるようにして景品を見ている。ろくなもんないぞ。何か買ってやるか。
「うーん……」
「ちゃんとした店でいいやつ買いに行こう」
「だって。バルに取ってもらうのがいいんじゃん」
「なんだそれ。そんなもんいつでも取ってやるよ」
オートキャリアに乗ってモールの方に向かう。ヴェスタがキスしてくる。慌ててスモークを入れる。
「こら」
「だって……」
だってだってだな。三歳児め。キスが熱を帯びてくる。やばい。
「あ……あった。欲しいの……」
「……ん?」
ヴェスタの手が服の上から探ってくる。びっくりしたのは、ヴェスタがかなり積極的だったことだ。この見た目でこれは反則だろ。
「こら、おい」
「あのね」
ヴェスタが俺に向き合うように膝に乗る。体が熱を持っているのがわかる。お互いに。
「写真飾るやつ。欲しい……」
そんなもんこんな手管でねだるようなもんじゃないだろ。笑ってしまう。耳を甘く噛まれる。
「店、見に行く?」
「やだ。家に帰る。やって。ほんとのやつ……」
「欲しいんだかいらねえんだか」
ヴェスタの背中を服の上から撫でる。
「……いま、は……バルがほしい……」
細い黒のジーンズに包まれた脚。シャツの中に手を入れて、滑らかな背中に触れる。ヴェスタがびくんと背を逸らす。熱い。スモークを入れなくてもガラスが曇りそうだ。白い手が上着を脱がそうとする。
「まだ」
目の前の髪がほとんど白に近くなる。服の中で指が胸の小さな突起に触れる。指の腹で触れるか触れないか。ヴェスタは今度は俺のジッパーに指をかける。
「まだだって」
その手を取って指にキスする。もう片手を白い背中からゆっくりとジーンズの中に入れる。ヴェスタは体を俺の体に擦り付けるようにしてぎゅっと寄せた。
どこに触れてもぴくんとヴェスタのすっかり勃ってしまったあれが反応する。服の上からでもそれがわかる。白い柔らかい首筋。車がアパートの前で停まる。ヴェスタが飛び降りるみたいにして俺の手を引く。エレベータの中でもキスしようとしてくる。
「ヴェスタ、社宅」
「いい……俺、前からバルのだもん……みんな知ってるだろ……」
変なとこ大胆なんだよな。絡まるみたいに家に転がり込んで、そのままヴェスタのベッドに引き込まれる。焦らし切った体。ヴェスタの荒い息。
「も……がまん……できな…」
お前我慢してなかっただろうが。後ろから首筋に噛み付く。これは最近発見した。ヴェスタはこれをやるとすごく敏感になる。外は寒かったのに、ヴェスタの白い体は隅々まで熱い。髪が白さを増して雪のようだ。後ろからゆっくり入れる。ヴェスタが声にならない声を上げて、ぎゅっと枕を握りしめた。
「………っあ」
その指に指を絡める。滑らかな背中に肌を重ねる。小さな体を自分の体で包む。なんて。
きれいな生き物。
「バル……」
ヴェスタが半身を捩って手を伸ばす。見つめ合う。キスする。どんなにしてもしたりない。ガラス玉みたいな、青緑色の大きな目。夜になると薄く青と緑に片方ずつ光る。しっとりと汗ばむきめ細かな肌。動くたびに、脳みそが溶けるような甘い声を立てる。
「ま……待って……。待って」
「……ん? 痛い?」
「違う……。いきそうになる……」
「いけよ」
「い……」
ヴェスタの顔が桜色に染まった。
「一緒がいい……」
離せないな、と思う。アラスターみたいに、ぱっと手放すなんて俺にはとてもできそうにない。
「あっ……だめ! だ……」
根元まで突き込む。細い指が強く俺の腕を掴む。押し出されるようにとろりと白いものが溢れた。
「……っ」
熱っぽい潤んだ瞳。唇が悔しそうにへの字になる。
「もう一回いけよ」
俺の頭を抱きしめる腕。今は溺れさせてほしい。やがて離れていくとしても……
愛してるんだ。
「お前、誕生日だったんだな。3歳の」
「3歳って言わないで!」
寒さに頬を紅くして言う。3歳だろ。久しぶりのセントラルゲームセンターだ。ヴェスタが手を俺の手に絡める。不思議な感じがする。三年一緒にいて、今まで手を繋いで歩いたことがなかった。当たり前か。ただのバディだったんだから。
ヴェスタの髪は、仕事で何かない限りずっと鮮やかな緑色だ。ほっとする。わかりやすいやつでほんとに助かる。途中になってたガンシューティングのゲームをやる。うまくなったなと思う。エクストリームモードが出てきた。でもまだヴェスタから、この前からずっと言いたそうにしていることを聞けていない。そんなに言いにくいことあるか?
「お前あの店のトルティーヤ好きだろ」
「好きって言うか……癖になるんだよね。でもバル、においがだめなんだろ?」
「タコスの方なら大丈夫。お前好きなの食えよ」
俺には制限が多い。ヴェスタが可哀想になる。若い頃に、我慢しようと思ったことがある。ただの匂いなんだからって。その時付き合ってた女の子のことも、自分の体質に付き合わせたくなかった。でもだめなんだよな。結局だめだった。
「タコスの方はおいしい!」
「お前まで付き合わなくていいのに」
「だって……キスしてくれなくなるでしょ?」
かわいいやつ。
鼻が効きすぎる。25くらいで時が止まる。怪我をしてもすぐに治る。
一つ一つは大したことじゃなく見えるのに、より集まるとどうしようもないミュータントに見える。ゴーシェに聞きたかったことを思い出した。「誰かと生きようと思ったことはあるか?」あいつくらいらしいから。俺と同じなのは。
永遠に生きられるのかも知れない。生きようと思えば。無限に再生する細胞。あれほどの癌を駆逐する生命力。でもそれに付き合えるやつはいない。誰と一緒に歩いても、いつか一人になる。
「バル、何か取って」
「プライズ?」
「うん。誕生日だったんだろ? 俺」
「欲しいもんあるか?」
ヴェスタはガラスにひたいをつけるようにして景品を見ている。ろくなもんないぞ。何か買ってやるか。
「うーん……」
「ちゃんとした店でいいやつ買いに行こう」
「だって。バルに取ってもらうのがいいんじゃん」
「なんだそれ。そんなもんいつでも取ってやるよ」
オートキャリアに乗ってモールの方に向かう。ヴェスタがキスしてくる。慌ててスモークを入れる。
「こら」
「だって……」
だってだってだな。三歳児め。キスが熱を帯びてくる。やばい。
「あ……あった。欲しいの……」
「……ん?」
ヴェスタの手が服の上から探ってくる。びっくりしたのは、ヴェスタがかなり積極的だったことだ。この見た目でこれは反則だろ。
「こら、おい」
「あのね」
ヴェスタが俺に向き合うように膝に乗る。体が熱を持っているのがわかる。お互いに。
「写真飾るやつ。欲しい……」
そんなもんこんな手管でねだるようなもんじゃないだろ。笑ってしまう。耳を甘く噛まれる。
「店、見に行く?」
「やだ。家に帰る。やって。ほんとのやつ……」
「欲しいんだかいらねえんだか」
ヴェスタの背中を服の上から撫でる。
「……いま、は……バルがほしい……」
細い黒のジーンズに包まれた脚。シャツの中に手を入れて、滑らかな背中に触れる。ヴェスタがびくんと背を逸らす。熱い。スモークを入れなくてもガラスが曇りそうだ。白い手が上着を脱がそうとする。
「まだ」
目の前の髪がほとんど白に近くなる。服の中で指が胸の小さな突起に触れる。指の腹で触れるか触れないか。ヴェスタは今度は俺のジッパーに指をかける。
「まだだって」
その手を取って指にキスする。もう片手を白い背中からゆっくりとジーンズの中に入れる。ヴェスタは体を俺の体に擦り付けるようにしてぎゅっと寄せた。
どこに触れてもぴくんとヴェスタのすっかり勃ってしまったあれが反応する。服の上からでもそれがわかる。白い柔らかい首筋。車がアパートの前で停まる。ヴェスタが飛び降りるみたいにして俺の手を引く。エレベータの中でもキスしようとしてくる。
「ヴェスタ、社宅」
「いい……俺、前からバルのだもん……みんな知ってるだろ……」
変なとこ大胆なんだよな。絡まるみたいに家に転がり込んで、そのままヴェスタのベッドに引き込まれる。焦らし切った体。ヴェスタの荒い息。
「も……がまん……できな…」
お前我慢してなかっただろうが。後ろから首筋に噛み付く。これは最近発見した。ヴェスタはこれをやるとすごく敏感になる。外は寒かったのに、ヴェスタの白い体は隅々まで熱い。髪が白さを増して雪のようだ。後ろからゆっくり入れる。ヴェスタが声にならない声を上げて、ぎゅっと枕を握りしめた。
「………っあ」
その指に指を絡める。滑らかな背中に肌を重ねる。小さな体を自分の体で包む。なんて。
きれいな生き物。
「バル……」
ヴェスタが半身を捩って手を伸ばす。見つめ合う。キスする。どんなにしてもしたりない。ガラス玉みたいな、青緑色の大きな目。夜になると薄く青と緑に片方ずつ光る。しっとりと汗ばむきめ細かな肌。動くたびに、脳みそが溶けるような甘い声を立てる。
「ま……待って……。待って」
「……ん? 痛い?」
「違う……。いきそうになる……」
「いけよ」
「い……」
ヴェスタの顔が桜色に染まった。
「一緒がいい……」
離せないな、と思う。アラスターみたいに、ぱっと手放すなんて俺にはとてもできそうにない。
「あっ……だめ! だ……」
根元まで突き込む。細い指が強く俺の腕を掴む。押し出されるようにとろりと白いものが溢れた。
「……っ」
熱っぽい潤んだ瞳。唇が悔しそうにへの字になる。
「もう一回いけよ」
俺の頭を抱きしめる腕。今は溺れさせてほしい。やがて離れていくとしても……
愛してるんだ。
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