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06 パイド・パイパー 連邦捜査官ザムザ・ホープの事件簿
04 Wdgat (キー・マン)
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ザムザがコールする。横からそれを見ていた。すぐに繋がる。
「やあ。バルトロイ」
『よ。なんだよ。ヴェスタにじゃないのか?』
「ああ。今日はあんたに用で。いつ結婚すんの?」
『相変わらずだな。そんな用かよ』
「はは。いやさ、ニュースで知ってるだろ? エッシャー児童養護施設のこと。あれ、俺たちの案件なんだよ」
ザムザの話ぶりに驚いた。もしバルトロイが犯人なら、こんなに露骨に話したら証拠の隠滅に走ってしまう。
『ああ……』
画面の中のバルトロイは少し目を伏せた。
「あんた、最近行ったろ? 何の用で行ったのか教えてくれないか」
『最近……まあ、最近ちゃ最近か。たまたま近くまで行ったからさ。ちょっと聞きたいこともあったし』
「一人で? 何で?」
『いや。なんてことはないんだけどさ』
ザムザは手元のブリングを見ながらバルトロイの話の続きを待った。その様子から、ザムザが本当はもうバルトロイが何のことを聞きに行ったのか知ってるのがわかった。画面の向こうの黒髪で黒い瞳の男がため息をつく。
『……また連邦捜査局から犯人扱いされんのかよ……』
「はは。犯人扱いはしてないよ。本気ならもうレップに拘束に行ってる」
バルトロイの肩に白い細い指がかかったのが見えた。ヴェスタだろう。バルトロイはその白い指の方を見て少し笑った。
『……なんでもない。後で話す』
『ザムザだろ?』
『今日は連邦捜査官のザムザだよ』
『ふふっ。またコラボ案件?』
さらさらとしたグリーンの髪が画面に映り込んだ。なんだかイラッとする。このレプリカントはいつもどこか神経に触る。なんで? 自分でもわからない。
「や、ヴェスタ。今日はちょっと情報収集させてほしくてね、バルトロイに。エッシャー児童養護施設の事件知ってるだろ。名簿を見たらバルトロイが卒業生だったから」
ヴェスタが少し心配そうな顔をしてバルトロイを見る。
『……そう。少し話すから、お前は現況コールしといて。大丈夫だ』
『……うん。またね、ザムザ、ウジャト』
人形みたいな綺麗な顔が、ひらひらと白い手を振って画面から消えた。
『……もうわかってんだな? ゴーシェだよ。あいつのことを聞きに行ったんだ……。聞きに行ったってのもおかしいな。思いつきで寄っただけだ』
「どうしてか聞いていい?」
『あいつ逃げただろ。追おうと思って。少しでも情報が欲しかった』
「つっこんでいい?」
『わかってる。うちの案件としては終わってるのにってことだろ。思い出したんだ。小さい頃にあいつと話したことがあったなって……まあ、因縁があったからってことかな』
「仲良かったとか?」
『仲悪かったのを思い出した』
「ふはっ……それでエッシャー児童養護施設に行ったわけだ。イリーナとどんな話をした?」
『昔俺がいた頃の思い出話と、ゴーシェのことを少し。あとは近況や世間話だな』
「その時何か気づいたことはあったか?」
『ない。まあ、もう俺のことを知ってる職員さんもイリーナだけになったんだなとは思ったよ。20年も経ちゃな』
「……懐かしかった?」
ザムザは時々こういう質問をする。その話今する? みたいなやつ。意味不明。
『懐かしかった。つくりも変わってなかったし、匂いも不思議と同じだったな。人も子どもも入れ替わってるはずなのに』
「犯人に心当たりはある?」
『もしこれがうちの案件で、攫われたのがレプリカントなら人身売買のグループだと思ったと思う。でも人間の子供じゃあな……』
「だよなあ。ありがとう、バルトロイ。仕事の邪魔して悪かったな。何か思い出したことがあったり、思いついたことがあったらなんでも連絡して欲しいんだ。なんでもだ。まだ子供たちを助けられるかもしれない。犯人の心当たり、職員の様子、施設の様子、子どもの行き先。何でもいい」
『わかってる。がんばってな』
端末の画面が切り替わる。
「なんで! 何で結局あいつらに頼むんですか!」
思わずザムザに噛み付くと、ザムザはめんどくさそうにこっちを見た。
「だから、この前も言っただろ。誰の助けを借りたっていいんだ。問題は早く解決することなんだ」
「またレップのおかげって言われるでしょう!」
ザムザと初めて組んだのは2年前だ。その時ザムザは5年目になる所で、俺は3年目だった。インターンで1年過ごした後、俺に最初に振られたバディは10いくつ年上で、かなり何でも上から言ってくるタイプだった。
とにかく合わなくて、一年目は我慢したけど、二年目で爆発してしまった。そいつが俺が見つけた証拠を隠して自分の手柄にしたからだ。怒り心頭で自分が先に証拠を見つけたことを証明し、その男の不正を上司に叩きつけた。
バディは解消、男は外部機関に出向になったが、俺の方も半年間の長い研修に行かされた。要するに、社会性が不十分ということだった。その間に人事異動が色々されて、ザムザがバディになった。研修から帰って来てから、ザムザが大学の後輩だからと俺の面倒を見ることを買って出てくれたことを知った。だから……
「俺は! ザムザ先輩がすごい人なんだって分からせたいんですよ! なんでいつもへらへらして、功績を他人にくれてやるようなことばっかりするんですか!」
ザムザはただ黙っていた。でもその顔から表情が消えたのがわかった。
「お前は思い違いをしている。前の事件の時にわかったかと思ったんだけどな」
ザムザにしてはあまりにも冷たい言い方に少し怯むと、ザムザはがたっと席を立ってブリングを持ってどこかに行ってしまった。
「やあ。バルトロイ」
『よ。なんだよ。ヴェスタにじゃないのか?』
「ああ。今日はあんたに用で。いつ結婚すんの?」
『相変わらずだな。そんな用かよ』
「はは。いやさ、ニュースで知ってるだろ? エッシャー児童養護施設のこと。あれ、俺たちの案件なんだよ」
ザムザの話ぶりに驚いた。もしバルトロイが犯人なら、こんなに露骨に話したら証拠の隠滅に走ってしまう。
『ああ……』
画面の中のバルトロイは少し目を伏せた。
「あんた、最近行ったろ? 何の用で行ったのか教えてくれないか」
『最近……まあ、最近ちゃ最近か。たまたま近くまで行ったからさ。ちょっと聞きたいこともあったし』
「一人で? 何で?」
『いや。なんてことはないんだけどさ』
ザムザは手元のブリングを見ながらバルトロイの話の続きを待った。その様子から、ザムザが本当はもうバルトロイが何のことを聞きに行ったのか知ってるのがわかった。画面の向こうの黒髪で黒い瞳の男がため息をつく。
『……また連邦捜査局から犯人扱いされんのかよ……』
「はは。犯人扱いはしてないよ。本気ならもうレップに拘束に行ってる」
バルトロイの肩に白い細い指がかかったのが見えた。ヴェスタだろう。バルトロイはその白い指の方を見て少し笑った。
『……なんでもない。後で話す』
『ザムザだろ?』
『今日は連邦捜査官のザムザだよ』
『ふふっ。またコラボ案件?』
さらさらとしたグリーンの髪が画面に映り込んだ。なんだかイラッとする。このレプリカントはいつもどこか神経に触る。なんで? 自分でもわからない。
「や、ヴェスタ。今日はちょっと情報収集させてほしくてね、バルトロイに。エッシャー児童養護施設の事件知ってるだろ。名簿を見たらバルトロイが卒業生だったから」
ヴェスタが少し心配そうな顔をしてバルトロイを見る。
『……そう。少し話すから、お前は現況コールしといて。大丈夫だ』
『……うん。またね、ザムザ、ウジャト』
人形みたいな綺麗な顔が、ひらひらと白い手を振って画面から消えた。
『……もうわかってんだな? ゴーシェだよ。あいつのことを聞きに行ったんだ……。聞きに行ったってのもおかしいな。思いつきで寄っただけだ』
「どうしてか聞いていい?」
『あいつ逃げただろ。追おうと思って。少しでも情報が欲しかった』
「つっこんでいい?」
『わかってる。うちの案件としては終わってるのにってことだろ。思い出したんだ。小さい頃にあいつと話したことがあったなって……まあ、因縁があったからってことかな』
「仲良かったとか?」
『仲悪かったのを思い出した』
「ふはっ……それでエッシャー児童養護施設に行ったわけだ。イリーナとどんな話をした?」
『昔俺がいた頃の思い出話と、ゴーシェのことを少し。あとは近況や世間話だな』
「その時何か気づいたことはあったか?」
『ない。まあ、もう俺のことを知ってる職員さんもイリーナだけになったんだなとは思ったよ。20年も経ちゃな』
「……懐かしかった?」
ザムザは時々こういう質問をする。その話今する? みたいなやつ。意味不明。
『懐かしかった。つくりも変わってなかったし、匂いも不思議と同じだったな。人も子どもも入れ替わってるはずなのに』
「犯人に心当たりはある?」
『もしこれがうちの案件で、攫われたのがレプリカントなら人身売買のグループだと思ったと思う。でも人間の子供じゃあな……』
「だよなあ。ありがとう、バルトロイ。仕事の邪魔して悪かったな。何か思い出したことがあったり、思いついたことがあったらなんでも連絡して欲しいんだ。なんでもだ。まだ子供たちを助けられるかもしれない。犯人の心当たり、職員の様子、施設の様子、子どもの行き先。何でもいい」
『わかってる。がんばってな』
端末の画面が切り替わる。
「なんで! 何で結局あいつらに頼むんですか!」
思わずザムザに噛み付くと、ザムザはめんどくさそうにこっちを見た。
「だから、この前も言っただろ。誰の助けを借りたっていいんだ。問題は早く解決することなんだ」
「またレップのおかげって言われるでしょう!」
ザムザと初めて組んだのは2年前だ。その時ザムザは5年目になる所で、俺は3年目だった。インターンで1年過ごした後、俺に最初に振られたバディは10いくつ年上で、かなり何でも上から言ってくるタイプだった。
とにかく合わなくて、一年目は我慢したけど、二年目で爆発してしまった。そいつが俺が見つけた証拠を隠して自分の手柄にしたからだ。怒り心頭で自分が先に証拠を見つけたことを証明し、その男の不正を上司に叩きつけた。
バディは解消、男は外部機関に出向になったが、俺の方も半年間の長い研修に行かされた。要するに、社会性が不十分ということだった。その間に人事異動が色々されて、ザムザがバディになった。研修から帰って来てから、ザムザが大学の後輩だからと俺の面倒を見ることを買って出てくれたことを知った。だから……
「俺は! ザムザ先輩がすごい人なんだって分からせたいんですよ! なんでいつもへらへらして、功績を他人にくれてやるようなことばっかりするんですか!」
ザムザはただ黙っていた。でもその顔から表情が消えたのがわかった。
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