227 / 229
09 「ふたり」の形
26 the deliverer
しおりを挟む
その日は雨が降っていたが、コインフリッパーズ・カフェと看板のかけられた古風な店にはたくさんの人が出入りしていた。入り口のドアノブには「本日貸切」の札が下がり、柔らかな光と笑い声が窓から漏れている。
宅急便の配達員がそのドアを開けた。狭い店内はごった返していて、店内を飾る風船で誰かの結婚パーティなんだとわかった。ブッフェスタイルでいい匂いの食べ物が置かれ、みんな楽しそうに笑っている。服装はかなりラフで、誰が主役のパーティなのかわからない。
配達員が赤毛の店主に持ってきたものを渡すと、彼は宛先をちらりと確認して、店のベンチで吸血鬼みたいな黒い服を着て景気の悪い顔をした男と並んで座っていた、背の高い黒髪の男に声を掛けた。
「バル、お前宛だよ」
男はその平べったい四角いA3サイズくらいのものを受け取って、とりあえずばりばりと包装を剥がした。中からは一枚のキャンバスプリントの写真が出て来た。
「──あー……これ? 何で?」
男の隣に、小柄で色白の、緑の髪をしたお人形みたいな少年が近寄ってそれを覗き込んだ。
「焼き直してくれたんだね」
その写真には、青々とした森と、誰かの背中が写っていた。
「受け取りは間違いない、どうもありがとう」
緑の髪の美少年は、でも俺この写真好きだよ、と言って、配達員ににっこりと微笑んだ。
配達員はちょっと手を振って店を後にした。雨は止んでいなかったが、悪い気分ではなかった。
宅急便の配達員がそのドアを開けた。狭い店内はごった返していて、店内を飾る風船で誰かの結婚パーティなんだとわかった。ブッフェスタイルでいい匂いの食べ物が置かれ、みんな楽しそうに笑っている。服装はかなりラフで、誰が主役のパーティなのかわからない。
配達員が赤毛の店主に持ってきたものを渡すと、彼は宛先をちらりと確認して、店のベンチで吸血鬼みたいな黒い服を着て景気の悪い顔をした男と並んで座っていた、背の高い黒髪の男に声を掛けた。
「バル、お前宛だよ」
男はその平べったい四角いA3サイズくらいのものを受け取って、とりあえずばりばりと包装を剥がした。中からは一枚のキャンバスプリントの写真が出て来た。
「──あー……これ? 何で?」
男の隣に、小柄で色白の、緑の髪をしたお人形みたいな少年が近寄ってそれを覗き込んだ。
「焼き直してくれたんだね」
その写真には、青々とした森と、誰かの背中が写っていた。
「受け取りは間違いない、どうもありがとう」
緑の髪の美少年は、でも俺この写真好きだよ、と言って、配達員ににっこりと微笑んだ。
配達員はちょっと手を振って店を後にした。雨は止んでいなかったが、悪い気分ではなかった。
0
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした
圭琴子
BL
この世界は、αとβとΩで出来てる。
生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。
今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。
βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。
小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。
従って俺は戸籍上、β籍になっている。
あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。
俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。
今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。
だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。
だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。
学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。
どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。
『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。
【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい
佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。
同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。
いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。
サラリーマン同士のラブコメディです。
◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください
* 性的描写
*** 性行為の描写
大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。
年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。
表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる