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おまけ ある村人の体験談
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ある時、突如として現れた魔法機械があらゆる作業を効率化したのと同時に、魔物と人間の共存を生み出してから数年がたった時の話ー…
俺は壊れてしまった初期の魔法機械をまえに途方に暮れていた。
村の機械技師はもう直せないと諦められてしまった。
いつもだったら引き下がれるがこれは祖母が大事にしてたものなので捨てるに捨てられない。
機械技師は『これはもう森の大魔法使いじゃないと直せねぇよ』と言っていた。
だから俺は藁にもすがる思いで大魔法使いがいるという森に向かったのだった。
二週間ほどの旅の果て俺は森についた。
森の近くの村人に、森に入るにはお守りを付けないとひどい目に遭うと言われたのでお守りをつけて入った。
どうやら結界が張られているらしい。
臆病なのか偏屈なのか…
しかし村の人は入れるようにお守りを渡しているから社交的ではあるのか…
初めて会う大魔法使いに不安と好奇心がない混ぜになった状態で俺は塔にたどり着いた。
「すみませーん…」
扉をノックして呼びかけたら、しばらくして扉が開いた。
「だれ?」
扉を開けたのはひらひらした服を着た少女だった。
「あ、あの…俺、魔法機械を直してほしくて…」
「ふぅん…いいよ、入って」
少女は偉そうにそう言った。
これが大魔法使いなのか?
にしては小さいけど…
「ノアー!お客さん」
「はーい!」
ぱたぱたと音を立てて降りてきたのは長い銀髪を持つ美しい人だった。
「何の御用?」
「魔法機械が壊れたって」
「へぇ、見せてもらっても良い?」
「はいっ」
俺はドギマギしながら魔法機械をその人に見せた。
この人が、大魔法使い…なのだろうか。
「うぅん…あぁ、コアになる部分が壊れてるね。直すのにはちょっと時間かかるかも…」
「そうですか…」
「さすがに一日じゃ終わらないかも。よければ泊まっていく?」
お金に余裕もなく、泊まるアテもない俺にとってその申し出はとてもありがたかった。
「そうさせていただいてもいいですか?」
「うん」
綺麗な人は機械をもってどこかに行ってしまった。
「じゃ、部屋に案内するね」
残された僕は少女に部屋に案内された。
「ベッドと机しかないけど許して。ご飯は…もう昼は食べ終わっちゃったけど、夕暮れごろに晩御飯つくるから下に降りてきて」
少女はそれだけいうとさっていった。
それから特にすることなく時間を潰して、言われた通りに日が沈む前に下に降りた。
「あ、来た」
ふりふり服の少女は椅子に座っていて、厨房のようなところには男の人が立っていた。
「あぁ、こんにちは」
男性は俺に気づくと丁寧に挨拶をした。
この男性もひどく整った顔をしていた。
「もうすぐできるので待っててください」
僕が椅子に座ると、大魔法使いさんも降りてきた。
「良い匂い~」
大魔法使いさんは引き寄せられるように男性のもとへ歩いて行った。
「今日はシチューにしてみました」
「シチュー?やった、僕シチュー大好き」
鍋をかき回す男性の背中にぴっとりとくっついて、大魔法使いさんは鍋の中を覗き込んだ。
それからも離れることなくずっとくっついている。
でも、男の人は邪魔とも何とも言わない。
まるでそれが日常であるかのように。
「よそったお皿、運んでください」
「はーい」
大魔法使いさんはシチューの入ったお皿とパンを俺のいる机まで運んできた。
もちろん魔法を使って全部まとめて。
四人で机を囲んで食事を始めたけど、俺は信じられない光景を目にした。
「ん、このシチューおいしい!」
「そうですか、よかった。あ、ほっぺたついてますよ」
そう言って、男の人が大魔法使いさんのほおについたシチューを舐めた。
え、舐めた…?
「えへ、恥ずかしい…っあち」
大魔法使いさんは今度は冷まさずにシチューの食べてしまったようだ。
「あぁ、もう…火傷してませんか?べーして」
「べ」
ぺろ、と大魔法使いさんが出した舌をさも当たり前かのように唇で食んで、キスをしはじめる二人。
あれ、俺は何を見せられているんだ…?
「はぁ…ごめんな。こんなもの見せて」
「あ、いえ…」
隣に座っていた少女は呆れた目で二人を見てた。
「あいつら…ああ言う関係になってからもう五十年は経つのに、未だにああしていちゃいちゃしてんだよ…信じられねぇ」
「ご、五十年…」
俺より年下に見える二人とも、というかこの少女も、みんな俺より年上…?
それより、俺の祖父母も仲は良かったがあそこまでではなかったか気がする。
この二人はその…付き合いたてのカップルみたいだ。周りを見ずにイチャイチャするところとか…
「カイトくんっ…お客さんいるのにちゅーしちゃだめだよ」
「これはちゅーじゃなくて治療です」
「そうなの?それならいいけど…」
いやそうじゃないし、よくもないよ。
俺は目の前でイチャイチャを繰り広げるカップルを見ながら、やけに味気ないシチューを食べた。
そして翌日。
大魔法使いさんはさすがの手腕で俺の魔法機械を直してくれた。
しかも、
「えー!?来るのに二週間もかかったの?そんなに遠いなら連れてってあげるよ」
と言って、俺を村まで送ってくれた。
一瞬で。
すごい魔法使いはテレポートを使えると聞いていたけど、ここまでとは。
俺の二週間は何だったんだ。
「じゃあ、その子、大切に使ってあげてね」
「はい…」
大魔法使いさんはそう言い残して帰っていった。
なんだかすごい二日間だった…
なんにしろ、思い出の品のこの魔法機械が直ってよかった。
でも、もし今度これが壊れても、あの森に行くのはやめよう。
あの二人の甘い雰囲気に胃もたれしてしまうにちがいないから。
俺は壊れてしまった初期の魔法機械をまえに途方に暮れていた。
村の機械技師はもう直せないと諦められてしまった。
いつもだったら引き下がれるがこれは祖母が大事にしてたものなので捨てるに捨てられない。
機械技師は『これはもう森の大魔法使いじゃないと直せねぇよ』と言っていた。
だから俺は藁にもすがる思いで大魔法使いがいるという森に向かったのだった。
二週間ほどの旅の果て俺は森についた。
森の近くの村人に、森に入るにはお守りを付けないとひどい目に遭うと言われたのでお守りをつけて入った。
どうやら結界が張られているらしい。
臆病なのか偏屈なのか…
しかし村の人は入れるようにお守りを渡しているから社交的ではあるのか…
初めて会う大魔法使いに不安と好奇心がない混ぜになった状態で俺は塔にたどり着いた。
「すみませーん…」
扉をノックして呼びかけたら、しばらくして扉が開いた。
「だれ?」
扉を開けたのはひらひらした服を着た少女だった。
「あ、あの…俺、魔法機械を直してほしくて…」
「ふぅん…いいよ、入って」
少女は偉そうにそう言った。
これが大魔法使いなのか?
にしては小さいけど…
「ノアー!お客さん」
「はーい!」
ぱたぱたと音を立てて降りてきたのは長い銀髪を持つ美しい人だった。
「何の御用?」
「魔法機械が壊れたって」
「へぇ、見せてもらっても良い?」
「はいっ」
俺はドギマギしながら魔法機械をその人に見せた。
この人が、大魔法使い…なのだろうか。
「うぅん…あぁ、コアになる部分が壊れてるね。直すのにはちょっと時間かかるかも…」
「そうですか…」
「さすがに一日じゃ終わらないかも。よければ泊まっていく?」
お金に余裕もなく、泊まるアテもない俺にとってその申し出はとてもありがたかった。
「そうさせていただいてもいいですか?」
「うん」
綺麗な人は機械をもってどこかに行ってしまった。
「じゃ、部屋に案内するね」
残された僕は少女に部屋に案内された。
「ベッドと机しかないけど許して。ご飯は…もう昼は食べ終わっちゃったけど、夕暮れごろに晩御飯つくるから下に降りてきて」
少女はそれだけいうとさっていった。
それから特にすることなく時間を潰して、言われた通りに日が沈む前に下に降りた。
「あ、来た」
ふりふり服の少女は椅子に座っていて、厨房のようなところには男の人が立っていた。
「あぁ、こんにちは」
男性は俺に気づくと丁寧に挨拶をした。
この男性もひどく整った顔をしていた。
「もうすぐできるので待っててください」
僕が椅子に座ると、大魔法使いさんも降りてきた。
「良い匂い~」
大魔法使いさんは引き寄せられるように男性のもとへ歩いて行った。
「今日はシチューにしてみました」
「シチュー?やった、僕シチュー大好き」
鍋をかき回す男性の背中にぴっとりとくっついて、大魔法使いさんは鍋の中を覗き込んだ。
それからも離れることなくずっとくっついている。
でも、男の人は邪魔とも何とも言わない。
まるでそれが日常であるかのように。
「よそったお皿、運んでください」
「はーい」
大魔法使いさんはシチューの入ったお皿とパンを俺のいる机まで運んできた。
もちろん魔法を使って全部まとめて。
四人で机を囲んで食事を始めたけど、俺は信じられない光景を目にした。
「ん、このシチューおいしい!」
「そうですか、よかった。あ、ほっぺたついてますよ」
そう言って、男の人が大魔法使いさんのほおについたシチューを舐めた。
え、舐めた…?
「えへ、恥ずかしい…っあち」
大魔法使いさんは今度は冷まさずにシチューの食べてしまったようだ。
「あぁ、もう…火傷してませんか?べーして」
「べ」
ぺろ、と大魔法使いさんが出した舌をさも当たり前かのように唇で食んで、キスをしはじめる二人。
あれ、俺は何を見せられているんだ…?
「はぁ…ごめんな。こんなもの見せて」
「あ、いえ…」
隣に座っていた少女は呆れた目で二人を見てた。
「あいつら…ああ言う関係になってからもう五十年は経つのに、未だにああしていちゃいちゃしてんだよ…信じられねぇ」
「ご、五十年…」
俺より年下に見える二人とも、というかこの少女も、みんな俺より年上…?
それより、俺の祖父母も仲は良かったがあそこまでではなかったか気がする。
この二人はその…付き合いたてのカップルみたいだ。周りを見ずにイチャイチャするところとか…
「カイトくんっ…お客さんいるのにちゅーしちゃだめだよ」
「これはちゅーじゃなくて治療です」
「そうなの?それならいいけど…」
いやそうじゃないし、よくもないよ。
俺は目の前でイチャイチャを繰り広げるカップルを見ながら、やけに味気ないシチューを食べた。
そして翌日。
大魔法使いさんはさすがの手腕で俺の魔法機械を直してくれた。
しかも、
「えー!?来るのに二週間もかかったの?そんなに遠いなら連れてってあげるよ」
と言って、俺を村まで送ってくれた。
一瞬で。
すごい魔法使いはテレポートを使えると聞いていたけど、ここまでとは。
俺の二週間は何だったんだ。
「じゃあ、その子、大切に使ってあげてね」
「はい…」
大魔法使いさんはそう言い残して帰っていった。
なんだかすごい二日間だった…
なんにしろ、思い出の品のこの魔法機械が直ってよかった。
でも、もし今度これが壊れても、あの森に行くのはやめよう。
あの二人の甘い雰囲気に胃もたれしてしまうにちがいないから。
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