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融解
しおりを挟む頭が溶けそうな快感の中、眠ることも気を失うこともできなくて、真緒は朦朧としながらベッドに横たわっていた。
そんななか扉が開く音がして誰かが入ってきた。
「そんりぇん…?」
その人は真緒に答えずに扉を閉めた。
「……だから言ったでしょう。颯凛さんキレるって」
入ってきたのは静だった。
「じん…」
静はゆっくりと真緒に近づいてきてベットに座った。
そして寝っ転がってなにもできない真緒の頭を撫でてやる。
「……じん、ぼく…そんりぇんにひどいことしちゃった」
ぐずぐずと泣きながら真緒はそう言った。
「そん、りぇん…なきそうなかおしてた…ぼくのせいだよね」
「あの人はなにより裏切られることが嫌いなんです」
頭を撫でると甘えるように真緒は頭を擦り付けてきた。
颯凛が言ったように、真緒はまるで猫のようだ。
「あの人が他人と一緒に寝ないって言ったの覚えてますか?」
そのとき初めて真緒は昔静にそう言われたことを思い出した。
忘れていた。だって、颯凛はいつも当たり前のように真緒の横で眠っていたから。
「今、あの人が眠るのは俺かあなたの隣だけです」
「え…?」
知らなかった。
だって、前に颯凛になんで自分のベッドで寝るのか聞いた時『お前みたいな非力なやつじゃ俺を殺せないだろ』と颯凛は答えた。
だから真緒は、颯凛は自分より弱い、たとえば女の人とかとは一緒に寝てると思っていた。
「なんで…」
「さぁ、それは颯凛さんに聞いてください」
静は真緒の額にキスをして、部屋を出て行こうとする。
「まって」
真緒は静の袖を掴んで引き留めた。
「ぼくね、じんのこと好きなの…だから、あんなことしちゃった…わるいこで、ごめんなさい…でも」
きらいにならないで。
縋るように言われて、静の胸は甘く疼いた。
真緒は根っからの人たらしだ。
美しい、どちらかといえば妖艶な容姿をしているのに、わがままで子供っぽい。
男はなんでも叶えてやりたくなるし、自分のものにしたくなる。
「嫌いになんてなりませんよ。じゃあ、俺は行きますね」
誘惑を振り切って静は部屋から出た。
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