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おわかれ

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 その後、母の容体は急激に悪化し、意識が戻ることなく息を引き取った。

「っ…うぅ~…おかあぁさっ…ひ」

 アエテルニアは母の臨終にも葬儀にも立ち会うこともできずに、テオドアを通して母の死を知らされた。
 アエテルニアはテオドアが心配するほど泣き続けた。
 たった一週間で少しずつ増やしていた体重もすっかりもとに戻ってしまうほどやせてしまった。

「いつか自由に動けるようになったら一緒に墓参りに行こう」
「うん…っ…う」

 一か月近くたった今も、ふとした時に母を思い出しては泣く。
 きっとテオドアの部屋にこもりっぱなしなのもよくないのかもしれない。

 妻を失って、父は悲嘆にくれた。そして、その行き場のない哀しみを、アエテルニアに対する怒りに転嫁した。

「なぜ妻が死んで、あの憎たらしい子供が生きているのだ…殺せ!あの忌まわしい目玉をくりぬいてつぶして、全身を切り刻んで殺せ!!!」

 アエテルニアが別館の小部屋に住んでいることは把握されていたので使用人は小部屋を探したが、そこはもぬけの殻だった。

 使用人が探すより先にテオドアがアエテルニアを部屋にかくまい、荷物も最低限は運び込んでいたからだ。

 今部屋から出てしまえばアエテルニアはとらえられ、殺されてしまう。
 かといってこの屋敷から追い出したら、七歳のアエテルニア一人では生きていけない。それに、父は屋敷の外にも追っ手を放っていた。

「はぁ…」

 テオドアは途方に暮れていた。
 ニアよりは年上だが、テオドアだってまだ13歳。一人の少年の命運を握るには幼すぎる。

「ニア…ニア、落ち着け。深呼吸をしろ」
「っく、ひっ…うぅ…ぁく」

 ニアは時には呼吸困難になるほどひどく泣いた。
 無理もない。この年で家族をみんな亡くしてしまって、挙句の果てに養父からは命を狙われているのだ。

 テオドアはアエテルニアの背をなでながらやさしくささやいた。

「大丈夫。大丈夫だ……なんとかなる」
「う、っおかあさんっ…おかあさんにあいたいよぉ~…」
「ごめん、それはかなえられない。でも…俺がお前の家族になってやる」
「かぞく…?」
「そうだ。だからお前は一人じゃない…安心しろ」
「うん……」

 そのままなでてやるとアエテルニアは眠った。

(そうだ、俺がどうにかしないと……)
 この、腕の中で眠る小さな命を守るために。

 テオドアは赤い瞳を決意で燃やした。

 吸血公はその名に見合う冷酷さと凶暴さを持つ。
 テオドアが吸血公の息子として牙をむくときが来た。
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