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番外編4 至上の幸せ――多感な莉子SIDE

#EX04-44.HAPPY WEDDING☆【10・結ばれたその先に☆】 *

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 首筋を吸われると、わたしはもう、なにも考えられなくなってしまう。頭のなかが課長でいっぱいで……ざりざりとした舌の感触。そのあまくて熱い舌に舐められると……意識が蕩けてしまいそう。

 課長は、背後から、ゆっくり、わたしを味わいこみながら、窓際の、ベッドのほうへと誘導する。――視界に一瞬、きらびやかな星の海が映り込む。ダイヤモンドのような輝きが目に入る。――美しい、とわたしの脳が判断を下していた。

「ああ……課長……」

 うわごとのように呟き、課長の手腕に酔いしれる。……ゆっくり、ベッドへと倒される。背中にやわらかな感触を味わい、やがて――課長がわたしに覆いかぶさる。

 眼鏡を取り外したその顔は、いつもよりも無垢に見えて……少年のようで、なんだか照れくさい。――恥ずかしいな。なんて、恥じらいを感じる年頃でもないのに……いまさら。

「――なに、照れてる。莉子。どした……?」

 課長にそっと髪を撫でられると、あまずっぱい感情がこの胸を満たす。――おつき合いを開始してかなり経つというのに。こんな感情を味わうのは久々で……やっぱり、みんなに祝って貰った余韻がこのからだに残っているのだと思う。

「……課長が格好良すぎるから……」

 なんて告白してみると、少年のように、あなたは笑うのだ。「莉子こそ……すごく、綺麗だ……。おれの、お姫様……」

 そしてその腕に抱かれるとわたしは……透明ななにかになってしまう。

 あなたという純粋な存在を、ただ受け入れるだけの器。女は……器なのだと思う。男という存在を受け入れるだけの器。

 あまく――切なく、唇を封じられる。こういうとき、課長は必ず、女の子の欲しがる、あまったるい言葉をくれる。――愛している。可愛いよ……大好きだよ……。

 交際開始して一年以上が経過しても、課長のそういうところは変わらない。だから……わたしは、生まれたての、無垢な存在でいられる。課長の提供する、崇高な愛を受け入れるだけの器に。

「あ……ああ、ああ……課長」

 課長の、清潔で大きな手のひらがわたしのからだをまさぐる。そして――じれじれと、太腿のあたりを撫でまわす。――もう、じれったいな……。

 いつもみたく舐めまわしてよ。いっぱい……わたしの感じるところを貪って、なにも考えられない、無能なケダモノにしてよ……課長。

 きっと課長は楽しんでいるのだ。わたしが……焦れているのを。

「課長……もう、課長ったら……」性欲お化けの課長が、随分と手ぬるい技に出たものだ。「んもう……感じるところを……触ってよ」

「分かりましたお姫さま」頭をぽんぽんする課長はすこし笑い、「じゃあ……脱ごうか。莉子……」

 照明を調節し、薄暗くなった室内にて。課長は、わたしを剥き出しにする。剥きたての卵のように無垢な存在。ともあれ……わたしは、課長が、欲しかった。

 いつもみたいに、あの太くて熱いペニスで、なにも考えられない、無能な存在にして欲しかった。

「……課長」

 思い切って、わたしは、彼の肩を掴むと、やさしく倒してみた。……たまには、こういうのも、いいかも。すこし見開かれたあなたの瞳は、宝石のように、輝いていた。まるで、深い、深い海の底のように。

 そして、――わたしは、あなたの目線を受け止めたまま、あなたのことを貪ってやる。わたしにすこし触れただけで反応するあなたのことが……いじらしかった。

「……莉子。くっ……ああっ……」

 余裕をなくしたあなたのことが、愛らしい。わたしの頭に手を添え、わたしは――あなたを根っこまでくわえ込んだまま、あなたの様子を盗み見る。息を荒くして……ふるえて、固い胸を上下させて。たまらず声を漏らす……いつも身に着けているポーカーフェイスを取り払ったあなたが、愛おしくて。

 気がつけば――わたしは、屈みこみ、自分の乳房を片手ずつで持つと、あなたのそれを、挟み込んでいた。

「莉子……それは、あっ……うっ……」

 苦悶に顔を歪めるあなた。あなたは――わたしだけのもの。

 スライドさせれば、どんどんあなたが大きくなっていく。……って流石にこのまま出すのはまずいよね。ある程度の段階に到達すると、わたしは、あなたを根っこから口で貪り――あなたの欲望を、口内で受け止める。

「ああ……もう、莉子……」肩で大きく息をするあなたは、「パイズリにフェラチオって……どんなフルコースだよ……ったく」

 それでもあなたが嬉しそうにするものだから、あなたを愛することをわたしは、やめられない。

 * * *

「あ……ああ、もう……課長、……っあん、あぁん……っ!」

 窓際に手をつき、尻を突き出すわたしを、夜の闇はどんなふうに眺めていることだろう。

 きらびやかな夜が暴き出す、わたしの、秘めた本性。外では普通の、冷静な顔を装っているくせに、裏では――妖婦。

 課長の、熱くて太いペニスに背後から貫かれ、わたしの目には、夜の闇が映り込む。ダイヤモンドのような、夜のきらめきが。――あの、ひとつひとつに、命がある。きらめきが――尊さが。存在が。魂が。

「……莉子は、ここが、弱いんだよなあ……」

「ひっ……あっ……」

 わたしの弱いところを熟知する課長は、容赦なく、わたしのなかに攻め込んでくる。形勢逆転。今度は、課長が、わたしを攻める番だ。意外とこのひとは負けず嫌いで、さっきのフルコースを根に持っているらしい。お陰で、わたしは、記憶を飛ばすまで愛されることが確定している。

 でも、わたしのなかで疼く本能が、それを望んでいる。――わたし、課長に愛されて初めて知ったけれど、意外と、M……。生粋の、ドM。

 だって、窓ガラスにうっすら映る女は、喜びを剥き出しにしているんだもの。背後から――愛する男に貫かれることで。

 わたしの、狭い狭い道を、課長の欲が満たしていく。課長が動くたびに、わたしのなかで、彼への愛が膨らんでいく、それはより、大きくなり、おびただしい蜜となって、わたしのなかからあふれていく。……止まらない。どうしよう……。

「ああ……ああ、ああ、……課長……!」

 たちまち、絶頂へと押し上げられる。いつもこのとき……視界に見たことのない景色が弾け、宇宙――星、いろんな、色とりどりの残像が迫りくる。きらびやかなひかりが――祈りの景色が。

「莉子……ああ、もう……」

 背後からきつく抱かれ、より深くあなたのことを知れる。あなたのことを……こんなにもわたしを満たしてやまない、あなたという存在が。

 からだの深い深いところに、あなたの欲を吐き出されると、わたしは……こころのなかが、凪いだ海のように落ち着くのを感じた。セックスは……どこまでもわたしを野性的にするけれど、同時に、安定させる、鎮痛剤のようなものなのだ。

 一晩中、あなたと、セックスをした。窓際でも――ベッドのうえでも、玄関でも、お風呂場でも。流石に、便座に手を添えて背後から愛されたときには笑ってしまったけど……でも、どんなところでも、どんなときでも、あなたという荒ぶる魂を、わたしが求めている。たったひとり。わたしという存在を懸命に追い求めるあなたという存在が。

 さて。朝方数時間眠ったあとに、チェックアウトを済ませる。黒石さんやスタッフの皆さんに挨拶を済ませ――わたしたちは、いったんは、課長の実家へと向かう。というのは、ご祝儀の管理をお二方に任せたから。

 どうやら、お二方は一晩かけて、誰がいくら包んでくれたかまで計算してくれており、お陰でこちらは大助かりだ。

 それから、多額の現金を持ち歩くのも――ということで、車で、うちのマンションまで送って頂き、無事、帰宅した。

 自分のマンションに戻ると、どっと疲れが出て――軽くシャワーを浴びたのちに、泥のように深く眠った。セックスし過ぎた疲れもあったのかもしれない。――いや、そもそも、人前で、あんなに注目されることなんて、一般庶民たるわたしは、経験したことがなかったから。

 ともあれ。

 無事に、終えられてよかった……。

 眠る最後の瞬間まで、わたしは、みんなの、喜びに満ちた表情を思い出していた。――課長のあたたかなぬくもりに包まれながら。

 *
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