(完) ミリエネッタお嬢様の周りは変な人ばかり

(5) 噂と真実

見習い執事の名前はコムです。名字はというと、ありません。その理由は、奴隷だったから。

一目で気に入ったミリエネッタ令嬢が買い取ったのです。皆んなは20歳くらいだと思っているようですが。本当は、もっと年若い。


「僕が出来る男なら、お嬢様の悪い評判も決してみせるのに！」


出来る男なら、お嬢様の悪い評判も消してみせるのに。子供だから何も出来ないから残念でならない。

金儲けの為に会社の乗っ取りや詐欺は当たり前の強欲娘。それが、世間の評判だ。


「本当は、違うんだぞ。知らないくせに！」


実際に借金を取り立てて屋敷や財産を没収するのは、よくある事。会社も数えきれないくらいに潰しております。

ですが、現実には潰れた会社で働いていた者達には仕事を与えて不都合は無い。返って待遇が良くなっているのだ。


「コム、新しいメニュー班が到着したようだ。案内してやってください。ご主人の為に尽くすのが執事の努めです！」
「はい、かしこまりました。ご主人様の為に尽くすのが執事の務めです！


老執事の指示に従い背筋をピンと反らして案内いたします。その仕草は老執事にソックリ。教えてもいないのに、似るものなのだろうか。






サンリク伯爵家の建て増しした兵士舎の食堂には、「新しいメニュープロジェクト」というのが料理を作りにくる。

　
「これは、自信のある料理です。成功と認められて来月にはレストランがオープンですよ！」


ミリエネッタ令嬢は、試験的に兵士舎で新メニューを出すのだ。山のような肉に積み上げられた酒樽。これらは全てサンリク伯爵家の事業の商品でございます。

潰した会社の社員達は雇用されて兵士舎の食堂にも配置されていた。兵士は腹いっぱいで満足。雇われた社員も他より高い報酬で幸せだ。

それが、どうして駄目なのか？