(完) ミリエネッタお嬢様の周りは変な人ばかり

「2書」 ミリエネッタ令嬢という女の子は

(21) 失った一族

父親の言うには、現在の世の中には「竜人族」は存在するが似せて合成された偽りなのだそうだ。

目の前の美しい風景も、輝くドラゴンも霧のように消え失せる。コムの父親は息子に振り向いた。大事な事を伝える為に。


「かって、私達の先祖は自分達が1番優れた者達だと自負していた。その驕りが破滅を招いたのだ。」


輝く金色のドラゴンの姿が、この世に無い大王のお姿なのだと言う。


「ご先祖は、罪を犯した。その代償に大王を失い持っていた力を手放してしまったのだそうだ。」


大王が世を去って竜人族は、一夜で、ただの人と成り果てた。他国に攻め落とされて赤子の手を捻るように奴隷にされてしまったのだ。頼みの大王が居ない事が命取りとなったという。


「皆んなが大王様に帰って頂きたいと、あらゆる方法を試したが無駄だった。竜人の血族の証として、大王の影を記憶し子孫に伝えるのが精一杯だったと伝え聞いている。」


コムにとっては、いきなり、竜人族とか大王とか言われても意味が無い。変わらずに何の力も無いからだ。

この家族は、運が良かった。父親は調教師としての腕が有り、母親は美しかったので夫婦とされ子を成し育てる事が許される。繁殖して子を売られる事も無かった。


「お前のご主人様は、これを渡されたのならご存じなのだろう。私達はミリエネッタお嬢様の奴隷であるけれど、竜人族として忠誠を違う。」


竜人族は、1人の子供を持つ事しか出来ない。その子が16歳になり成人して婚約した。大王様のお姿を見せて下さったのは、大きな意味があるのだろう。