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第十五章 真っ暗聖女と白く輝く結婚を
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「それで、せいじょさまは、どうなったの?」
小さな子ども独特の、少し舌足らずな可愛らしい声に、私は絵本の次のページを焦らす様にゆっくりとめくる。
「『真っ暗だった聖女様の上に、その時、眩しい光が降り注ぎます。びっくりして見てみると、そこには、すっかり力を取り戻した女神様がおりました』」
文字を指で辿りながら読み進める。指の動きを目で追いながら、その子は興奮気味に描かれた女神の姿を見る。
「めがみさま、げんきになったの?」
「そうよ、元気になった女神様は、新しいお供を連れてこう言ったの『貴女のおかげで、すっかりこの大陸は平和になりました。これからのことは、私のお供に任せて、幸せになりなさい』って」
そこで更にページを捲る。女神が連れた二人のお供が聖女に手を伸ばしている絵が続いていた。
「『すると、聖女様の体から、あっという間に真っ暗が消えてしまいました』」
「それで、それで!」
早く次のページをとねだる小さな手に促され、私は最後のページを開いた。
「『驚くみんなを前に、聖女様と王子様は手を取って喜び合い、そうして末長く幸せに暮らしました』」
最後のページには女神に祝福され、幸せそうな聖女と王子の姿が描かれていた。
「これでおしまい?」
「そうね、『真っ暗聖女』のお話はそこでおしまい」
私はちょっぴり不満そうなその子を抱え上げ、頬を軽くつつく。
「もう眠いんでしょう? 他のお話はまた明日してあげる」
「お母様も一緒に寝る?」
「そうね、お父様も誘いましょうか?」
「うん!」
嬉しそうに頷くその子を抱いて部屋を出る。
「お母様、なんで笑ってるの?」
「あなたが私を見てくれるのが嬉しいからかしらね」
私の言葉に、その子は一瞬不思議そうな顔になったが、それでも嬉しそうに笑った。
遠くから私を呼ぶ声がする。
「メイナ!」
いつまでたっても幸せそうな顔で私に駆け寄る人。私は笑顔で彼を迎える。
彼の瞳に映る自分の笑顔に少しほっとして、それからその腕に寄り添う。
並んで歩く私達を、壁に並んだ絵が見守っていた。
小さな子ども独特の、少し舌足らずな可愛らしい声に、私は絵本の次のページを焦らす様にゆっくりとめくる。
「『真っ暗だった聖女様の上に、その時、眩しい光が降り注ぎます。びっくりして見てみると、そこには、すっかり力を取り戻した女神様がおりました』」
文字を指で辿りながら読み進める。指の動きを目で追いながら、その子は興奮気味に描かれた女神の姿を見る。
「めがみさま、げんきになったの?」
「そうよ、元気になった女神様は、新しいお供を連れてこう言ったの『貴女のおかげで、すっかりこの大陸は平和になりました。これからのことは、私のお供に任せて、幸せになりなさい』って」
そこで更にページを捲る。女神が連れた二人のお供が聖女に手を伸ばしている絵が続いていた。
「『すると、聖女様の体から、あっという間に真っ暗が消えてしまいました』」
「それで、それで!」
早く次のページをとねだる小さな手に促され、私は最後のページを開いた。
「『驚くみんなを前に、聖女様と王子様は手を取って喜び合い、そうして末長く幸せに暮らしました』」
最後のページには女神に祝福され、幸せそうな聖女と王子の姿が描かれていた。
「これでおしまい?」
「そうね、『真っ暗聖女』のお話はそこでおしまい」
私はちょっぴり不満そうなその子を抱え上げ、頬を軽くつつく。
「もう眠いんでしょう? 他のお話はまた明日してあげる」
「お母様も一緒に寝る?」
「そうね、お父様も誘いましょうか?」
「うん!」
嬉しそうに頷くその子を抱いて部屋を出る。
「お母様、なんで笑ってるの?」
「あなたが私を見てくれるのが嬉しいからかしらね」
私の言葉に、その子は一瞬不思議そうな顔になったが、それでも嬉しそうに笑った。
遠くから私を呼ぶ声がする。
「メイナ!」
いつまでたっても幸せそうな顔で私に駆け寄る人。私は笑顔で彼を迎える。
彼の瞳に映る自分の笑顔に少しほっとして、それからその腕に寄り添う。
並んで歩く私達を、壁に並んだ絵が見守っていた。
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