【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

オトカヨル

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【番外編】君がいたから

1

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 私は、お茶を手にイウリスとエウジェに向かい合っていた。
 妃教育の合間、少し休憩でもと声をかけてもらったのだが、あいにくルルタは騎士の鍛錬の為に不在だ。
 一人で大丈夫だろうかと不安に思いながら、私は手にした茶器の産地に頭を悩ませていた。

「良いのですよメイナ様。息抜きにお誘いしたのですから、今は茶会の作法など」
 エウジェにそう言われて、私はやっと肩の力を抜いた。
「そうだぞ、城の菓子職人の自信作だ。ただ楽しめばいい」
「こちらの季節の果物を使った焼き菓子などいかがですか?」
 私が気を遣わない様になのか侍女にも席を外させており、エウジェ自ら大輪の花を象った華やかな色の焼き菓子を皿に乗せて、こちらに差し出してくれる。

「ありがとうございます、エウジェ様」
 私は受け取り、小さく切り分けて口に入れる。思ったより瑞々しい果実の爽やかな酸味が口一杯に広がる。
「美味しいです!」
「それは良かった」
 上品な微笑みを向けられて、私はほうっとため息をついた。

「エウジェ様は、本当にいつも美しいですね」
 見目も所作も美しい。イウリスと寄り添う姿は、一幅の絵画の様。
「まあ、我が妃はずっと美しいが、それでも初めて会った時は少し趣が違ったぞ」
「その話をなさるのですか」
 エウジェが眉を寄せる。
「いつかは聞くことになるだろう。それなら、自分から話しておいた方が、余計な枝葉がつかなくて良いだろう?」
 イウリスがそう言うと、仕方ないというようにエウジェは目を閉じた。

「何の話ですか?」
「まずは、これを見てみろ」
 イウリスは、大ぶりな金の懐中時計を取り出し、蓋を開くと私に見せてくれた。中には、セピア色で描かれた肖像画が収められていた。
 少年が二人並んでいる。どちらも整った顔ではあるが、左の少年は線が細くいかにも体が弱そうな印象。右の少年はほんのりと陽に灼けた肌で、潑剌とした印象。

「こちらがイウリス殿下ですか?」
 私は右側の少年を示す。イウリスはにやりと笑って、首を振った。
「俺は左、そっちはな、エウジェだ」
「え!?」
 私は驚きの声をあげ、思わずエウジェと肖像画を交互に見てしまう。
「恥ずかしいので、あまり見ないでくださいませ」
 目元をほんのりと朱に染める、まるで人形の様に整った顔のこの女性と、今にも駆け出しそうな元気な少年。
 否定しないと言うことは、本当に同じエウジェなんだろう。

「エウジェは俺の最愛の妃で、友で、師匠なのだ」
 イウリスは、誇らしげにそう言った。
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