憎悪〜変わり果てたあなたへ〜

あけぼし

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手土産ですよ

1-1 紀子の家

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「……して…どう…して…どうして…」
「どうしてどうしてどうして」


紀子の家では、紀子の死後、紀子の母親は仏壇の前から動けずにいた。

そして、紀子の父親がいじめの調査を学校に依頼したり、教育委員会、弁護士に相談をしたり動き回っているなかで、ただ、ただ、ただ自分も後を追うことを考えていた。


「紀子…気がついてあげられなくて…本当にごめんね…」


1日に何度も紀子に謝っては、医者から処方された薬を飲んで眠る。

でもおかしいのは、いつしか薬を飲んでも眠れなくなったことだった。医者からの精神安定剤はとても効果があるような気がするけど、睡眠剤だけは全然きいてくれないのだ。

夜に眠れないのは辛いけれど、朝日が見えるころには泣き疲れていつの間にか眠ってしまう。

昼間は眠っているか、こうして紀子の仏壇の前にいるかどちらかになっていた。


紀子の父も外出しているこの日、ちょうど正午くらいのことだった。


ーーーー突然に家のチャイムが鳴った。

うるさい…また学校関係者がマスコミに言わないようにお願いするための菓子折りと、見張りにでもきたんだろう…


あいつらは自分たちの保身ばかり考えている。

自分の可愛い娘が、うちの紀子と同じ目に遭っていたらどう思うのだろう。


いじめをしていたあいつらは悪魔だ。

担任も悪魔だ。

あいつらは死んで当然だったんだ。



ーーーーピンポーン



もう一度チャイムが鳴って、ハッとして少しだけ黒い感情を心に押し込み、ゆっくりと立ち上がり見知らぬ来訪者のために玄関の扉を開けた。

すると、「あっ」と言って、目の前には紀子と同じ中学校の制服を着た男女が並んでいる。

見た目はかなり派手で、とても紀子と同級生には見えなかった。


「……」


呆然と見つめたまま、紀子の母親の心臓が高鳴る。こいつらは…もしかして。


「はじめまして、自分たちは紀子さんと同じクラスメイトだったものです。よろしければ、お線香あげさせてもらえませんか?」


口ぶりは丁寧で、普段から目上の人と話す機会があるのかしっかりとした挨拶に一瞬拍子抜けをする。

しかし、隣に並んでいるいかにも素行の悪そうな女2人は、こちらを目を合わせることもしなかった。

ようするに、この男にこの女たちは無理やりうちに連れてこられたのだと察した。


「どうぞ」


どうして我が家の場所を知っているのか、今日は平日だから学校のはずだが早退してきたのか?いろんなことが頭をよぎったが、とにかく家の中に入れてしまいたかった。


「お邪魔します。これ、手土産です」

「まぁ、ご丁寧に。ありがとう」


すぐに家の扉が閉まって、鍵を閉めた。

うちに上がり込むときに、この男の子だけは靴を揃え、あとの女2人は無造作に進行方向に靴を向けたまま上り込む。そしてキョロキョロとあたりを見わたし、奥の和室を指差して歩き出した。


こういうときは、「こちらへどうぞ」とわたしが案内してから進むものよ?そんな常識も知らないのね、と思いながら、こんな奴に…こんな奴らに…うちの可愛い紀子が…と思うと怒りで身体が震えた。


そう、なぜだか名乗られてもいないのに、奴らが紀子をいじめたヒサシと、ヨウキと、アキナだということがすぐにわかったのだ。

確かもう1人は死んだはずだし、あとの男の子2人は昨日事故にあったはずだし。


奥の紀子がいる和室に3人が入っていくのを確認した。

そして、すぐさま台所から包丁を2本持って、その部屋へ入る。


3人は紀子の仏壇の前に座り手を合わせていた。

私がさっきまで座っていた座布団に男が座り、こちらに気がつかないままどうやら手を合わせている。

女2人は正座ともいえない足を崩した座り方で男の隣に並び、私のほうを振り返る。

そして、「ひっ」と小さな悲鳴を女の一人があげた瞬間に私は大きく1歩、2歩、3歩進み、紀子の仏壇の前に座っている男をまずは狙う。


最初に1番強そうな男の子の首を切って身動きとれなくさせた。

次に悲鳴をあげた女の口元を切ってから、反撃してカバンで殴ってきたもう1人の女の足を何度も何度も切りつける。
口元を切った女は泣いておしっこを漏らして後ずさりしているが、どうやら腰を抜かしたらしくて、それを見て笑いが止まらない。


男がよろめきながらスマホを取り出したので、警察か誰かに助けを求めたいのだろう。それは困るので今度は後頭部をもう1本の包丁で刺した。それはかなり堅かったので包丁が抜けなくなった。


気がついたら足を切りつけていたはずの女は、腹部も血まみれになり絶命していた。息を切らしながら、一瞬だけ冷静になる。…これは私がやったのかしら?


最後の口からダラダラと血を流し怯える女を立ったままゆっくりと凝視する。
本当に、見るからにだらしがなく、頭が悪そうで、性格が悪そうな顔をしている。


「なんで、お前みたいな女にうちの紀子が…」

「ごごごごごごごめんなさい!!!!許して許して許してください!!!!!!わわわわわわたしたちも本当はいじめたくなんかなかった!だから今日来たんです!謝りたくて!!!!」


無様な泣き顔に頭が沸騰するような思いだった。そしてやっぱりこいつらは殺してしまえと思った。


「やっぱり、おまえらが紀子を!!!!!!!!」


紀子の母親がそう言った瞬間、口元をおさえていた手を顔の前で交差させ「ひっ」と声をあげる。


「許すわけないでしょう!?」


紀子よりも、私が許さないわよ。こんな痛みより、もっともっと紀子はずっと苦しんで痛かったはずなんだから。

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