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古ぼけた不動産屋から出てきたのは、レイチェルだった。
久しぶりの休みを取ることができた彼女は、ドースンの隠し部屋探しに奔走していた。
爆弾魔は既にジェイコブ・マローンという男が捕まっていたが、セスやテイラーは、彼が単独犯であるという警察公式の見解に疑いを持っていた。
正直、レイチェルにはそこまでの判断ができなかったが、いずれにせよそれはドースンが隠し続けた例の部屋の中に重要な手がかりが残されていると確信していた。
いまだウォレスが怯え、テイラーが追っている『ニールソン』という男が、彼らが言うようにこの街に潜伏していて、今も息を潜めているという可能性があるとして、ドースンの隠し部屋を見れば、きっと何かわかるはずだ・・・。そこにもし、ニールソンの陰がなくて、本当にマローンの単独犯行という答えが待っていたとしても、それはそれでいい。ようするに、皆が安心できれば、いいのだ。
レイチェルは、今回の一連の事件で随分変わった自分に気づいていた。
そう、レイチェルは変わった。
以前はあまり他人のことを考えず、自分のことだけを考えていた。
いつも余裕がなく、セスとの関係もまるで一方的にレイチェルがセスを振り回しているかのようなものだった。
あの頃は、毎日の仕事やそこから発生するストレスと必死に闘っていて、立ち止まっている暇などなかった。それが当たり前だと思っていた。
だが、最近気づいたことがある。
そんな日々は、間違いだってことに。
一連の事件があって、図らずもレイチェルは、色々なことを考えなくてはならなかった。友人の生命が失われたことや、従兄弟が犯罪被害者となってしまったことなど、彼女が受けたダメージは大きかったが、そのことが返って、自分の人生を見つめなおすきっかけとなっていた。そうして、失いたくないものもはっきりとわかることができたのである。
自分は他の人々に助けられて生きている。
そして、他の人からも必要とされている。
世の中の人間には全て役割があって、そしてそれはひとつとして孤立していない。
自分もセスも、マックスやウォレスだって、繋がっている。
他人を思いやることができるようになれば、その繋がりはやがて自分の心の平安へと導いてくれるのだ。
世の中は益々物騒になっていくが、不思議とレイチェルの心は穏やかで、そして力強かった。
それは、自分一人でないことに気が付いたから。
それを教えてくれたのは、マックスとウォレスだった。
あの二人の関係を身近で見ることで、レイチェルは自然とその素晴らしさに気が付いた。
彼らは互いに傷ついて、それでも前を向いて互いを思い合っている。二人の愛情は本物だし、数々の困難があるからこそ、絆は強く深い。
── 自分を犠牲にしてしまえるほどの愛情なんて・・・。
この世の中に、これほど強い思いはあるだろうか。
あんな事件が起こったことは悲劇だが、そのお陰で得るものはたくさんあった。
きっとそれは、マックスだって感じているだろう。
他人を思いやることは難しい。
けれどそれができるようになれば、そこには素晴らしい世界が待っている。
ようやくレイチェルは、そのことを実感しつつあった。
なぜ、もっと早く気づけなかったのだろうと思う。
けれど、今からでも遅くはないのだ。
そう思える今は、何も怖くない。
早くセスと、このことについて素直に話せる日がくればいいのに・・・。
レイチェルはそう思った。
彼女が次に訪ねた先は、クラウン地区にあるアパートメント群を取り仕切っている不動産屋のひとつだった。
しかし、これで三軒目だったが、どこも芳しい返事は返ってこなかった。
レイチェルは、ガラス戸の向こうに姿を消しつつある老人の後ろ姿を返り見ながら、軽く溜息をついた。緩く頭を振る。
何せクラウン地区の賃貸部屋の管理はいい加減で、不動産屋がオーナーと借り手を仲介しているといっても又貸しに次ぐ又貸しというケースさえあった。
今まで回った中では、誰もドースンらしき人間を覚えている不動産屋はいなかった。しかし取り敢えず8軒残っているので、まだ希望は残されている。
レイチェルは、通りの向かいにあるダイナーで一息つくことにした。
タクシーやオンボロの車達が行き交う通りを、車の間を縫って、走り渡った。
ダイナーのドアを開けると、メキシコを思わせるミュージックがかかっており、カウンター席の隣にある冷蔵ショーケースではテイクアウト専用のタコスが置いてあった。
「ハイ」
レイチェルがカウンター席に腰掛けると、「何にします?」と若いアラブ系の店員が白いエプロンで濡れた手を拭いながら訊いてきた。
「コーヒーと何か軽く摘めるものはないかしら?」
「チェリーパイとブルーベリーパイとオートミールクッキーに・・・」
「チェリーパイにするわ」
「わかりました」
気さくな笑顔がそう答え、奥に消えて行った。
レイチェルは、胸元から引っ張りだしたメモ帳とクラウン地区の地図を広げた。
今まで当たった不動産屋が管理するアパートメントに、×印を付けていく。
「まだまだ先は長いわね・・・」
レイチェルが再び溜息をつくと、湯気を立てる真っ黒なコーヒーとチェリーパイがのったクリーム色の皿が運ばれてきた。
レイチェルが地図を右側に寄せると、隣の男の手に地図の先がバサバサと覆い被さった。
「あ、ごめんなさい」
レイチェルが隣の男を見ると、男はキャップ越しに静かな笑顔を浮かべながら「いいえ」と手を引っ込めた。
ごつごつとして白い男の手。低所得の労働者階級の出ということが想像できる。クラウン地区に住む移民だろうか。
レイチェルが地図を畳むと、男が「物件探しかい?」と訊いてきた。
訛りが強い英語。やはり移民だろう。この地域では珍しくない。レイチェルはコーヒーを啜りながら答えた。
「いえ・・・ええと・・・。まぁ、そんなものね」
「それで、お目当てのものは見つかった?」
「それが・・・、なかなかね。難しいわ」
レイチェルが肩を竦めると、男は笑顔を浮かべた。
「ここら辺は、安いのだけが取り柄の部屋ばかりだからね。俺もここら辺で部屋探してるんだ」
男はカップの中の最後のコーヒーを飲み干した後、レイチェルにそう告げて、席を立った。
「またどこかで会うかもしれないね」
男はそう言い、店を出て行った。
レイチェルは何気なく後ろを振り返って、ガラス越し歩いていく男の横顔を見つめた。
── どこかで見た顔のような気がするんだけど・・・。気のせいかしら。
レイチェルは、どうしてもその先を思い出すことができなかった。
その日の夜。
レイチェルは初めて、ウォレス家を訪れた。
マックスとウォレス、そして彼の娘の三人で、二日間かけて家中を掃除したという。
しばらく主のいなかった家は、案外埃まみれになるのも早い。
ところどころ痛んでいた箇所もついでに直したとかで、床は真新しいワックスの匂いがした。
「さすがにディナーまでは頑張れなかったの」
ウォレスの娘シンシアは、デリバリーの食事を器に移しながら、苦笑いした。
「お客様が来るんだったら、もっと何とかするべきだったわ」
「気を使わなくったっていいのよ。あなたとあなたのパパは私にとってはもう家族みたいなものなんだし。それに」
レイチェルはラザニアがのった皿を持ち上げて香りを嗅ぐと、「とってもいい匂い。おいしそうよ、これ」と言って微笑んだ。
レイチェルとシンシアは、今日初めて言葉を交わした。
シンシアは少し緊張した様子だったが、レイチェルがあのお得意のコミカルな笑い声を上げると、すっかり警戒心を解いたようで、二人はすぐにうち解け合った。
「それで、どうだったの? 探偵さん」
マックスが、ダイニングテーブルの上にグリーン色のチェック柄テーブルクロスをかけながら、訊ねてくる。
「成果はまだないわ。想像通り、なかなか大変よ。あそこら辺のアパートメントはとにかくごちゃごちゃしていて複雑だわ。ケヴィンは、なぜあそこの地区を選んだのかしら。治安はおろか、交通や飲食店の利便性も悪いあの地区に。何か理由があってもいいと思うんだけど」
「何の話だい?」
掃除道具の後かたづけを済ませたウォレスが、ダイニングルームに入ってくる。
マックスの目が即座に彼に向けられ、ウォレスが彼の傍を通る時に一瞬マックスの手がウォレスの手に絡まった。だがすぐに、するりと離れる。
さり気ないけれども、どれだけ二人が互いのことを想っているか、わかる瞬間。
「いつもこんな調子なのよ。私も当てられっぱなし」
シンシアがレイチェルに耳打ちをする。
「女は辛いわよねぇ。こんないい女達を放りっぱなしだなんて」
「え? 何?」
不可解そうな顔をしてレイチェルとシンシアを見つめるマックスに、「なんでもない」と二人は声を揃えて言いながら、食卓についた。
「今度の休みに、残りの不動産屋やオーナー達を回ってみるわ。ケヴィンのことを誰も覚えてないだなんてことはあり得ない」
「俺も手伝えたらいいけど」
マックスがそう言うと、レイチェルは首を横に振った。
「アンタは退院したばかりじゃない。こんなハードなことはまだ無理。しばらくは恋人のもとで労ってもらうことね」
マックスとウォレスが一瞬見つめ合い、照れくさそうに苦笑いする。
「それで、どこの地区を調べているんだい?」
ウォレスがラザニアを頬張りながら、レイチェルを見る。
レイチェルはワインを飲みながら席を立つと、リビングのソファーに置いてある自分の鞄の中から地図を取り出した。
ダイニングに戻って、それをウォレスに渡す。
ウォレスはそれを受け取ると、地図を広げた。
ウォレスは、興味深げにじっと地図を見つめ続けた。
「・・・ジム、どうかしたの?」
マックスがウォレスの顔色を窺う。
ウォレスはゆっくりと顔を上げ、そして地図上のある場所を静かに指し示した・・・。
久しぶりの休みを取ることができた彼女は、ドースンの隠し部屋探しに奔走していた。
爆弾魔は既にジェイコブ・マローンという男が捕まっていたが、セスやテイラーは、彼が単独犯であるという警察公式の見解に疑いを持っていた。
正直、レイチェルにはそこまでの判断ができなかったが、いずれにせよそれはドースンが隠し続けた例の部屋の中に重要な手がかりが残されていると確信していた。
いまだウォレスが怯え、テイラーが追っている『ニールソン』という男が、彼らが言うようにこの街に潜伏していて、今も息を潜めているという可能性があるとして、ドースンの隠し部屋を見れば、きっと何かわかるはずだ・・・。そこにもし、ニールソンの陰がなくて、本当にマローンの単独犯行という答えが待っていたとしても、それはそれでいい。ようするに、皆が安心できれば、いいのだ。
レイチェルは、今回の一連の事件で随分変わった自分に気づいていた。
そう、レイチェルは変わった。
以前はあまり他人のことを考えず、自分のことだけを考えていた。
いつも余裕がなく、セスとの関係もまるで一方的にレイチェルがセスを振り回しているかのようなものだった。
あの頃は、毎日の仕事やそこから発生するストレスと必死に闘っていて、立ち止まっている暇などなかった。それが当たり前だと思っていた。
だが、最近気づいたことがある。
そんな日々は、間違いだってことに。
一連の事件があって、図らずもレイチェルは、色々なことを考えなくてはならなかった。友人の生命が失われたことや、従兄弟が犯罪被害者となってしまったことなど、彼女が受けたダメージは大きかったが、そのことが返って、自分の人生を見つめなおすきっかけとなっていた。そうして、失いたくないものもはっきりとわかることができたのである。
自分は他の人々に助けられて生きている。
そして、他の人からも必要とされている。
世の中の人間には全て役割があって、そしてそれはひとつとして孤立していない。
自分もセスも、マックスやウォレスだって、繋がっている。
他人を思いやることができるようになれば、その繋がりはやがて自分の心の平安へと導いてくれるのだ。
世の中は益々物騒になっていくが、不思議とレイチェルの心は穏やかで、そして力強かった。
それは、自分一人でないことに気が付いたから。
それを教えてくれたのは、マックスとウォレスだった。
あの二人の関係を身近で見ることで、レイチェルは自然とその素晴らしさに気が付いた。
彼らは互いに傷ついて、それでも前を向いて互いを思い合っている。二人の愛情は本物だし、数々の困難があるからこそ、絆は強く深い。
── 自分を犠牲にしてしまえるほどの愛情なんて・・・。
この世の中に、これほど強い思いはあるだろうか。
あんな事件が起こったことは悲劇だが、そのお陰で得るものはたくさんあった。
きっとそれは、マックスだって感じているだろう。
他人を思いやることは難しい。
けれどそれができるようになれば、そこには素晴らしい世界が待っている。
ようやくレイチェルは、そのことを実感しつつあった。
なぜ、もっと早く気づけなかったのだろうと思う。
けれど、今からでも遅くはないのだ。
そう思える今は、何も怖くない。
早くセスと、このことについて素直に話せる日がくればいいのに・・・。
レイチェルはそう思った。
彼女が次に訪ねた先は、クラウン地区にあるアパートメント群を取り仕切っている不動産屋のひとつだった。
しかし、これで三軒目だったが、どこも芳しい返事は返ってこなかった。
レイチェルは、ガラス戸の向こうに姿を消しつつある老人の後ろ姿を返り見ながら、軽く溜息をついた。緩く頭を振る。
何せクラウン地区の賃貸部屋の管理はいい加減で、不動産屋がオーナーと借り手を仲介しているといっても又貸しに次ぐ又貸しというケースさえあった。
今まで回った中では、誰もドースンらしき人間を覚えている不動産屋はいなかった。しかし取り敢えず8軒残っているので、まだ希望は残されている。
レイチェルは、通りの向かいにあるダイナーで一息つくことにした。
タクシーやオンボロの車達が行き交う通りを、車の間を縫って、走り渡った。
ダイナーのドアを開けると、メキシコを思わせるミュージックがかかっており、カウンター席の隣にある冷蔵ショーケースではテイクアウト専用のタコスが置いてあった。
「ハイ」
レイチェルがカウンター席に腰掛けると、「何にします?」と若いアラブ系の店員が白いエプロンで濡れた手を拭いながら訊いてきた。
「コーヒーと何か軽く摘めるものはないかしら?」
「チェリーパイとブルーベリーパイとオートミールクッキーに・・・」
「チェリーパイにするわ」
「わかりました」
気さくな笑顔がそう答え、奥に消えて行った。
レイチェルは、胸元から引っ張りだしたメモ帳とクラウン地区の地図を広げた。
今まで当たった不動産屋が管理するアパートメントに、×印を付けていく。
「まだまだ先は長いわね・・・」
レイチェルが再び溜息をつくと、湯気を立てる真っ黒なコーヒーとチェリーパイがのったクリーム色の皿が運ばれてきた。
レイチェルが地図を右側に寄せると、隣の男の手に地図の先がバサバサと覆い被さった。
「あ、ごめんなさい」
レイチェルが隣の男を見ると、男はキャップ越しに静かな笑顔を浮かべながら「いいえ」と手を引っ込めた。
ごつごつとして白い男の手。低所得の労働者階級の出ということが想像できる。クラウン地区に住む移民だろうか。
レイチェルが地図を畳むと、男が「物件探しかい?」と訊いてきた。
訛りが強い英語。やはり移民だろう。この地域では珍しくない。レイチェルはコーヒーを啜りながら答えた。
「いえ・・・ええと・・・。まぁ、そんなものね」
「それで、お目当てのものは見つかった?」
「それが・・・、なかなかね。難しいわ」
レイチェルが肩を竦めると、男は笑顔を浮かべた。
「ここら辺は、安いのだけが取り柄の部屋ばかりだからね。俺もここら辺で部屋探してるんだ」
男はカップの中の最後のコーヒーを飲み干した後、レイチェルにそう告げて、席を立った。
「またどこかで会うかもしれないね」
男はそう言い、店を出て行った。
レイチェルは何気なく後ろを振り返って、ガラス越し歩いていく男の横顔を見つめた。
── どこかで見た顔のような気がするんだけど・・・。気のせいかしら。
レイチェルは、どうしてもその先を思い出すことができなかった。
その日の夜。
レイチェルは初めて、ウォレス家を訪れた。
マックスとウォレス、そして彼の娘の三人で、二日間かけて家中を掃除したという。
しばらく主のいなかった家は、案外埃まみれになるのも早い。
ところどころ痛んでいた箇所もついでに直したとかで、床は真新しいワックスの匂いがした。
「さすがにディナーまでは頑張れなかったの」
ウォレスの娘シンシアは、デリバリーの食事を器に移しながら、苦笑いした。
「お客様が来るんだったら、もっと何とかするべきだったわ」
「気を使わなくったっていいのよ。あなたとあなたのパパは私にとってはもう家族みたいなものなんだし。それに」
レイチェルはラザニアがのった皿を持ち上げて香りを嗅ぐと、「とってもいい匂い。おいしそうよ、これ」と言って微笑んだ。
レイチェルとシンシアは、今日初めて言葉を交わした。
シンシアは少し緊張した様子だったが、レイチェルがあのお得意のコミカルな笑い声を上げると、すっかり警戒心を解いたようで、二人はすぐにうち解け合った。
「それで、どうだったの? 探偵さん」
マックスが、ダイニングテーブルの上にグリーン色のチェック柄テーブルクロスをかけながら、訊ねてくる。
「成果はまだないわ。想像通り、なかなか大変よ。あそこら辺のアパートメントはとにかくごちゃごちゃしていて複雑だわ。ケヴィンは、なぜあそこの地区を選んだのかしら。治安はおろか、交通や飲食店の利便性も悪いあの地区に。何か理由があってもいいと思うんだけど」
「何の話だい?」
掃除道具の後かたづけを済ませたウォレスが、ダイニングルームに入ってくる。
マックスの目が即座に彼に向けられ、ウォレスが彼の傍を通る時に一瞬マックスの手がウォレスの手に絡まった。だがすぐに、するりと離れる。
さり気ないけれども、どれだけ二人が互いのことを想っているか、わかる瞬間。
「いつもこんな調子なのよ。私も当てられっぱなし」
シンシアがレイチェルに耳打ちをする。
「女は辛いわよねぇ。こんないい女達を放りっぱなしだなんて」
「え? 何?」
不可解そうな顔をしてレイチェルとシンシアを見つめるマックスに、「なんでもない」と二人は声を揃えて言いながら、食卓についた。
「今度の休みに、残りの不動産屋やオーナー達を回ってみるわ。ケヴィンのことを誰も覚えてないだなんてことはあり得ない」
「俺も手伝えたらいいけど」
マックスがそう言うと、レイチェルは首を横に振った。
「アンタは退院したばかりじゃない。こんなハードなことはまだ無理。しばらくは恋人のもとで労ってもらうことね」
マックスとウォレスが一瞬見つめ合い、照れくさそうに苦笑いする。
「それで、どこの地区を調べているんだい?」
ウォレスがラザニアを頬張りながら、レイチェルを見る。
レイチェルはワインを飲みながら席を立つと、リビングのソファーに置いてある自分の鞄の中から地図を取り出した。
ダイニングに戻って、それをウォレスに渡す。
ウォレスはそれを受け取ると、地図を広げた。
ウォレスは、興味深げにじっと地図を見つめ続けた。
「・・・ジム、どうかしたの?」
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