清楚系彼女は溺愛警察官を乱して狂わせる

日下 凛

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プロローグ 前編

 引っ越し初日の夜、私はコンビニの袋を提げて、街灯もまばらな路地を一人で歩いていた。
 前に住んでいた場所と違って、この辺りは人通りも少ない。

 角を曲がってから、ずっと誰かにつけられてるような気がした。
 気のせい……よね……?
 そう思って歩く速さを変えても、足音は確かに付いてくる。

 恐怖で指先が冷たくなって、ドクドク鳴り出す心臓。
 震えそうになる脚に力を入れ、勇気を出して走りだそうとした。
 その途端、肩を掴まれ羽交い締めにされる。

「……騒ぐな……大人しくしてろよ」

 手で口を塞がれ、声も出せない。
 耳元にハァハァと荒い息がかかって、ざらついた男の声がした。

「んんーっ!」

 身体のあちこちを弄られて、嫌なのに恐怖で動けない。
 このまま犯されて殺される――
 そんなことが頭によぎった瞬間、ガシャンと何かが倒れる音がした。

「おい! 何してるんだ!」

 鋭い声と同時に、私を拘束していた腕が引き剥がされた。

「……何もしてねえだろ」
「女性を襲っておいて、何を言ってる!」

 震えながら振り向くと、若い男が情けない声を出して警察官に取り押さえられていた。
 犯人に素早く手錠をかけた警察官に訊かれる。

「あなた、大丈夫ですか? 怪我はないですか?」
「……あ、はい。……だ、大丈夫……です……」

 身体を力任せに弄ばれた嫌な感触は残っていた。
 いきなり襲われたせい?
 自分が犯罪に巻き込まれた現実感がなかった。

「応援を呼びます。少し待っててもらえますか?」
「……はい」

 警察官はそう言うと、無線でやり取りし始める。
 私は座り込んで、その様子をぼんやり見ていた。
 男はパトカーで来た屈強な警察官二人に、車内に押し込められ連行されていった。

「怖かったでしょう? ……本当に怪我はないですか?」
「……身体を触られたけど……多分怪我は、ないと思います」
「今は気が張っているから、気が付かないだけかもしれないです」

 急いで駆け寄ってきた警察官が、座り込んだままの私に尋ねる。
 優しい声をかけられて、一気に全身から力が抜けた。

「この辺りで最近、女性が暴行される事件が頻発していたんです」
「……あの人……犯人だったんですか?」
「それは、詳しく聴取してみないと分かりませんが……間に合って良かった」

 この人が助けてくれなかったら、今頃私は……。
 自覚した途端に身体がぶるぶる震えだす。
 冷たいアスファルトの上に、ぺたんと座り込んでしまった。

「大丈夫ですか?」
「……ごめんなさい。襲われたのがショックで……急に……」
「あんな目に遭えば当然ですよ。こんなに震えて……」

 警察官は着ていたジャンパーを脱ぐと、私の肩に掛けてくれた。
 温もりが残っていて、優しい匂いのするジャンパーに包まれて、少し気持ちが落ち着く。
 向かいに屈み込んだ警察官は、心配そうに私の顔をのぞき込んできた。

「……すみません……ありがとうございます」
「いいんですよ。落ち着くまで一緒にいますから。もしできそうなら深呼吸しましょう」

 座り込んでいる私と一緒に、深呼吸をしてくれる警察官。
 暗がりではっきり顔は見えないけれど、身体つきはがっしりしていて大柄なのに威圧感がない。
 側にいてくれると、守られているみたいで安心できた。

「……少し、落ち着いてきました」
「じゃあ、立ってみましょうか。支えるからゆっくりでいいですよ」

 差し出された警察官の大きな手につかまって、なんとか立ち上がれた。
 けど脚に力が入らない。塀に手をついて、子鹿みたいにプルプル震えていた。
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