最弱勇者は無双したい~異世界に来たのに俺tueeeできない勇者の話~

渋井丸

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第五話 魔王を倒す(可能性が限りなく0に近い1)勇者、降臨

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「問おう。お前が新しい勇者か?」

 これまでのあらすじ。転生したらなんか男に会って、なんか王城に連れてこられてなんか王に会わされた。だいたいあってる。
 異世界転生してこんな濃ゆい目にあってるの多分俺だけだと思う。チートハーレムしてヒャッホイしてる連中に、いつ殺されるかわからん辛さが分かるか。

 「……はい。お、私が転生者のタナカコウジです、王様」

 知っている限りの目上の人への礼儀をフルに活用しながら、跪いた。全身が震えているのが分かる。齢40代程に見える王様は、顎髭をさすりながら目を瞑った。

 「それで、今回もいつものでいいんだな、ジャックよ」
 「左様でございます、サルク王よ。僭越ながら、この者に贈呈品を王直々にお渡し願いたいのです」

 と、ジャックがそんな事を言い放った。なんでこいつ俺より敬語使えんの、てかなんでここにいんの?
 ふむ……と、サルク王は暫し考えるような仕草をとった。そして、不意に俺の方を向き、口を開く。

 「そこの者よ。なにか自分が勇者であると証明できるものはあるか?」
 「え」

 戸惑いの表情を、俯きで隠した。
 勇者であると証明できるものって……何を出せばいいんだ?ステータスボードでも見せるか? いやでも、俺のスキルが見られたらまずいのでは。

 「少しよろしいでしょうか、サルク王」
 「なんだ」

 ジャックの言葉に、サルク王はなおも視線をこちらに向けたまま返事をした。そして、なおも跪いたままのジャックが顔を上げた。

 「先程確認しましたところ、この者は言語理解の特性を持っております。ステータスボードをご覧いただければ……」
 「……ふむ。確かに言語理解の特性は他世界から来た勇者のみが授かるもの。騎士団長のお前が言うのであれば、そやつはそれを持っているのであろうが……」

 王様はそう言うと、俺にステータスボードの提示を求めてきた。……まあ、ジャックが言うなら渡してもいいか。
 俺が手渡すと、それをローブを着たおじさんが、神妙な顔で見つめている。
 その間に俺は、隣でずっと同じ姿勢で固まっているジャックに話しかけた。

 「おい、お前そんな偉かったのか……。……いや、偉かったんですか!?」
 「よせやめろ、確かに俺はこのサルク国の騎士団長であるが。お前は俺が友と認めた存在、敬語などいらん」

 いや、さっきまで俺の名前も知らなかっただろ、お前。俺が名乗った時、えっそうなの!? みたいな顔で見てきたの知ってるんだぞ。名前も知らない友がありなら、この世の人類全員友達100人いってるっつーの。
 まあそれはそれとして。ジャックに友と言われるのはなかなか悪くない。俺がこっそりニマニマしていると、確認を終えたらしい王様が話しかけてきた。

 「待たせて悪かったな、勇者よ。いくら騎士団長の勧めであろうと、確認をしないわけにもいかんのだ。身分詐称の前例がある故な……。」

 ローブのおじさんが返しに来た俺のステータスボードを受け取り、ポケットにしまう。というか、疑問を持っていなかったが、この世界でステータスボードは一般的なものなのだろうか。

 「さて、勇者よ。まずは、これが当分の冒険資金だ。受け取るがいい」

 そう言って王様は大きな袋をローブのおじさんに渡した。それを、おじさんが俺に渡しに来る。
 受け取ったそれには結構な重量がある。いくらぐらい入っているのだろう。

 「次に、これだ」

 そう言って王様はペンダントを以下略。
 無事に渡ってきたそれには、素人目に見ても相当の高級感が漂っている。

 「それは、王家の紋章だ。それを見せれば、大抵の関所は通れるだろう。まあ、身分証みたいなものだな」

 なるほど。世界を救う(かもしれない)俺への、ささやかな贈呈品か。まあ、世界を救う(可能性がある)俺にはピッタリの品だ。
 殺されなかった安堵感から、笑顔でお礼の言葉を述べると、王様は。

 「ではな、勇者。健闘を祈っておるぞ」

 今日はじめて見せる、とびきりの笑顔で、俺を送り出してくれた。
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