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第7話
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会話は「」は日本語、【】は英語、[]はイタリア語です。
脳内変換でよろしくお願いします。
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第7話
薫は4人を父・猛の行きつけである蕎麦屋に連れて行った。
赤ん坊がいるので奥の個室に通してもらう。
といっても、アランとエリカはすやすやと眠っているので周りが気にするようなことはなかった。
カルロスは初めて食べたようでかなり興奮気味。
むしろ、彼を抑える方が大変だった。
その後、クレアが手配したホテルまで送った。
【カオル、良かったらディナーしない?】
【え?】
【今日はカオルの誕生日でしょ?】
【みんなでお祝いしたいの。 勿論、彼と予定がなければの話よ。】
【輝臣さんに聞いてからでもいい?】
【ええ、構わないわ。】
薫は伊達に相談した。
意外なことに伊達からは二つ返事で了承される。
ただし、自分も参加したい旨を伝えてほしいと言われた。
【輝臣さんも一緒でいいなら…。】
【勿論オッケーよ。】
【分かった。 あ、ドレスコードとかある?】
【大丈夫。 カジュアルなお店にしてるから。】
【じゃ、車を置いてくるから一旦帰るね。】
【気を付けて。 またあとで。】
薫と伊達は四人と別れ、車を置きに帰ることにした。
「で、待ち合わせは?」
「夜7時にホテルの前でって。」
「そうか…。」
「輝臣さん、ほんとによかったの?」
「何が?」
「その、今日は特別な日になったから…。」
「とはいえ、久しぶり会った友人なんだろ?」
「そうだけど…。」
「なかなか会えないのは分かったから、今夜は彼らに付き合うよ。
俺なら薫とはいつでも好きなとこに行けるしな。」
「もう、輝臣さんったら…。」
「それに…。」
「それに?」
「いや、何でもない。」
伊達はそこで話を切った。
薫はその態度に胸騒ぎを覚えたが、敢えてそれ以上話はしなかった。
それは今がその時ではないと感じたからだった。
****************************************************************
約束の時間に二人で向かうと4人は既にロビーで待っていた。
【ごめん、もしかして待たせた?】
【そんなことないわ。】
【それなら良かった。】
【双子を連れて行ってもいいか店に確認するためにフロントと掛け合ってたのよ。】
【そうだったんだ】
【さて、迎えの車も来たことだし、いきましょうか。】
正面玄関に横付けされていたワンボックスカーに乗り、目的地へと向かう。
クレアが予約していたのはログハウス風のレストランだった。
アットホームな雰囲気のそこはリラックスして過ごせる場所と言えた。
【では、カオルの22回目の誕生日を祝って…。】
【乾杯!!】
カルロスの音頭でディナーは始まった。
ここで初めて薫は自身の左手の薬指の指輪について追及される羽目になる。
尤もクレアは始めからそのつもりだったようだが。
相変わらず人が悪いと薫は思った。
【馴れ初めとか聞いてもいいかしら?】
【ノーコメント!!】
【もう、恥ずかしがって…。】
【クレアの意地悪!】
【ははは、カオルが言わないんだったらテルオミに聞いたらどうだ?】
【輝臣さん、答えなくていいですからね!】
【別に話しても構わないが…。】
【テルオミ、ぜひ教えてよ。】
【もう、やめてってば!!】
【ねぇ、テルオミが例の彼なのかぐらいは教えてよ。】
【うぅぅぅぅ。】
【言葉に詰まるってことはやっぱりそうなんだ。】
【クレア、どういうことだ?】
【カオルがサッカー辞めてまで追いかけた彼がいるのよ。】
【クレア、お願いその話は…。】
【あら、それは初耳ですわね。】
【シャーリーまで加わらないで!!】
自分が言ってしまったことがどれほど恥ずかしいことかを思い知らされる羽目になった薫。
とうとう、耐えきれなくなって席を立ってしまう。
クレアもカルロスも面白そうにその姿を見送った。
[シャーリー、俺も少し席を外す。]
[ディーノ、カオルと話してくるの?]
[ああ、今のカオルならわかってくれるはずだ。]
[そうね。 こっちのことは私に任せて。]
[頼む…。]
ディーノはシャーリーにだけ耳打ちしてそっとその場を離れた。
ディーノは敢えて薫の後を追うようなことはせず、遠回りをして彼女のもとへと向かった。
【あれ? ディーノは?】
【少し飲み過ぎたと言って夜風に当たりに行きましたわ。】
【とか何とか言って、カオルを口説きに行ったんじゃないのか?】
【まさか。】
【カルロス、いくらなんでもそれは言い過ぎよ。】
【どうだか。 ヤツはずっとカオルのこと見てたんだ。
テルオミ、さっさと追いかけねぇと持っていかれちまうぞ。】
【それは…。】
【それは決してありません。】
【シャーリー?】
【プロフェッサー、とお呼びしてもよろしいですか?】
【いずれはそうなるつもりだが、まだ准教授だ。
名前で呼んでくれて構わない。】
【では、テルオミ。 あなたの専門はなんですか?】
【歴史だ。 主に日本文化史を研究している。】
【では、文学にも興味はおありで?】
【多少のことならな…。】
【では、ドクター森の『舞姫』はご存知?】
【ああ、勿論だ。】
【カオルの父親はその主人公に酷似してるのです。】
シャーリーのその言葉に伊達は彼女が何を言いたいのか察した。
彼女は静かに頷き、伊達の考えが間違いないことを示した。
【なぁ、『舞姫』ってなんだ?】
【医師免許を持つ小説家が書いた短編だったかな?】
【そうです。 森鴎外が自身の経験を踏まえて書いた小説です。】
【で、どんな話なんだ?】
【医学を志す日本人青年が留学先のドイツで一人の女性と出会って恋をする。
二人の交際は順調かと思われたが、青年の友人からもたらされた地位と名誉。
青年は彼女を捨て、地位と名誉を取り帰国する。
確か、そんな話だったと記憶してるわ。】
【うわっ、なんだよそれ? 完全に男のエゴじゃないか。】
【その通り。 男の身勝手だ。
しかも、相手の女性は自分の子を身籠ってたというのに。】
【最低。】
【ねぇ、シャーリーホントなの?
カオルの父親がそんな真似をしたっていうの?】
そう問いただすクレアの前に、色褪せセピア色になった一枚の写真を差し出した。
【これは?】
【ディーノの母親と当時付き合っていた男性の写真です。】
【日本人?】
【あぁ、やっぱりそうなのね…。】
【クレア?】
【シャーリー、私にはとても信じられないわ。】
【えぇ、私も信じたくはないです。
ですが、彼が貿易会社に勤めてて、ヴェネツィアに赴任してたのは事実です。】
【そうね、今はO.T.C.ホールディングの専務だしね。】
【O.T.C.ホールディング? ま、まさか、この男性は…。】
【そうです。 薫の父親、結城猛氏ですわ。】
シャーリーの言葉に皆写真に釘付けになる。
その写真が意味するのは恐らくディーノと薫が異母兄妹だということ。
【にわかには信じがたいな。】
【私の方で少し調べさせてもらいました。】
【アシュフォード家御用達の調査会社?】
【そんなところです。】
【で、結果は?】
【結城氏とディーノの母、ヴァネッサ・タランティーノが交際して、且つ男女の関係であたことは間違いありません。】
【じゃ、カオルの父親はディーノの母親を捨てたってことか?】
【いえ、どうもそうではないようです。】
【どういうことですか?】
【カオルの母方の祖父・佐久間幸盛の策略だったと…。
当時、結城氏が務めていたのはその佐久間が経営する貿易会社。
社長である佐久間は彼を婿養子にして後を継がせようと目論んでいた。】
【そのためにはディーノの母・ヴァネッサは邪魔だったてことか…。】
【そうなりますね。
だから金と権力で黙らせたようです。
おまけにカオルの父親も脅しつけてね…。】
【最低…。】
【勿論、結城氏も黙っていなかった。
取引相手の一人だったルーカス・ランディーニ氏にヴァネッサを匿ってもらったようよ。
まぁ、最終的には彼の妻になることで佐久間の手から守ることができたようです。】
【じゃ、それで話しは終わりってことか?】
【いえ、むしろその後の方が酷かったようです。】
【どういうことだ?】
【カオルの母親ですよ。
彼女が相当あくどい嫌がらせをしたようなのです。】
【それは仕方ないかもしれんな。
カオルの母親は親に無理やり結婚させられたと聞いている。】
【ええ、そうです。
自分のやりたかったことを娘のカオルに押し付けると同時に夫の子供を産んだ異国の女を許せなかったようです。】
【ねぇ、それってどんな仕打ちだったの?】
【それほど難しいことではないですよ。
自分たち夫婦の仲睦まじい写真や結城氏がカオルを可愛がっている写真を送りつけただけです。】
【ようは精神的に追い詰めたと?】
【そのようです。 結果、ディーノの母・ヴァネッサはどんどん鬱状態になりましたから…。】
【その結果が7年前の…。】
【そうです。】
【7年前?】
【はい、7年前の夏、ヴァネッサは亡くなりました。
精神を病んだ彼女は徐々に肉体をも蝕み、痩せ細っていき、最期は骨と皮という状態でした。】
【【【…………。】】】
【ディーノとルーカス氏はヴァネッサの死を受け入れられず、酷い有様でした。
見かねた私がカオルと一緒に彼女の遺品の整理をすることにしたのです。
でも、それがよくなかった…。】
【シャーリー?】
【クレアもカルロスも知っているでしょ? カオルの適応力の高さを…。】
【あれはすごいよな。】
【カオルのそれは多岐にわたります。 その尤もたるのが、言語理解力。】
【そうね。 確か、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語…。】
【そして、イタリア語…。 カオルはそのすべてをマスターしています。
さらに日常会話程度でしたら、ロシア語、ギリシャ語、トルコ語もできます。】
伊達は驚愕する。
確かに薫の順応能力の高さは分かっていた。
彼女は自分の講義を受けるたびにその知識を自分のものとしていく。
気づけば、その成績は同学年の中では飛び抜けて優秀であった。
それはベッドの上でも同じで、一晩ごとに自分との行為に馴染んでいった。
だからこそ、この短期間に自ら快楽を強請るようになったのだろう。
そう理解していた。
まさかその能力がこれほどまでだったとは思いもしなかったが…。
【あの時はその言語理解力が仇になってしまった。】
【どういうこと?】
【カオルは遺品整理で見つけてしまったんです。
その写真とヴァネッサの日記を…。】
【日記?】
【どうやら、結城氏と別れたころから書き綴っていたものだったようです。
数冊ありましたから。】
【シャーリー、それって…。】
【ええ、私も読みましたが、それは酷い内容でした。
そして、どのようにして病んでいったのかが事細かく記されていました。
それはカオルにとって自分の家族が如何に歪なものかを知るに十分な内容だったのです。
例の一件が起きたのはその直後でした。】
【じゃあ、カオルがおかしくなったのって…。】
【ええ、引き金になったのはヴァネッサの日記が原因です。
もっとも、カオルはそのことを一切口にしませんでしたけどね。】
【何故?】
【日記には結城氏への変わらぬ愛、ルーカス氏への感謝、そしてディーノへの謝罪。
それらも記されていました。
だから、カオルは彼らの名誉のために日記のことを口外しなかったのです。】
【なぁ、ディーノはカオルに何を話すつもりなのんだ?】
【恐らく、母親と決着をつけるように促すつもりなんでしょう。】
【和解しろと?】
【それはカオル自身が決めること。
ただ、後悔しない道を選ぶようにとは言うでしょうね。】
【どうして?】
【ディーノはヴァネッサを切り捨ててしまったから…。】
【切り捨てた?】
【そうです。 ディーノは心が壊れていく母を直視できず彼女から離れたのです。
10年前、彼はサッカーで成功を掴みつつあり、多くのクラブチームからオファーが届くようになりました。
その中から現在の所属チーム・ユベントスを選んだのです。
ヴァネッサと距離を取る為に。】
【後悔、してるのか?】
【そうですね。 日記を読んでしまいましたから…。
何より、自身が親になって初めてわかることもあったみたいなのです。】
【なるほどねぇ。 じゃ、やっぱあとはカオル次第かぁ。】
【テルオミ、あなたはどうしますか?】
【俺?】
【あなたはカオルの全てを受け止めることができますか?】
【愚問だな。 俺が薫の手を離すことはない。】
【そうですか。 それを聞いて安心しました。】
【それにしても…。】
【どうかしましたか?】
【新婚早々えらい選択を迫られるとはな。】
【え?】
【おい、テルオミ。 今なんて…。】
【そういえば言ってなかったか…。 俺と薫は今日入籍したんだ。】
【【【えぇぇぇぇ!!!】】】
伊達の告白に一同は尋常じゃない驚き方をした。
それ故、告白した伊達自身が後ずさるほどだった。
【もう、何で言わないのよ!!】
【いや、言う前に君が根掘り葉掘り俺との馴れ初めを聞こうとしたから。】
【私のせい?】
【我々全員でしょう。 私も悪乗りしてましたから…。】
【どうするよ?】
するとそこへバースデーケーキが運ばれてきた。
しばしの沈黙の後、カルロスが何か思いついたように顔を上げる。
その顔は悪戯っ子が悪さを思いついた時のそれだった。
****************************************************************
席を立った薫はテラスの向こうにある庭に出てきた。
既に日が暮れているため、そこは闇に包まれ誰もいなかった。
先程か頬が熱い。
だから、吹き抜ける夜風は心地よかった。
[カオル…。]
[ディーノ? どうしたの? みんなは?]
[テルオミが相手をしてるはずだ。]
[じゃ、戻らなきゃ。]
カオルは中に戻ろうとしてディーノの横をすり抜ける。
が、すれ違いざま腕を取られ身動きができなくなる。
[その前にカオルに話がある。]
[ディーノ?]
[カオルはこのまま家族のことは有耶無耶にするのか?]
[どうしたの? 急に…。]
[俺は去年のクリスマスに子供が生まれた。]
[だから?]
[親になってみて初めてわかることもあるんだ。]
[どういう意味?]
[カオルはきちんとお母さんに向き合うべきだ。]
[何を今更…。]
[難しく考えなくていいんだ。
ただ、自分の思いをぶつけるだけでいい。 カオルはまだ間に合うから…。]
[ディーノ?]
[俺は逃げて切り捨ててしまった。]
[後悔してるの?]
[そうだね。 後悔している。
俺は何も言わずに母さんと話をしなくなって切り捨ててしまったから。
いなくなった後にその人の心の内を知るのは辛いことだ。]
[そうね。]
[子供ができて気づいたこともあったりして、余計話をしなかったことを後悔した。
そんな後悔をカオルにはしてもらいたくない。]
[私にできるかなぁ?]
[大丈夫。 今のカオルにはテルオミがいる。
彼はカオルのことを支えたいからこの指輪を贈ったんだろ?]
ディーノはカオルの左手を取り、薬指の指輪を撫でる。
その大きな手は温かく、優しかった。
[そうだね。 私には輝臣さんがいる。 母さんとはきちんと話をつけるわ。]
[そうした方がいい。]
[うん…。]
[そろそろ戻ろう。 クレアが特大のバースデーケーキを用意してるはずだ。]
[変なノリで出してこないといいんだけど…。]
****************************************************************
【……………………。】
薫の予感は的中した。
テーブルの上には尋常ではない大きさのバースデーケーキが鎮座していたのだ。
おまけにカルロスがなぜかニヤニヤしている。
もはや嫌な予感しかしない。
【カルロス、その手に持っているのは何?】
【スプーンだけど。】
【それは分かる。 なんで、この場面でそんな大きなスプーンが出てくるわけ?】
【なんでってここでファーストバイトやってほしいから。】
薫は右拳をギュッと握りしめた後、カルロスの頬を殴り飛ばす。
【なんで、そんな羞恥プレイをしなきゃならない。】
【そんなの決まってるでしょ。】
【クレア?】
【テルオミから聞いたわよ。 あなたたち結婚したんですって?】
【だったら何?】
【どうせ、式とか挙げる気ないんでしょ?】
【それは…。】
【一つくらいは思い出、残しなよ。
とりあえず、私からのお詫びだと思って。】
そこまで言われては薫も断ることはできなかった。
とはいえ、カルロスのにやけた顔だけは許せなかったが。
それでも伊達の恥ずかしいそうな嬉しそうな顔を見れて得した気分だった。
【それじゃあ、まずはテルオミからね。】
クレアの掛け声で伊達がケーキを一口スプーンに乗せ薫の口に運ぶ。
流石クレアが特注したものだけに味は悪くない。
で、今度は薫から伊達に同じことをする。
伊達は嬉しそうにそれを頬張ってる。
正直、薫の方が恥ずかしい。
おまけにその様子はクレアがしっかりと写真に収めていたので恥ずかしさは倍増である。
【あ、これ、フォトブックに仕上げとくから。】
【いらんわ!!】
【またまた、恥ずかしがっちゃってぇ。】
【うるさい!】
人生最大ともいえる羞恥プレイに晒された薫だったが、伊達の笑顔にこれはこれでいいかと思ってしまう。
ディーノとシャーリーも楽しそうにしてる。
こうなるとクレアとカルロスの好きにさせるしかない。
そう思い諦めることにした薫だった。
結局その後、みんなで美味しくケーキをいただき皆の泊まってるホテルまで戻った。
【今日はごめんね。 二人の記念だったのに付き合わせて。】
【いいよ。 輝臣さんもいいって言ってくれたし。】
【そう、なら良かった。】
【みんなも、明日はいろんなとこ回って日本を楽しんでね。】
【おう、そのつもりだ。】
【私は片づけなきゃならないことあるから付き合えないけど楽しんでね。】
【カオル…。 無理はしないで。】
【大丈夫よ、シャーリー。 輝臣さんが一緒だから。】
【そう、あなたがそう言うんなら大丈夫ね。】
【うん。 ディーノもありがとう。 ちゃんと向き合うね。】
【ああ、後悔のないのようにな。】
【じゃ、みんなおやすみなさい。】
そうして、薫はクレアたちと別れた。
「俺たちも行くか…。」
「そうですね。」
伊達に促されて薫も歩き出す。
その手はしっかりと握られていた。
ふと気づくと、向かっているのが駅ではないことに気付いた。
「輝臣さん?」
「今日はホテルに泊まろう。 こないだほどじゃないけど取ったから。」
「何で…。」
「シャーリーから聞いた。 7年前の話…。」
「そう、ですか…。」
「明日、ご両親に会いに行こう。」
「え?」
「早い方がいい。 なにより、籍を入れたからな。」
「そっか、そうだよね…。」
薫は伊達に力を貰った気がした。
その手は大きく温かい。
きっとこの先、この手を離すことはない。
そう思うと心は晴れやかになる。
薫はその手を握り返し、決意を新たにするのだった。
脳内変換でよろしくお願いします。
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第7話
薫は4人を父・猛の行きつけである蕎麦屋に連れて行った。
赤ん坊がいるので奥の個室に通してもらう。
といっても、アランとエリカはすやすやと眠っているので周りが気にするようなことはなかった。
カルロスは初めて食べたようでかなり興奮気味。
むしろ、彼を抑える方が大変だった。
その後、クレアが手配したホテルまで送った。
【カオル、良かったらディナーしない?】
【え?】
【今日はカオルの誕生日でしょ?】
【みんなでお祝いしたいの。 勿論、彼と予定がなければの話よ。】
【輝臣さんに聞いてからでもいい?】
【ええ、構わないわ。】
薫は伊達に相談した。
意外なことに伊達からは二つ返事で了承される。
ただし、自分も参加したい旨を伝えてほしいと言われた。
【輝臣さんも一緒でいいなら…。】
【勿論オッケーよ。】
【分かった。 あ、ドレスコードとかある?】
【大丈夫。 カジュアルなお店にしてるから。】
【じゃ、車を置いてくるから一旦帰るね。】
【気を付けて。 またあとで。】
薫と伊達は四人と別れ、車を置きに帰ることにした。
「で、待ち合わせは?」
「夜7時にホテルの前でって。」
「そうか…。」
「輝臣さん、ほんとによかったの?」
「何が?」
「その、今日は特別な日になったから…。」
「とはいえ、久しぶり会った友人なんだろ?」
「そうだけど…。」
「なかなか会えないのは分かったから、今夜は彼らに付き合うよ。
俺なら薫とはいつでも好きなとこに行けるしな。」
「もう、輝臣さんったら…。」
「それに…。」
「それに?」
「いや、何でもない。」
伊達はそこで話を切った。
薫はその態度に胸騒ぎを覚えたが、敢えてそれ以上話はしなかった。
それは今がその時ではないと感じたからだった。
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約束の時間に二人で向かうと4人は既にロビーで待っていた。
【ごめん、もしかして待たせた?】
【そんなことないわ。】
【それなら良かった。】
【双子を連れて行ってもいいか店に確認するためにフロントと掛け合ってたのよ。】
【そうだったんだ】
【さて、迎えの車も来たことだし、いきましょうか。】
正面玄関に横付けされていたワンボックスカーに乗り、目的地へと向かう。
クレアが予約していたのはログハウス風のレストランだった。
アットホームな雰囲気のそこはリラックスして過ごせる場所と言えた。
【では、カオルの22回目の誕生日を祝って…。】
【乾杯!!】
カルロスの音頭でディナーは始まった。
ここで初めて薫は自身の左手の薬指の指輪について追及される羽目になる。
尤もクレアは始めからそのつもりだったようだが。
相変わらず人が悪いと薫は思った。
【馴れ初めとか聞いてもいいかしら?】
【ノーコメント!!】
【もう、恥ずかしがって…。】
【クレアの意地悪!】
【ははは、カオルが言わないんだったらテルオミに聞いたらどうだ?】
【輝臣さん、答えなくていいですからね!】
【別に話しても構わないが…。】
【テルオミ、ぜひ教えてよ。】
【もう、やめてってば!!】
【ねぇ、テルオミが例の彼なのかぐらいは教えてよ。】
【うぅぅぅぅ。】
【言葉に詰まるってことはやっぱりそうなんだ。】
【クレア、どういうことだ?】
【カオルがサッカー辞めてまで追いかけた彼がいるのよ。】
【クレア、お願いその話は…。】
【あら、それは初耳ですわね。】
【シャーリーまで加わらないで!!】
自分が言ってしまったことがどれほど恥ずかしいことかを思い知らされる羽目になった薫。
とうとう、耐えきれなくなって席を立ってしまう。
クレアもカルロスも面白そうにその姿を見送った。
[シャーリー、俺も少し席を外す。]
[ディーノ、カオルと話してくるの?]
[ああ、今のカオルならわかってくれるはずだ。]
[そうね。 こっちのことは私に任せて。]
[頼む…。]
ディーノはシャーリーにだけ耳打ちしてそっとその場を離れた。
ディーノは敢えて薫の後を追うようなことはせず、遠回りをして彼女のもとへと向かった。
【あれ? ディーノは?】
【少し飲み過ぎたと言って夜風に当たりに行きましたわ。】
【とか何とか言って、カオルを口説きに行ったんじゃないのか?】
【まさか。】
【カルロス、いくらなんでもそれは言い過ぎよ。】
【どうだか。 ヤツはずっとカオルのこと見てたんだ。
テルオミ、さっさと追いかけねぇと持っていかれちまうぞ。】
【それは…。】
【それは決してありません。】
【シャーリー?】
【プロフェッサー、とお呼びしてもよろしいですか?】
【いずれはそうなるつもりだが、まだ准教授だ。
名前で呼んでくれて構わない。】
【では、テルオミ。 あなたの専門はなんですか?】
【歴史だ。 主に日本文化史を研究している。】
【では、文学にも興味はおありで?】
【多少のことならな…。】
【では、ドクター森の『舞姫』はご存知?】
【ああ、勿論だ。】
【カオルの父親はその主人公に酷似してるのです。】
シャーリーのその言葉に伊達は彼女が何を言いたいのか察した。
彼女は静かに頷き、伊達の考えが間違いないことを示した。
【なぁ、『舞姫』ってなんだ?】
【医師免許を持つ小説家が書いた短編だったかな?】
【そうです。 森鴎外が自身の経験を踏まえて書いた小説です。】
【で、どんな話なんだ?】
【医学を志す日本人青年が留学先のドイツで一人の女性と出会って恋をする。
二人の交際は順調かと思われたが、青年の友人からもたらされた地位と名誉。
青年は彼女を捨て、地位と名誉を取り帰国する。
確か、そんな話だったと記憶してるわ。】
【うわっ、なんだよそれ? 完全に男のエゴじゃないか。】
【その通り。 男の身勝手だ。
しかも、相手の女性は自分の子を身籠ってたというのに。】
【最低。】
【ねぇ、シャーリーホントなの?
カオルの父親がそんな真似をしたっていうの?】
そう問いただすクレアの前に、色褪せセピア色になった一枚の写真を差し出した。
【これは?】
【ディーノの母親と当時付き合っていた男性の写真です。】
【日本人?】
【あぁ、やっぱりそうなのね…。】
【クレア?】
【シャーリー、私にはとても信じられないわ。】
【えぇ、私も信じたくはないです。
ですが、彼が貿易会社に勤めてて、ヴェネツィアに赴任してたのは事実です。】
【そうね、今はO.T.C.ホールディングの専務だしね。】
【O.T.C.ホールディング? ま、まさか、この男性は…。】
【そうです。 薫の父親、結城猛氏ですわ。】
シャーリーの言葉に皆写真に釘付けになる。
その写真が意味するのは恐らくディーノと薫が異母兄妹だということ。
【にわかには信じがたいな。】
【私の方で少し調べさせてもらいました。】
【アシュフォード家御用達の調査会社?】
【そんなところです。】
【で、結果は?】
【結城氏とディーノの母、ヴァネッサ・タランティーノが交際して、且つ男女の関係であたことは間違いありません。】
【じゃ、カオルの父親はディーノの母親を捨てたってことか?】
【いえ、どうもそうではないようです。】
【どういうことですか?】
【カオルの母方の祖父・佐久間幸盛の策略だったと…。
当時、結城氏が務めていたのはその佐久間が経営する貿易会社。
社長である佐久間は彼を婿養子にして後を継がせようと目論んでいた。】
【そのためにはディーノの母・ヴァネッサは邪魔だったてことか…。】
【そうなりますね。
だから金と権力で黙らせたようです。
おまけにカオルの父親も脅しつけてね…。】
【最低…。】
【勿論、結城氏も黙っていなかった。
取引相手の一人だったルーカス・ランディーニ氏にヴァネッサを匿ってもらったようよ。
まぁ、最終的には彼の妻になることで佐久間の手から守ることができたようです。】
【じゃ、それで話しは終わりってことか?】
【いえ、むしろその後の方が酷かったようです。】
【どういうことだ?】
【カオルの母親ですよ。
彼女が相当あくどい嫌がらせをしたようなのです。】
【それは仕方ないかもしれんな。
カオルの母親は親に無理やり結婚させられたと聞いている。】
【ええ、そうです。
自分のやりたかったことを娘のカオルに押し付けると同時に夫の子供を産んだ異国の女を許せなかったようです。】
【ねぇ、それってどんな仕打ちだったの?】
【それほど難しいことではないですよ。
自分たち夫婦の仲睦まじい写真や結城氏がカオルを可愛がっている写真を送りつけただけです。】
【ようは精神的に追い詰めたと?】
【そのようです。 結果、ディーノの母・ヴァネッサはどんどん鬱状態になりましたから…。】
【その結果が7年前の…。】
【そうです。】
【7年前?】
【はい、7年前の夏、ヴァネッサは亡くなりました。
精神を病んだ彼女は徐々に肉体をも蝕み、痩せ細っていき、最期は骨と皮という状態でした。】
【【【…………。】】】
【ディーノとルーカス氏はヴァネッサの死を受け入れられず、酷い有様でした。
見かねた私がカオルと一緒に彼女の遺品の整理をすることにしたのです。
でも、それがよくなかった…。】
【シャーリー?】
【クレアもカルロスも知っているでしょ? カオルの適応力の高さを…。】
【あれはすごいよな。】
【カオルのそれは多岐にわたります。 その尤もたるのが、言語理解力。】
【そうね。 確か、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語…。】
【そして、イタリア語…。 カオルはそのすべてをマスターしています。
さらに日常会話程度でしたら、ロシア語、ギリシャ語、トルコ語もできます。】
伊達は驚愕する。
確かに薫の順応能力の高さは分かっていた。
彼女は自分の講義を受けるたびにその知識を自分のものとしていく。
気づけば、その成績は同学年の中では飛び抜けて優秀であった。
それはベッドの上でも同じで、一晩ごとに自分との行為に馴染んでいった。
だからこそ、この短期間に自ら快楽を強請るようになったのだろう。
そう理解していた。
まさかその能力がこれほどまでだったとは思いもしなかったが…。
【あの時はその言語理解力が仇になってしまった。】
【どういうこと?】
【カオルは遺品整理で見つけてしまったんです。
その写真とヴァネッサの日記を…。】
【日記?】
【どうやら、結城氏と別れたころから書き綴っていたものだったようです。
数冊ありましたから。】
【シャーリー、それって…。】
【ええ、私も読みましたが、それは酷い内容でした。
そして、どのようにして病んでいったのかが事細かく記されていました。
それはカオルにとって自分の家族が如何に歪なものかを知るに十分な内容だったのです。
例の一件が起きたのはその直後でした。】
【じゃあ、カオルがおかしくなったのって…。】
【ええ、引き金になったのはヴァネッサの日記が原因です。
もっとも、カオルはそのことを一切口にしませんでしたけどね。】
【何故?】
【日記には結城氏への変わらぬ愛、ルーカス氏への感謝、そしてディーノへの謝罪。
それらも記されていました。
だから、カオルは彼らの名誉のために日記のことを口外しなかったのです。】
【なぁ、ディーノはカオルに何を話すつもりなのんだ?】
【恐らく、母親と決着をつけるように促すつもりなんでしょう。】
【和解しろと?】
【それはカオル自身が決めること。
ただ、後悔しない道を選ぶようにとは言うでしょうね。】
【どうして?】
【ディーノはヴァネッサを切り捨ててしまったから…。】
【切り捨てた?】
【そうです。 ディーノは心が壊れていく母を直視できず彼女から離れたのです。
10年前、彼はサッカーで成功を掴みつつあり、多くのクラブチームからオファーが届くようになりました。
その中から現在の所属チーム・ユベントスを選んだのです。
ヴァネッサと距離を取る為に。】
【後悔、してるのか?】
【そうですね。 日記を読んでしまいましたから…。
何より、自身が親になって初めてわかることもあったみたいなのです。】
【なるほどねぇ。 じゃ、やっぱあとはカオル次第かぁ。】
【テルオミ、あなたはどうしますか?】
【俺?】
【あなたはカオルの全てを受け止めることができますか?】
【愚問だな。 俺が薫の手を離すことはない。】
【そうですか。 それを聞いて安心しました。】
【それにしても…。】
【どうかしましたか?】
【新婚早々えらい選択を迫られるとはな。】
【え?】
【おい、テルオミ。 今なんて…。】
【そういえば言ってなかったか…。 俺と薫は今日入籍したんだ。】
【【【えぇぇぇぇ!!!】】】
伊達の告白に一同は尋常じゃない驚き方をした。
それ故、告白した伊達自身が後ずさるほどだった。
【もう、何で言わないのよ!!】
【いや、言う前に君が根掘り葉掘り俺との馴れ初めを聞こうとしたから。】
【私のせい?】
【我々全員でしょう。 私も悪乗りしてましたから…。】
【どうするよ?】
するとそこへバースデーケーキが運ばれてきた。
しばしの沈黙の後、カルロスが何か思いついたように顔を上げる。
その顔は悪戯っ子が悪さを思いついた時のそれだった。
****************************************************************
席を立った薫はテラスの向こうにある庭に出てきた。
既に日が暮れているため、そこは闇に包まれ誰もいなかった。
先程か頬が熱い。
だから、吹き抜ける夜風は心地よかった。
[カオル…。]
[ディーノ? どうしたの? みんなは?]
[テルオミが相手をしてるはずだ。]
[じゃ、戻らなきゃ。]
カオルは中に戻ろうとしてディーノの横をすり抜ける。
が、すれ違いざま腕を取られ身動きができなくなる。
[その前にカオルに話がある。]
[ディーノ?]
[カオルはこのまま家族のことは有耶無耶にするのか?]
[どうしたの? 急に…。]
[俺は去年のクリスマスに子供が生まれた。]
[だから?]
[親になってみて初めてわかることもあるんだ。]
[どういう意味?]
[カオルはきちんとお母さんに向き合うべきだ。]
[何を今更…。]
[難しく考えなくていいんだ。
ただ、自分の思いをぶつけるだけでいい。 カオルはまだ間に合うから…。]
[ディーノ?]
[俺は逃げて切り捨ててしまった。]
[後悔してるの?]
[そうだね。 後悔している。
俺は何も言わずに母さんと話をしなくなって切り捨ててしまったから。
いなくなった後にその人の心の内を知るのは辛いことだ。]
[そうね。]
[子供ができて気づいたこともあったりして、余計話をしなかったことを後悔した。
そんな後悔をカオルにはしてもらいたくない。]
[私にできるかなぁ?]
[大丈夫。 今のカオルにはテルオミがいる。
彼はカオルのことを支えたいからこの指輪を贈ったんだろ?]
ディーノはカオルの左手を取り、薬指の指輪を撫でる。
その大きな手は温かく、優しかった。
[そうだね。 私には輝臣さんがいる。 母さんとはきちんと話をつけるわ。]
[そうした方がいい。]
[うん…。]
[そろそろ戻ろう。 クレアが特大のバースデーケーキを用意してるはずだ。]
[変なノリで出してこないといいんだけど…。]
****************************************************************
【……………………。】
薫の予感は的中した。
テーブルの上には尋常ではない大きさのバースデーケーキが鎮座していたのだ。
おまけにカルロスがなぜかニヤニヤしている。
もはや嫌な予感しかしない。
【カルロス、その手に持っているのは何?】
【スプーンだけど。】
【それは分かる。 なんで、この場面でそんな大きなスプーンが出てくるわけ?】
【なんでってここでファーストバイトやってほしいから。】
薫は右拳をギュッと握りしめた後、カルロスの頬を殴り飛ばす。
【なんで、そんな羞恥プレイをしなきゃならない。】
【そんなの決まってるでしょ。】
【クレア?】
【テルオミから聞いたわよ。 あなたたち結婚したんですって?】
【だったら何?】
【どうせ、式とか挙げる気ないんでしょ?】
【それは…。】
【一つくらいは思い出、残しなよ。
とりあえず、私からのお詫びだと思って。】
そこまで言われては薫も断ることはできなかった。
とはいえ、カルロスのにやけた顔だけは許せなかったが。
それでも伊達の恥ずかしいそうな嬉しそうな顔を見れて得した気分だった。
【それじゃあ、まずはテルオミからね。】
クレアの掛け声で伊達がケーキを一口スプーンに乗せ薫の口に運ぶ。
流石クレアが特注したものだけに味は悪くない。
で、今度は薫から伊達に同じことをする。
伊達は嬉しそうにそれを頬張ってる。
正直、薫の方が恥ずかしい。
おまけにその様子はクレアがしっかりと写真に収めていたので恥ずかしさは倍増である。
【あ、これ、フォトブックに仕上げとくから。】
【いらんわ!!】
【またまた、恥ずかしがっちゃってぇ。】
【うるさい!】
人生最大ともいえる羞恥プレイに晒された薫だったが、伊達の笑顔にこれはこれでいいかと思ってしまう。
ディーノとシャーリーも楽しそうにしてる。
こうなるとクレアとカルロスの好きにさせるしかない。
そう思い諦めることにした薫だった。
結局その後、みんなで美味しくケーキをいただき皆の泊まってるホテルまで戻った。
【今日はごめんね。 二人の記念だったのに付き合わせて。】
【いいよ。 輝臣さんもいいって言ってくれたし。】
【そう、なら良かった。】
【みんなも、明日はいろんなとこ回って日本を楽しんでね。】
【おう、そのつもりだ。】
【私は片づけなきゃならないことあるから付き合えないけど楽しんでね。】
【カオル…。 無理はしないで。】
【大丈夫よ、シャーリー。 輝臣さんが一緒だから。】
【そう、あなたがそう言うんなら大丈夫ね。】
【うん。 ディーノもありがとう。 ちゃんと向き合うね。】
【ああ、後悔のないのようにな。】
【じゃ、みんなおやすみなさい。】
そうして、薫はクレアたちと別れた。
「俺たちも行くか…。」
「そうですね。」
伊達に促されて薫も歩き出す。
その手はしっかりと握られていた。
ふと気づくと、向かっているのが駅ではないことに気付いた。
「輝臣さん?」
「今日はホテルに泊まろう。 こないだほどじゃないけど取ったから。」
「何で…。」
「シャーリーから聞いた。 7年前の話…。」
「そう、ですか…。」
「明日、ご両親に会いに行こう。」
「え?」
「早い方がいい。 なにより、籍を入れたからな。」
「そっか、そうだよね…。」
薫は伊達に力を貰った気がした。
その手は大きく温かい。
きっとこの先、この手を離すことはない。
そう思うと心は晴れやかになる。
薫はその手を握り返し、決意を新たにするのだった。
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