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2話
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しおりを挟む何度も、同じ夢を見る。
床に広がる三人分の血液と、その上に折り重なっている父、母、妹。
凄惨な光景を前に、ただ茫然と立ち尽くしている自分自身。
何が起きたのかさえ分からない。もう虫の息すらもない家族に駆け寄ろうにも、体が動かない。
そんなジオンの前で――奴は。
なおも広がり続ける赤を踏みながら、恍惚とした笑みを浮かべ、姿を消した。
飛び起きるように目を覚ます。代り映えのしない自室を見渡し、夢だと気づいて再びベッドに身を委ねた。草木も眠る丑三つ時、周りの静けさも相まって乱れた呼吸と鼓動がいやにうるさく響くようだ。背中に汗をかいている。シャワーを浴びに行こうにも動く気力がない。仕方なく寝なおそうにも――あまりに夢見が悪すぎた。
否、熟睡などできたことはなかった。
何度も、同じ夢を見る。あのときから、ずっと。
まるで記憶に刷り込むように。
絶望を、虚しさを、悔しさを、悲しみを、怒りを、心に刻むかのように。
家族の仇を打つという役目を、忘れないように。
何度も、同じ悪夢を見る。
あのときからずっと。
奴を――家族を殺したあいつを、探している。
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