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3話
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しおりを挟む「アルエさんとイリアさんって、どこで知り合ったんですか?」
ある日の昼下がり。カルマが唐突に口を開いた。
アルエ、イリア、ジオンと一緒に、リビングでくつろいでいたときのことである。
ちなみに、一同がそれぞれ何をしていたかというと。
ジオンは引っ越しの途中だった。
家主に同居の許可をもらったあと、アイリスに協力をもらい荷物を屋敷にすべて運び出した。元々の自宅に来てもらい、そこから直接新しい部屋へ適当に荷物を『瞬間移動』させるという方法だ。
後片付けまで手伝ってもらわなかったのはカルマがいるからだ。
戦闘した後、仕事を終えたアイリスは彼が目を覚ます前に帰宅した。ゆえに、ふたりの間に生じたわだかまりは溶けていない状態なのだ。鉢合わせた際に再び戦闘が始まる――下手したら殺し合いが始まってしまう恐れだってある。
だから、荷物の移動だけしてもらってすぐに帰ってもらった。ジオンはその荷解き等の作業をしていたのである。
アルエはアイリスとの話し合いを元に、原稿の修正をしていた。
結局、ふたりの意見を足して二で割った案で妥協することになったのだが、その結果、修正箇所が膨大となってしまった。それに加え、一部話の展開から変えなければならない部分が出てきたのだ。執筆のために食事を抜いたのはもちろん、今度は睡眠時間まで削ろうとしていた。見かねたジオンがアルエに休憩させようと半ば無理やりリビングに連れてきたのである。
イリアは仕事が休みで、カルマと一緒にリビングのソファでくつろいで過ごしていた。そこで一同が揃ったのだ。
「魔法学校だ」
昼寝という仮眠から目覚め、ジオンの淹れた紅茶をすすっていたアルエが答える。
「私とイリアは同級生なのだよ、実は」
「え! そうなんですか!?」
カルマは目を丸めながらアルエとイリアを交互に見比べた。
「あれ? ジオンさんは違うんですか?」
「こいつは私たちより歳上よ。学校だって別のところだし」
イリアは涼しい顔で答えると、紅茶を一口啜る。事前にジオンの情報を見ていた彼女だからこそできたことである。とはいえ「なんでお前が答えるんだよ」とジオンは呆れ顔を浮かべた。
「つーか、歳上だって知ってたなら敬語くらい使えよな」
「あら、使ってほしいの?」
「……いや、やっぱいい。なんか、今更だし」
逆にこのタイミングでイリアが敬語を使い始めたら、ジオンは気持ち悪がることだろう。散々いがみ合ってきた仲なのだ。最早タメ口がデフォルトになってきていると言っても過言ではない。
「それじゃあ、魔法学校にいたときから、イリアさんは『使役』されてたんですか?」
カルマが質問を重ねると、アルエはにやりと口角を上げる。
「イリア。語ってあげたらどうだい? 私たちの、出会いの話を」
意表を突かれ、イリアは自分を指差し「私?」と首を傾げた。
「あぁ。ぜひとも君の視点から聞きたい。あの出会いが、どう映っていたのか」
「僕も聞きたいです!」
カルマの目が輝く。イリアは肩をすくめると、はっきりと言い放った。
「絶対にイ・ヤ」
「おっと?」
その回答が返ってくると思わなかった、とでも言いたげな反応を示すアルエと「えー! なんでですか!?」と残念そうなカルマに、彼女は続ける。
「なんで私が語らないといけないのよ。あんたたちに聞かせてどうにかなるわけ?」
「ならば仕方がない! 私が直々に語ろうではないか!」
アルエは唐突に立ち上がり、煌々と瞳を輝かせた。待ってました! と手を叩くカルマと、お前が語りたいだけかよ、とソファのひじ掛けに頬杖をつくジオン。反応はまちまちだ。
「あれは我々が最上級学生だったときのことだ――」
イリアは腕と足を組み、仰々しい口調で始まった導入を耳に入れながらまた一口、紅茶を啜った。
その一方で、思い出す。
自身の半生と、アルエ・クロームとの出会いを。
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