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第二章 異世界に飛ばされて
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それは、ある日曜日の朝だった。
「どうしよ…。なんか、変なのかかっちゃった」
ひどく不気味な怪奇現象でも目の当たりにしたかのような表情をしたケンさんの言葉に、私は驚いて声を上げた。
「えっ…?かかったって、あの罠にでしょ?ネズミじゃなかったの?」
我が家の庭には畑があり、季節ごとに何種類かの作物を育てている。しかし近頃、我が家の庭で育てているイチゴが食い荒らされるということが続いた。イチゴは虫や鳥に狙われやすい。だからこそマルチシートと呼ばれる園芸用の黒いシートを敷いたり、目の細かいネットを掛けたりと他の野菜よりも対策をしていたのにもかかわらずだ。
今年は暖かいためか豊作になりそうで、収穫間近のイチゴがたくさんあった。しかし何者かがネットを器用にかいくぐり、イチゴをごっそり食べてしまった。しかもヘタは残され、無造作に捨ててあった。ちなみに現在収穫時期を迎えているスナップエンドウやアスパラなどは無事である。イチゴ専門の泥棒がいる。しかも大食らいで、それなりに器用そうな泥棒が。
私は驚くと同時に腹を立てた。イチゴの苗を買ってきて、地植えまでの作業のほとんどを担ってくれたのはケンさんだ。わざわざ言いはしなかったけれど、イチゴが大好きな私を喜ばせたくてそうしてくれたのは明らかだった。私はとても嬉しかったし、ケンさんとイチゴを食べるのを楽しみに毎日様子を見たり水をやったりしていたのに。しかし、ただ怒っていても仕方がない。これ以上好き勝手させないために、対策を取らなくてはいけない。
だが、ネットでの囲いを厳重にしても、超音波の発生する獣よけを設置しても意味はなかった。ある程度色づいたイチゴはすべて食べられてしまう。おそらくネズミだろうとケンさんは言い、二日前ついに吊り餌式の箱罠を設置したばかりだった。
「ネズミじゃなかった」
ケンさんはそう断言した。
「もっとデカくて、白い。見たこともないやつだった」
「白い?…ハクビシンでもないの?」
「ハクビシンじゃない。なんか、もっと丸っこいんだよ。あいつが何なのかはっきりしないと処分方法も分からんし、後で大脇さんに聞いてみる」
大脇さんというのは近所に住んでいる猟師さんで、畑に罠を設置した時に相談に乗ってくれた人だ。普段はよくガレージで猪用の大型罠を作っているのを見かける。私はうなずき、ケンさんに言った。
「どんなのか、私も見たい。見てくるね」
私がそう言うことを見越していたのだろう。ケンさんはちょっと笑った。
「一緒に行くよ」
私たちは勝手口から外に出てウッドデッキを通り、一段低い場所にある庭に降りるため木でできた階段を降りていった。
「どうしよ…。なんか、変なのかかっちゃった」
ひどく不気味な怪奇現象でも目の当たりにしたかのような表情をしたケンさんの言葉に、私は驚いて声を上げた。
「えっ…?かかったって、あの罠にでしょ?ネズミじゃなかったの?」
我が家の庭には畑があり、季節ごとに何種類かの作物を育てている。しかし近頃、我が家の庭で育てているイチゴが食い荒らされるということが続いた。イチゴは虫や鳥に狙われやすい。だからこそマルチシートと呼ばれる園芸用の黒いシートを敷いたり、目の細かいネットを掛けたりと他の野菜よりも対策をしていたのにもかかわらずだ。
今年は暖かいためか豊作になりそうで、収穫間近のイチゴがたくさんあった。しかし何者かがネットを器用にかいくぐり、イチゴをごっそり食べてしまった。しかもヘタは残され、無造作に捨ててあった。ちなみに現在収穫時期を迎えているスナップエンドウやアスパラなどは無事である。イチゴ専門の泥棒がいる。しかも大食らいで、それなりに器用そうな泥棒が。
私は驚くと同時に腹を立てた。イチゴの苗を買ってきて、地植えまでの作業のほとんどを担ってくれたのはケンさんだ。わざわざ言いはしなかったけれど、イチゴが大好きな私を喜ばせたくてそうしてくれたのは明らかだった。私はとても嬉しかったし、ケンさんとイチゴを食べるのを楽しみに毎日様子を見たり水をやったりしていたのに。しかし、ただ怒っていても仕方がない。これ以上好き勝手させないために、対策を取らなくてはいけない。
だが、ネットでの囲いを厳重にしても、超音波の発生する獣よけを設置しても意味はなかった。ある程度色づいたイチゴはすべて食べられてしまう。おそらくネズミだろうとケンさんは言い、二日前ついに吊り餌式の箱罠を設置したばかりだった。
「ネズミじゃなかった」
ケンさんはそう断言した。
「もっとデカくて、白い。見たこともないやつだった」
「白い?…ハクビシンでもないの?」
「ハクビシンじゃない。なんか、もっと丸っこいんだよ。あいつが何なのかはっきりしないと処分方法も分からんし、後で大脇さんに聞いてみる」
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「どんなのか、私も見たい。見てくるね」
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「一緒に行くよ」
私たちは勝手口から外に出てウッドデッキを通り、一段低い場所にある庭に降りるため木でできた階段を降りていった。
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