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 ロゼは目に涙を浮かべていた。
 夫も見せたことがない涙を。
 愛していた夫に蔑ろにされるようになった時にも、自分への愛はもう枯れたのだと言うことを理解した時にも、離縁を決意した時にも流さなかった涙が、今にも両の目から溢れ落ちそうだった。

 「私が悪かったことは認めますわ。ずいぶん貴方を振り回しましたし、素性を隠してわたくしの護衛兼世話係のようなことまでさせて…悪かったと思っています。…でも!」

 ロゼは涙目でキッとダリウスを睨んだ。

 「だからって、こんなことをして良い理由にはなりませんのよ。わたくしは貴方を信頼していたのに、こんなのあんまりですわ」

 「………」
 
 ダリウスはロゼをじっと見ていた。動揺しているような、興奮しているような、なんとも言えない表情で。

 「違います、貴女は分かっていない」

 「じゃあ分かるように説明してくださいませんこと?」

 棘のある声色でそう言われ、ダリウスは唇を噛んだ。
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