(完結)婚約破棄された私は、何故かパーティーに誘われます

アイララ

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だからこそ、婚約破棄をしてきた人は自滅する

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「ちょっと! 貴方、何で昔の婚約相手なんかに色目を使っているのよ!」

「少し話しているだけだ、その位はいいに決まっている。……コホン、失礼。いやぁ、王子様と知り合いだなんて流石は元婚約者、お目が高い」

今まで私に見せた事が無い表情で、猫なで声で媚びてる様子はどうにも気色悪く思えました。

今になって私の事を褒める、その態度も含めて。

「そちらから無理矢理に婚約破棄してきたのに、今になって褒められても嬉しくありませんわ」

「まぁまぁ、そう言わずに。婚約破棄の事については、本当に申し訳なく思ってますよ。
という訳で謝罪の代わりとして、二人の婚約を祝って旅行なんてどうですか?丁度、いい場所を確保したのですよ」

「ねぇ、それって私達の新婚旅行の為に用意した場所よね、何を考えてるのよ!」

「黙らんか! ここで恩を売っておけば良いと何故分からんのだ!」

「何よ! わざと婚約破棄して馬鹿にする為にケイメラと婚約したのは貴方でしょう!? 今になって彼女に媚びてくるなんて、恥ずかしいと思わない訳!?」

……婚約破棄してきた人の新たな婚約者は、ある意味ではお似合いの様です。

互いが互いに罵りあい、婚約破棄してきた人は私に、新たな婚約者はクローデル様にみっともなく媚を売り、それを周りが冷ややかな眼で見つめています。

いい加減、嫌気がさしてきた私の気持ちに気が付いたのか、クローデル様は手を取りました。

「……本当なら舞踏が終わり次第、君に話す事があったのだが……まぁいい。ケイメラ嬢、僕が送っていくよ」

「分かりました、 フェルジェロ・クローデル・コンストファン様」

「クローデルでいいよ。そっちの方が慣れているだろうし」

そうして舞踏会を途中で出ようとするのを引き留めようとし、慌てて転んだ二人を無視しながら私達は家に帰っていきました。

クローデル様の馬車で帰る途中、私は彼からどうして身分を隠していたのか聞かされました。

曰く、第三王子である自分は王位継承の道は程遠いから比較的、自由に恋愛相手を決められたそうです。

ですが、王都では自分の地位を狙ってくる貴族しかおらず、ほとほと困り果てていたとか。

だからこそ、普通なら王家とは繋がる事が少ない男爵家で、積極的に媚を売って来ない私達の家が気に入っていたそうです。

それでも私達の家と王家は身分が違い過ぎて一度は諦めていたのですが、婚約破棄された私を見て我慢が出来なくなり、この作戦を思いついたのだとか。

「……思えば、随分と遠い回り道をしたよ。それに君がこんな目に遭うのなら、最初から婚約を申し込んでおけば良かったと思ってる。
……奴の事は本当にすまなかった」

「いいのですよ。もう終わった話ですし。それに私は貴方の言葉を、今でも待ってますから」

「……そうか。なら、ケイメラ・ウィンサルト嬢、僕と婚約を交わし……いや、結婚してくれないか? 君を、必ず幸せにすると誓うから」

「えぇ、勿論。クローデル様、喜んで」

そしてクローデル様の優しい腕に抱きしめられ、熱く口付けを交わしました。

~~~~~

舞踏会が終わり、家にてクローデル様も加えた新しい家族で作戦の成功と結婚の誓いを祝ってから何日か経ったある日の事。

三人で王宮へ出発する準備を整えながら、ライムズ兄様は家で面白い話をしてきます。

「聞いたか? あの野郎が舞踏会で起こした事が劇になるそうだと。事が終わった後でも晒し上げられるなんて、堪った物じゃないだろうな」

ライムズ兄様はあくまで同情する様な口振りですが、顔はにやりと喜んでいます。

「勘弁してくれよ。全く、その劇では僕とケイメラ嬢の話まであるというのに」

それを聞いたクローデル様はくすりと苦笑しながら、少しばかり恥ずかしそうです。

「舞踏会の事で二人共に親からは勘当され、婚約は解消しちゃったのに追い打ちまでかけられるなんてね。
あの人、何処まで嫌われてたのかしら?」

「さぁね。ただ、王宮でも悪い噂は聞いていたし、折角だからと劇が王家公認になる位だからよっぽどだと思うよ。
同情はしないが、あそこまで嫌われてると恥ずかしくて生きていけないだろうね」

「全くよね。……これで暫く、領地の皆様ともライムズ兄様とも離れる事になるのよね。少しばかり寂しくなるわ」

「大丈夫だよ、たまに折を見て見に行ったりするから心配はいらんさ。何せ、みんなが今日の為に外で出発を祝おうと準備してる位だからな」

「それに君の頼みがあれば、こっちまで馬車を送る様に手配するからね。さぁ、準備も出来たしそろそろ出発の時間だよ」

……これから始まる全く新しい生活、少しは不安もありますが私には楽しみの方が満載です。

「えぇ、それではクローデル様、行きましょうか。ライムズ兄様、また今度ね」「あぁ、また今度な」

そうして私は家の扉を開き、新たな家へと出発していきました。
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