大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?

あるのーる

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1.ドキドキ!異世界転生しちゃったぞ!

それは期待をしていなかったけれど!

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「これは……最高では……?」

 休憩中、自室で一人という気の緩む時間、思わず漏れた声に俺の顔はにんまりほころぶ。
 いやまあそうであって欲しいと思わないことはなかったが、いざ本当にゲーム世界に転生したと知るとちょっとウキウキが止まらない。里香に自慢してやりたいくらいだ。

 それに、ゲームシナリオを知っている俺ならば、いずれ起こるだろう厄災も事件も事前に防ぐことができるのでは? これぞ知識チートといえるんじゃないか??

 ……なんてな。はしゃぐ気持ちは残っているが、俺は知っている。最近の異世界転生、親や子供という主人公たちとは別世代になる場合が増えているということを!

 しかし、それを調べたくとも残念なことに「きみすき」には年号が出てくるタイミングがなく、ゲーム本編の正確な年代は分からない。
 一応当たりをつけられる情報はあるにはあるが、本編に入る前だとすると辺境で魔物の活動が活発化した、とかその影響である侯爵領が半壊した、とかくらいしか……

「……あれ?」

 ふ、と嫌な考えが俺の頭をよぎる。
 つい先日学んだ地理では、辺境にある侯爵領はこのアルベント侯爵領しかなかった。しかもゲームで故郷の思い出話としてそれを話してきたのは攻略対象の一人である辺境伯令息なのだが、彼の名前である『フォーリン』とは、隣の辺境伯領の名前でもなかったか?

「いや……いやいや、そんな……」

 汗がたらりと額から流れるが、疑惑はどんどん湧いてくる。
 侯爵家の歴史として成り立ちや起こった事件なんかも教えられていたが、その中に魔物の襲撃なんてものはなかったはずだ。というか臣籍降下した王子が祖であるアルベント家は血が薄まったとしてつい数代前に侯爵に降爵したばかりであり、他は公爵か伯爵が何十代もずっと続いているのだそう。

 そしてゲームの中で半壊した侯爵領は最終的に隣の辺境伯領と共に魔王に支配され、魔王領として国内で唯一瘴気はびこる不毛の土地となってしまう。聖石に護られた国の中でそこまで被害が広まった理由であるが、魔物にすら住み心地のよい土地だったためではないか、というのが作中で語られていた。
 対して、元々末っ子王子を溺愛していた国王が与えた土地であり、王都から王子が離れなくていいよう放っておいても富を生むような恵まれまくっている場所という視点で選ばれたという過去があるアルベント領。……いやぁ、魔物も元気になりそうだなぁ。

「って、やばいじゃん!?」

 思わず頭を抱えてしまうほどにヤバい。いつになるかはわからないが、未来のどこかで魔物の襲撃が約束されてしまっている。しかも魔王に支配されるとか、もう徹底的に蹂躙されてしまう!!
 他と比べて狭い為か侯爵領にはさほど騎士や傭兵といった武力が少なく、多分このままでは半壊からの占領ルートまっしぐらだ。

 非常に、ヤバい。もうヤバいしか言えない。
 
「め、メイミさん!!」

 今この瞬間にも魔物の襲撃が起こるかもしれなく、唯一危険を察知しているであろう俺は部屋の扉を開けながらメイミさんの名前を呼んだ。
 勢いがよすぎて何故か部屋の前で立ちふさがるように並んでいた騎士さんたちに扉がぶつかりそうになり、慌てて謝っていると騒ぎを聞きつけたメイミさんが焦った顔付きでやってくる。

「カノン様! どうかなさいましたか!」
「あのっ! 魔物って、どうやったら倒せるんですか!?」
「……魔物……ですか?」

 きょとんと俺の言葉に首を傾げたメイミさんは、俺の表情が険しいことに気付いたのかまずは落ち着くように言ってきた。
 それもそうだ。メイミさん視点で考えると、俺は数日前に魔物の存在を教えられたばかり。それがいきなり倒し方を聞いてくるなんて、随分と好戦的である。
 飛び出した部屋に連れ戻され、どこからか取り出したティーセットでメイミさんが入れたお茶を飲む。ほどよい苦味は俺を冷静にさせてくれ、静かに俺の様子を伺っていたメイミさんに再度尋ねてみた。

「取り乱してごめんなさい。ちょっと、魔物が怖くなっちゃって」
「ああ、そうでしたか。ですがご安心くださいカノン様。魔物は人々の心の澱みが核に絡みついて産まれるものとお教えしましたが、その核は王宮にある聖石の加護によって国土の外にしか出現しません」
「あ、そうなの?」
「はい。なので魔物が目の前に突然現れる、なんてことはございません。誰かが意図的に核を持ち込んだなら話は別ですが……核の出現する場所は大抵闇が濃いため、人が立ち入ることも難しい。そんなことはそう簡単に起こらないでしょう」
「へぇ……」

 取り敢えず、いきなり魔物の大群が! みたいなものは避けられそうでほっとする。思い返せばゲームでもあの推しのイベント以外で魔物が出たのって魔王領に入ってからだったし、エンカウント演出もその辺をうろうろしている魔物にぶつかるのと瘴気が集まって魔物になる、って2種類だった。

 瘴気とは魔物が纏っている穢れという風にゲームでは説明されていたが、メイミさんの言っていた通りこの世界の中では人のマイナスな心、というものも含めているそうだ。もっと突き詰めると、負の感情から漏れ出した魔力もそう呼ばれてるってこと。
 聖石というのはそういったものを国土の外へ押し出す役割を担っているとのことで、恐らく魔王領は魔王が支配した瞬間『国土』というくくりから外されてしまったのだろう。

 だからこそ瘴気が蔓延した上に核までできてたのではないだろうか。確かに、魔王領を歩いている間は地味にダメージくらう設定になってたし。あれが瘴気のせいなんだとしたら、その気配が出始めた時点で魔力防御貧弱代表みたいな俺はもうちょっと伏せってると思う。

「ただ、確かにちらほらと魔物の被害が増えたと聞きますね」
「え」

 気は抜けないがまだ安泰ってところかな、と俺が安心していたところにもたらされたメイミさんの言葉。
 その後、特別魔物の生態についての勉強と魔力操作の訓練に俺が力を入れたのは言うまでもない。
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