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ハッピーエンドの始まり
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「愛してるよ、ヨアンナ」
そう言ってヘンリクは、初夜の始まりを告げる口付けを私の唇へと落とした。
彼はいつも、愛の一欠片を私に与えてくれる。その度に私の心の中は温かく満たされていくのだ。
寝台の上に居るのは、私と彼の二人だけ。風の音も無く、窓の外も静かだ。耳に届くのは、互いが身動きする音だけだった。
「ん、緊張してる?」
「……っ、申し訳ございません」
少しだけ長いキスの後、ヘンリクはいたずらっぽく笑った。緊張のあまり私は、呼吸する度に身体が震えて、最早自らの鼓動しか聞こえなくなっている程だった。
けれども、彼の声だけはすっと耳に入ってくるのだから不思議なものだ。
「大丈夫。大切にするから」
そう言って、ヘンリクは私を優しくシーツに組み敷いた。
月明かりは、彼のさらりとした金髪や色素の薄い肌を一層魅力的に照らしている。ナイトドレスを脱がされている間、私は彼にすっかり見蕩れていた。
美しくて、優しくて、どこまでも素敵な方。そんな彼と結ばれるなど、夢のようであった。
長い夢なのかもしれない。けれども彼の手が私の素肌に触れた感触が、夢ではなく現実であることを知らせた。
「っ、ん……」
「ごめん、驚かせて」
「いえ……でも、恥ずかしくて」
「そうだよね、俺も脱ぐから」
生まれたままの姿を曝け出し、私は恥ずかしさのあまり身を捩らせる。ヘンリクがシャツのボタンを外し始めたところで、私はぎゅっと目を瞑った。
暫く布が擦れる音がした後、すぐ近くに彼の気配を感じた。
「お待たせ」
ゆっくり目を開けると、ヘンリクが私を組み敷く体勢となっていた。
彼が微笑んだ瞬間に、反射的に私は顔を背けた。愛する人に全てを見せる覚悟はしたはずなのに、どうしようもない照れが襲ってきたのだ。
しかし顔を背けたことで、意図せずヘンリクに片耳を差し出す形となっていた。彼は強請るように、耳元で囁き始めた。
「もっと君のことを知りたいんだ。だから、全部見せて欲しい。代わりに俺も全部見せるから」
額から片頬にかけて残った痘痕にキスを落としつつ、胸を隠すように組んだ腕を撫でながらヘンリクは言った。
最上級に自らを肯定してくれる彼の態度に、少しずつ身体の強ばりが溶けていくのを感じた。
恐る恐る、固く組んだ腕を外していく。するとヘンリクは、耳たぶを甘く噛んだのだった。
「ん、ぅっ、!!」
「全部素敵だよ、ヨアンナ」
そう言って、ヘンリクは私の肌にキスを落とし始めた。彼が愛おしげにリップ音を鳴らす度、私は身体を震わせた。
「ヘンリク様……っ、ぁ、」
「ん、可愛いよ、ヨアンナ」
いやらしい熱が全身にすっかり回ったところで、ヘンリクは秘唇に触れた。そこは既に、どろりとした蜜で濡れている。二、三度指の腹で撫でた後、彼は指を差し入れた。
「あっ……、っ、ん、っ……」
「ん、大丈夫? 痛くない?」
私の胸元に顔を埋め、頂を舌で舐めながら彼は私に問う。粘度のある水音はこそばゆさを快楽へと変えていき、秘所は濡れる一方だ。そして胎内に入った指は、解すようにゆるゆると動かされていた。
淫道が彼を求めるように愛しい指を締め付ける。身体的な快楽は順当に積み上がってはいくけれども、とうとう私は待ちきれなくなってしまった。
「あっ、あ……っ、ヘンリク様、もう、いらして、ください、」
「んっ、分かった。でも痛かったら、言って欲しい」
上体を起こして、ヘンリクは自身を握った。引き締まった身体の下で硬く立ち上がったそれは、さながら肉の塔にも見える。血管が浮き出ており、あまりの迫力に私は息を飲んだ。
「気持ち悪い? 目、瞑ってても良いから」
淫蜜を塗り伸ばすようにペニスを扱きながら、ヘンリクは言った。彼には珍しく、そこには僅かながら不安が滲んでいた。
「いえ、私にも、ヘンリク様の全部、見せてくださいな」
「……っ、ヨアンナ。そんなこと言われると、理性が保てなくなりそうだ」
切羽詰まったようにそう言って、ヘンリクは私を貫いた。
「あっ、ああああっ!!」
初めての痛みに、私は悲鳴を上げた。耐えるべくシーツを握り締めていると、その手にヘンリクの手が重ねられたのだった。
「ん……っ、慣れてくるまで動かないから。安心して」
「……っ、ん、は、っい」
痛みを逃がすように、彼は何度もキスしてくれた。
すると痛みの波は徐々に収まっていき、少しずつ呼吸も整っていった。拳を握らなくてもよくなったタイミングで、ヘンリクは抜き差しを始めた。
「あっ、っ、あっ、ヘンリク様、ぁ、っ、ああっ!!」
「ヨアンナ、……っ、ん、ぁ……は、」
互いが身体を揺らす度、ベッドのスプリングが跳ねる。いつしか破瓜の痛みは、愛しい人と結ばれる悦びへと変わっていた。
「は、ヨアンナ、愛してる……っ!!」
「私もです、愛してます、ヘンリク様……っ、!!」
名前を呼び合い、愛を確かめ合うように何度も唇を重ねる。幸せで甘い一時に、私はすっかりと酔いしれていた。
けれども、その終わりは近付いていた。
「ヘンリク様、私、もう……っ、」
「ん、俺もだ、じゃあ、一緒に悦くなろう、な? ヨアンナ……っ、!!」
「ひ、ああああっ!!」
最奥を一突きされた後、私は達した。そして少し遅れてから、ヘンリクも胎内に白濁を吐き出したのだった。
「ん……っ、ヨアンナ、」
腰を揺らしながら、ヘンリクは何度も愛おしげに名を呼んでくれた。
不意に、窓の外を見ると綺麗な満月が夜空に浮かんでいた。それはまるで、満たされた私の心を映し出したかのようにも見える。
こんなにも自分が幸せで満たされているのが、未だに信じられないでいた。
「もしかして、まだ夢かもしれないって思ってる?」
私の心を見透かしたように、ヘンリクは笑った。
「夢なんかじゃない。明日朝起きても、俺はちゃんと隣にいるから、安心して」
「……はい」
幸せな微睡みの最中、私は彼の妹に出会った日のことを思い浮かべた。
そうだ。あの日から、夢のような日々はもう始まっていたのだ。
そう言ってヘンリクは、初夜の始まりを告げる口付けを私の唇へと落とした。
彼はいつも、愛の一欠片を私に与えてくれる。その度に私の心の中は温かく満たされていくのだ。
寝台の上に居るのは、私と彼の二人だけ。風の音も無く、窓の外も静かだ。耳に届くのは、互いが身動きする音だけだった。
「ん、緊張してる?」
「……っ、申し訳ございません」
少しだけ長いキスの後、ヘンリクはいたずらっぽく笑った。緊張のあまり私は、呼吸する度に身体が震えて、最早自らの鼓動しか聞こえなくなっている程だった。
けれども、彼の声だけはすっと耳に入ってくるのだから不思議なものだ。
「大丈夫。大切にするから」
そう言って、ヘンリクは私を優しくシーツに組み敷いた。
月明かりは、彼のさらりとした金髪や色素の薄い肌を一層魅力的に照らしている。ナイトドレスを脱がされている間、私は彼にすっかり見蕩れていた。
美しくて、優しくて、どこまでも素敵な方。そんな彼と結ばれるなど、夢のようであった。
長い夢なのかもしれない。けれども彼の手が私の素肌に触れた感触が、夢ではなく現実であることを知らせた。
「っ、ん……」
「ごめん、驚かせて」
「いえ……でも、恥ずかしくて」
「そうだよね、俺も脱ぐから」
生まれたままの姿を曝け出し、私は恥ずかしさのあまり身を捩らせる。ヘンリクがシャツのボタンを外し始めたところで、私はぎゅっと目を瞑った。
暫く布が擦れる音がした後、すぐ近くに彼の気配を感じた。
「お待たせ」
ゆっくり目を開けると、ヘンリクが私を組み敷く体勢となっていた。
彼が微笑んだ瞬間に、反射的に私は顔を背けた。愛する人に全てを見せる覚悟はしたはずなのに、どうしようもない照れが襲ってきたのだ。
しかし顔を背けたことで、意図せずヘンリクに片耳を差し出す形となっていた。彼は強請るように、耳元で囁き始めた。
「もっと君のことを知りたいんだ。だから、全部見せて欲しい。代わりに俺も全部見せるから」
額から片頬にかけて残った痘痕にキスを落としつつ、胸を隠すように組んだ腕を撫でながらヘンリクは言った。
最上級に自らを肯定してくれる彼の態度に、少しずつ身体の強ばりが溶けていくのを感じた。
恐る恐る、固く組んだ腕を外していく。するとヘンリクは、耳たぶを甘く噛んだのだった。
「ん、ぅっ、!!」
「全部素敵だよ、ヨアンナ」
そう言って、ヘンリクは私の肌にキスを落とし始めた。彼が愛おしげにリップ音を鳴らす度、私は身体を震わせた。
「ヘンリク様……っ、ぁ、」
「ん、可愛いよ、ヨアンナ」
いやらしい熱が全身にすっかり回ったところで、ヘンリクは秘唇に触れた。そこは既に、どろりとした蜜で濡れている。二、三度指の腹で撫でた後、彼は指を差し入れた。
「あっ……、っ、ん、っ……」
「ん、大丈夫? 痛くない?」
私の胸元に顔を埋め、頂を舌で舐めながら彼は私に問う。粘度のある水音はこそばゆさを快楽へと変えていき、秘所は濡れる一方だ。そして胎内に入った指は、解すようにゆるゆると動かされていた。
淫道が彼を求めるように愛しい指を締め付ける。身体的な快楽は順当に積み上がってはいくけれども、とうとう私は待ちきれなくなってしまった。
「あっ、あ……っ、ヘンリク様、もう、いらして、ください、」
「んっ、分かった。でも痛かったら、言って欲しい」
上体を起こして、ヘンリクは自身を握った。引き締まった身体の下で硬く立ち上がったそれは、さながら肉の塔にも見える。血管が浮き出ており、あまりの迫力に私は息を飲んだ。
「気持ち悪い? 目、瞑ってても良いから」
淫蜜を塗り伸ばすようにペニスを扱きながら、ヘンリクは言った。彼には珍しく、そこには僅かながら不安が滲んでいた。
「いえ、私にも、ヘンリク様の全部、見せてくださいな」
「……っ、ヨアンナ。そんなこと言われると、理性が保てなくなりそうだ」
切羽詰まったようにそう言って、ヘンリクは私を貫いた。
「あっ、ああああっ!!」
初めての痛みに、私は悲鳴を上げた。耐えるべくシーツを握り締めていると、その手にヘンリクの手が重ねられたのだった。
「ん……っ、慣れてくるまで動かないから。安心して」
「……っ、ん、は、っい」
痛みを逃がすように、彼は何度もキスしてくれた。
すると痛みの波は徐々に収まっていき、少しずつ呼吸も整っていった。拳を握らなくてもよくなったタイミングで、ヘンリクは抜き差しを始めた。
「あっ、っ、あっ、ヘンリク様、ぁ、っ、ああっ!!」
「ヨアンナ、……っ、ん、ぁ……は、」
互いが身体を揺らす度、ベッドのスプリングが跳ねる。いつしか破瓜の痛みは、愛しい人と結ばれる悦びへと変わっていた。
「は、ヨアンナ、愛してる……っ!!」
「私もです、愛してます、ヘンリク様……っ、!!」
名前を呼び合い、愛を確かめ合うように何度も唇を重ねる。幸せで甘い一時に、私はすっかりと酔いしれていた。
けれども、その終わりは近付いていた。
「ヘンリク様、私、もう……っ、」
「ん、俺もだ、じゃあ、一緒に悦くなろう、な? ヨアンナ……っ、!!」
「ひ、ああああっ!!」
最奥を一突きされた後、私は達した。そして少し遅れてから、ヘンリクも胎内に白濁を吐き出したのだった。
「ん……っ、ヨアンナ、」
腰を揺らしながら、ヘンリクは何度も愛おしげに名を呼んでくれた。
不意に、窓の外を見ると綺麗な満月が夜空に浮かんでいた。それはまるで、満たされた私の心を映し出したかのようにも見える。
こんなにも自分が幸せで満たされているのが、未だに信じられないでいた。
「もしかして、まだ夢かもしれないって思ってる?」
私の心を見透かしたように、ヘンリクは笑った。
「夢なんかじゃない。明日朝起きても、俺はちゃんと隣にいるから、安心して」
「……はい」
幸せな微睡みの最中、私は彼の妹に出会った日のことを思い浮かべた。
そうだ。あの日から、夢のような日々はもう始まっていたのだ。
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