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完璧な美との再会
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イルザはというと、薄ピンクのマクラメレースのドレスを着ていた。所々に花型のレース飾りが付いており、控えめながら華やかな一着だ。それに合わせて、彼女の豊かな長い黒髪には蝶々の髪飾りが留まっていた。流行を取り入れつつも真似に留まらない、彼女らしい装いである。
そして彼女のお腹は、ドレスの上からでも分かる程に膨らんでいた。
「イルザ様、お腹も大分大きいのに大丈夫ですの? 少しお掛けになった方がよろしいのでは?」
「やっぱりそう思うだろう? 私も止めたんだけど、どうしても言うことを聞かなくて」
「ふふっ。安定期に入ったので、今は体調も落ち着いてますの。それに今日は女王陛下もいらっしゃるので、どうしても参加したくて。陛下のお召し物が流行を作ると言っても過言ではありませんし……一目見なければと思いまして」
そう言って、イルザはにこやかに微笑んだ。隣ではホルストがきっちりエスコートしているので、恐らく心配は無いだろう。
友達が多く社交的な彼女は、気兼ねなく会話出来る数少ない存在であった。雲ひとつない晴天のように明るい性格は、閉鎖的な性格である私からすれば、ただただ眩しいばかりである。
「本当に、オシャレ好きも困ったものだよ」
ホルストがそう言うと、寝ているはずのルーシアは身体をもぞつかせたのだった。
「失敬。眠り姫には少しばかり賑やかすぎるみたいだね。良ければゲストルームへ案内するけど、どうかな?」
「良いのか? 済まないな」
「ああ、勿論だよ」
「ねえ、そこの貴女」
イルザが通りすがりのメイドを呼び止めた、丁度その時。
聞き覚えのある声が、背後から聞こえてきたのだった。
「実はこのドレス、夫がデザインしたものですの」
自信に満ちた美しい声。その声を耳にした瞬間、私は身体をびくりと震わせた。
そして恐る恐る振り向くと、すぐ側で輪になって歓談している人々の中によく見知った顔を見つけてしまったのである。
令嬢アンネリーゼ。……グアダルーデの王太子の婚約者であり、私が花嫁選びで敗れた相手だ。
「まあ、素敵!! グアダルーデでは昔からドレス制作が盛んとはお聞きしておりましたが、王太子殿下もなさるとは初耳ですわ」
「ふふっ、そうですの。婚約が決まった時に、ジュエリー一式と一緒にいただいたのですが、ドレスまでは珍しいですわよね」
まるで、絶望に打ちひしがれていた過去に戻ってしまったような気分だった。
アンネリーゼは間違い無く、この広間にいる誰よりも美しい。そして私は、そんな彼女の足元にも及ばない。
彼女の細くくびれたウエストを見て、じわりじわりと冷や汗が滲んでいくのを感じた。
美しい容姿も、王太子妃の座も。私が欲しかったものを、彼女は全て手に入れていたのだから。
「どうした? 知り合いでもいたのか?」
「ま、まあ」
何かを察したのか、ドゴールは私の身体を支えるように腰に手を置いた。微かな触れ合いは、動揺した私をほんの少し落ち着かせてくれたのだった。
遠く離れたグアダルーデにいるはずの彼女がどうして……?
そして彼女のお腹は、ドレスの上からでも分かる程に膨らんでいた。
「イルザ様、お腹も大分大きいのに大丈夫ですの? 少しお掛けになった方がよろしいのでは?」
「やっぱりそう思うだろう? 私も止めたんだけど、どうしても言うことを聞かなくて」
「ふふっ。安定期に入ったので、今は体調も落ち着いてますの。それに今日は女王陛下もいらっしゃるので、どうしても参加したくて。陛下のお召し物が流行を作ると言っても過言ではありませんし……一目見なければと思いまして」
そう言って、イルザはにこやかに微笑んだ。隣ではホルストがきっちりエスコートしているので、恐らく心配は無いだろう。
友達が多く社交的な彼女は、気兼ねなく会話出来る数少ない存在であった。雲ひとつない晴天のように明るい性格は、閉鎖的な性格である私からすれば、ただただ眩しいばかりである。
「本当に、オシャレ好きも困ったものだよ」
ホルストがそう言うと、寝ているはずのルーシアは身体をもぞつかせたのだった。
「失敬。眠り姫には少しばかり賑やかすぎるみたいだね。良ければゲストルームへ案内するけど、どうかな?」
「良いのか? 済まないな」
「ああ、勿論だよ」
「ねえ、そこの貴女」
イルザが通りすがりのメイドを呼び止めた、丁度その時。
聞き覚えのある声が、背後から聞こえてきたのだった。
「実はこのドレス、夫がデザインしたものですの」
自信に満ちた美しい声。その声を耳にした瞬間、私は身体をびくりと震わせた。
そして恐る恐る振り向くと、すぐ側で輪になって歓談している人々の中によく見知った顔を見つけてしまったのである。
令嬢アンネリーゼ。……グアダルーデの王太子の婚約者であり、私が花嫁選びで敗れた相手だ。
「まあ、素敵!! グアダルーデでは昔からドレス制作が盛んとはお聞きしておりましたが、王太子殿下もなさるとは初耳ですわ」
「ふふっ、そうですの。婚約が決まった時に、ジュエリー一式と一緒にいただいたのですが、ドレスまでは珍しいですわよね」
まるで、絶望に打ちひしがれていた過去に戻ってしまったような気分だった。
アンネリーゼは間違い無く、この広間にいる誰よりも美しい。そして私は、そんな彼女の足元にも及ばない。
彼女の細くくびれたウエストを見て、じわりじわりと冷や汗が滲んでいくのを感じた。
美しい容姿も、王太子妃の座も。私が欲しかったものを、彼女は全て手に入れていたのだから。
「どうした? 知り合いでもいたのか?」
「ま、まあ」
何かを察したのか、ドゴールは私の身体を支えるように腰に手を置いた。微かな触れ合いは、動揺した私をほんの少し落ち着かせてくれたのだった。
遠く離れたグアダルーデにいるはずの彼女がどうして……?
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