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北方領ペルゼミネ編
第99話 【幕間】ハルヴァの闇
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時は少し遡って――
颯太たちがペルゼミネへ旅立ってから2日後。
ひとりの男が国防大臣執務室を訪れていた。
「ご無沙汰しております、ブロドリック大臣」
「本当に……最近は珍しい来客が多いのぅ」
入室した男の顔を見たブロドリックから苦笑いがこぼれる。
「今日はまた何用じゃ? ――レフティ・キャンベル」
訪ねてきたのは外交局のレフティ・キャンベルであった。
「つい先日も、お主のところのカレン・アルデンハークが訪ねてきたばかりだというのに」
「カレン・アルデンハーク――ああ、リンスウッドの査察担当は彼女でしたね。お会いになられたのですか?」
「うむ。リンスウッド・ファームの件でな」
「そうでしたか。……どうでしたか、彼女は?」
「澄んだいい目をしておる――というのが第一印象かのぅ。曲がったことが嫌いで常に誠実さを求めている……うちにも欲しい人材じゃな」
「それを聞いて安心しました」
レフティはふっと控え目に笑うと、
「随分と目をかけておるようじゃの」
「彼女のひたむきさと真っ直ぐさは天性のもの。それは必ずや外交局に欠かすことのできない力となりましょうぞ」
外交局の重鎮であるレフティにここまで言わせるとは、とブロドリックは改めてカレン・アルデンハークの資質に感心する。
「用件のひとつはそのカレン・アルデンハークに関するものです」
「む……」
もしや、カレン・アルデンハークと結託して外交局の裏事情を探ろうとしていることがバレたのか。そうなると、スパイ役を担っているカレンは外交局――それどころか、国外追放の可能性さえ出てくる。
表情には一切出さず、内心冷や冷やしていると、
「カレン・アルデンハークは現在リンスウッドの査察担当をしておりますが……その任から解かれてもしばらくリンスウッドにとどまらせてもらいたいのです」
「リンスウッドに? しかしなぜじゃ?」
「あそこにはタカミネ・ソータがいらっしゃるのでしょう?」
「……なるほどのぅ」
レフティの狙いが理解できたブロドリックはほくそ笑む。
「彼もまた、優れた能力を持ちながらも奢ることのまったくない、人間的に大変素晴らしい人物と聞いております。そんな彼とカレン・アルデンハークはまさにこのハルヴァの未来を担う人材です」
「その2人を今のうちから引き合わせておく、と」
「これも外交局と国防局のためです。富や権力に揺さぶられることのない強い意志と正しい心を持った者同士――必ずや、この国のためとなります」
その思考はカレンとほとんど同じだった。
だが、その考えは外交局の中では特殊で異端児扱いを受けている。重鎮などと呼ばれながらも重要なポストに就いていないのはそれが原因であった。彼のような人間は、凝り固まった価値観で動く現外交局の上役たちからすれば腫れ物も同然なのである。
しかし、最近ではそうしたレフティの考えに賛同する者が増えてきているという情報をブロドリックは握っていた。彼らは「革新派」と呼ばれ、目に余る集権化が進む外交局に一石を投じようと、虎視眈々と寝首を狙っているのだ。
「ふっ、聞こえのいい言葉で繕う必要はないぞ? カレン・アルデンハークの有能さについては本音なのだろうが、その裏に込められたお主ら革新派の真の狙いは――外交局の構造改革といったところか」
「……さすがはブロドリック大臣――お見通しですか」
そうは言うが、レフティは隠すつもりなど毛頭なかった。
逆に、指摘した側のブロドリックに緊張が走る。これまで水面下で行動していた革新派が表立ってその存在と意義を認めたのだ。
「頑丈な外交局の基盤に風穴を開ける自信があるのか?」
「どうでしょうね。――ただ、時期尚早でないことはたしかです」
そこまで外交局は傾いている――レフティはそう判断を下してブロドリックのもとを訪ねてきたのだ。
「ああ、それともうひとつお話し――いや、ご提案したいことがあります」
「提案?」
「はい。――リンスウッドとマーズナーの両牧場のオーナー及び主力ドラゴンたちを極秘裏に国外へと送り出していただきたい」
「何?」
「もちろん一時的な処置で構いません。1週間――いえ、5日ほどでいいので。時期としてはリンスウッドのオーナーがペルゼミネから戻って来るその日からお願いしたいのですが」
「待て待て。まったくもってお主の言っておる意味が理解できん。なぜあの2人とドラゴンたちを国外へ送り込まねばならんのだ」
「外交局が狙っているからです」
「なんじゃと!?」
レフティは淡々と告げたが、カレンの他に数名の人員を割いて外交局の動きをマークさせていたにも関わらず初めて知る情報――まさに寝耳に水であった。
「厳密に言えば、彼らは竜騎士団に属するドラゴンに興味を抱いています」
「なぜまたドラゴンを?」
外交にドラゴンは関係がないはずだが。
「これは私の推測ですが……外交局の上役たちは竜騎士団を自分たちの管轄下に置こうとしているのではないでしょうか」
「バカな……」
「あくまでも推測ですが。……私は2日後に旧レイノア王都耕作整地視察のため、現地に向かう予定です。彼らが何かしらのアクションを起こすとしたらその日でしょう」
「そのアクションとやらが起きる確証はあるのか?」
ブロドリックの問いかけに、レフティは首をゆっくりと横へ振った。
「残念ながらありません。なので、最終的な判断はブロドリック大臣にお任せします」
確証はない。
本来ならばそれで門前払いのところだが、レフティ・キャンベルという人間の性格を考えるに、そう捉えられるのは十分承知のはず。それでも、わざわざ本人が足を運んで提案しているということは――自信はあるのだろう。その自信を、ブロドリックがどう受け止めるかにかかっている。
「……レフティ」
「はい」
「君の提案じゃが――乗ろう。ソータとアンジェリカの2名にはガドウィンへ行ってもらうとしよう。当然、きちんとした理由をつけて怪しまれないようにしてな」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げたレフティ。
彼としても、この提案は賭けだったのだろう。お辞儀で床に向けられたその顔は無意識に緩んでいた。
「レフティ、お主は外交局の根深い部分をどれだけ知っておる?」
「……今言えるのは彼らが竜騎士団のドラゴンに興味を持っていること。そして――」
「そして?」
レフティは一瞬ためらった。
本来なら、ここから先の情報についてはもう少し国防局との関係性を深めてからにしようと思っていた。
だが、ブロドリック自ら外交局の闇についてたずねてきた。ブロドリック自身も、外交局の動向を気にかけている証拠だ。現に、確証のないレフティの推測話を信用し、即決で颯太たちを他国へ向かわせることを決めた。
この行動力は今の外交局にはない。
そしてそれは――レフティが望む「力」でもあった。
以上のことから、レフティは伏せておくはずだったその先の情報もブロドリックに開示することにした。ハルヴァの歴史を根本からひっくり返してしまうような情報を。
「旧レイノア王都の案件」
「旧レイノア王都?」
「……ブロドリック大臣は、例の国土譲渡の件をどう思われておいでですか?」
「あれはレイノア王家の人間が絶えたのと経済破綻から国政を継続していけないと判断したためと報告を受けたが……違うのか?」
眉間にシワを寄せて問うブロドリックに、レフティは静かに頷くことで答える。
「私はそう睨んでいます。当時まだ私は修学局に勤務していたため、詳しい事情は持っていませんが……先日、あるたしかな筋から入手した情報によると、領地の譲渡にレイノア側は終始反対姿勢だったそうです」
「まさかそんな……陥れたのか? ハルヴァがレイノアの領地を得るために?」
「まだわかりません。……ですが、それこそが、長年に渡り外交局がひた隠しにしてきた、アルフォン王様さえ知らぬ深い闇ではないかと」
もしそうだとしたら――公的発表が偽装されていたということになる。それは間違いなくハルヴァ史上最大の不祥事だ。
「もしそれが真実だとしたら、とても許されることではないぞ。――だがなぜじゃ? レイノア王国はソランと同じく古くから親交のあった国じゃぞ? 経済支援政策も検討しておったというのに、なぜ外交局は領地を奪い取るようなマネを?」
「何もわかっていませんが――どうもそれだけではないようです」
「まだあるのか!?」
「レイノアに比べて小国ですが、かつて近隣にあったバジタキスという国もほぼ同時期に消滅しており、その領地をハルヴァが引き継いでいます」
「バジタキス……聞いたことはあるな。まさかそこもか?」
「現在調査中ですが、恐らく関与しているものと」
確定要素がないため、すべての情報を鵜呑みにするわけにはいかないが――それでも、打ち明けたレフティの勇気を買い、ブロドリックも情報を公開する。
「レフティ、実を言うとな――お主のところのカレン・アルデンハークとも似たような協力体制を取っている」
「カレンくんと?」
「ああ。内密に進めるよう言ってあるが……彼女はこの件を?」
「知りません。情報が情報ですから……もしこれが真実で、我ら革新派が嗅ぎ回っていることを知れば、最悪命を狙われることもありますから」
「それもそうじゃな」
「彼女はまだ若く、有能です。我らが倒れた後、その遺志を引き継いでくれるものと信じています」
レフティのカレンへの信頼は、ブロドリックの颯太への信頼に近いものがあるようだ。
「ブロドリック大臣……あなたに――国防局に協力をしてもらいたい。ハルヴァ外交局が抱えている闇が振り払えないほど強大なものになる前に。今はまだ不確定な情報ばかりですが、いずれその確たる証拠を掴んでみせます。ですから、どうかお願いします」
レフティは再び深く頭を下げる。
「レフティ……」
「国防局の竜騎士団は――ドラゴンたちは国家戦力の要。これが外交局の手に渡ったら、もう誰にも暴走を止められなくなってしまいます」
「……わかった。レイノアに行くならお主も気をつけるのじゃぞ」
「お気遣い、感謝致します。では、失礼します」
外交局の革新派と手を結ぶことを決定した国防局。
ハルヴァの闇を暴き、一掃するための包囲網は着実に狭まりつつあった。
颯太たちがペルゼミネへ旅立ってから2日後。
ひとりの男が国防大臣執務室を訪れていた。
「ご無沙汰しております、ブロドリック大臣」
「本当に……最近は珍しい来客が多いのぅ」
入室した男の顔を見たブロドリックから苦笑いがこぼれる。
「今日はまた何用じゃ? ――レフティ・キャンベル」
訪ねてきたのは外交局のレフティ・キャンベルであった。
「つい先日も、お主のところのカレン・アルデンハークが訪ねてきたばかりだというのに」
「カレン・アルデンハーク――ああ、リンスウッドの査察担当は彼女でしたね。お会いになられたのですか?」
「うむ。リンスウッド・ファームの件でな」
「そうでしたか。……どうでしたか、彼女は?」
「澄んだいい目をしておる――というのが第一印象かのぅ。曲がったことが嫌いで常に誠実さを求めている……うちにも欲しい人材じゃな」
「それを聞いて安心しました」
レフティはふっと控え目に笑うと、
「随分と目をかけておるようじゃの」
「彼女のひたむきさと真っ直ぐさは天性のもの。それは必ずや外交局に欠かすことのできない力となりましょうぞ」
外交局の重鎮であるレフティにここまで言わせるとは、とブロドリックは改めてカレン・アルデンハークの資質に感心する。
「用件のひとつはそのカレン・アルデンハークに関するものです」
「む……」
もしや、カレン・アルデンハークと結託して外交局の裏事情を探ろうとしていることがバレたのか。そうなると、スパイ役を担っているカレンは外交局――それどころか、国外追放の可能性さえ出てくる。
表情には一切出さず、内心冷や冷やしていると、
「カレン・アルデンハークは現在リンスウッドの査察担当をしておりますが……その任から解かれてもしばらくリンスウッドにとどまらせてもらいたいのです」
「リンスウッドに? しかしなぜじゃ?」
「あそこにはタカミネ・ソータがいらっしゃるのでしょう?」
「……なるほどのぅ」
レフティの狙いが理解できたブロドリックはほくそ笑む。
「彼もまた、優れた能力を持ちながらも奢ることのまったくない、人間的に大変素晴らしい人物と聞いております。そんな彼とカレン・アルデンハークはまさにこのハルヴァの未来を担う人材です」
「その2人を今のうちから引き合わせておく、と」
「これも外交局と国防局のためです。富や権力に揺さぶられることのない強い意志と正しい心を持った者同士――必ずや、この国のためとなります」
その思考はカレンとほとんど同じだった。
だが、その考えは外交局の中では特殊で異端児扱いを受けている。重鎮などと呼ばれながらも重要なポストに就いていないのはそれが原因であった。彼のような人間は、凝り固まった価値観で動く現外交局の上役たちからすれば腫れ物も同然なのである。
しかし、最近ではそうしたレフティの考えに賛同する者が増えてきているという情報をブロドリックは握っていた。彼らは「革新派」と呼ばれ、目に余る集権化が進む外交局に一石を投じようと、虎視眈々と寝首を狙っているのだ。
「ふっ、聞こえのいい言葉で繕う必要はないぞ? カレン・アルデンハークの有能さについては本音なのだろうが、その裏に込められたお主ら革新派の真の狙いは――外交局の構造改革といったところか」
「……さすがはブロドリック大臣――お見通しですか」
そうは言うが、レフティは隠すつもりなど毛頭なかった。
逆に、指摘した側のブロドリックに緊張が走る。これまで水面下で行動していた革新派が表立ってその存在と意義を認めたのだ。
「頑丈な外交局の基盤に風穴を開ける自信があるのか?」
「どうでしょうね。――ただ、時期尚早でないことはたしかです」
そこまで外交局は傾いている――レフティはそう判断を下してブロドリックのもとを訪ねてきたのだ。
「ああ、それともうひとつお話し――いや、ご提案したいことがあります」
「提案?」
「はい。――リンスウッドとマーズナーの両牧場のオーナー及び主力ドラゴンたちを極秘裏に国外へと送り出していただきたい」
「何?」
「もちろん一時的な処置で構いません。1週間――いえ、5日ほどでいいので。時期としてはリンスウッドのオーナーがペルゼミネから戻って来るその日からお願いしたいのですが」
「待て待て。まったくもってお主の言っておる意味が理解できん。なぜあの2人とドラゴンたちを国外へ送り込まねばならんのだ」
「外交局が狙っているからです」
「なんじゃと!?」
レフティは淡々と告げたが、カレンの他に数名の人員を割いて外交局の動きをマークさせていたにも関わらず初めて知る情報――まさに寝耳に水であった。
「厳密に言えば、彼らは竜騎士団に属するドラゴンに興味を抱いています」
「なぜまたドラゴンを?」
外交にドラゴンは関係がないはずだが。
「これは私の推測ですが……外交局の上役たちは竜騎士団を自分たちの管轄下に置こうとしているのではないでしょうか」
「バカな……」
「あくまでも推測ですが。……私は2日後に旧レイノア王都耕作整地視察のため、現地に向かう予定です。彼らが何かしらのアクションを起こすとしたらその日でしょう」
「そのアクションとやらが起きる確証はあるのか?」
ブロドリックの問いかけに、レフティは首をゆっくりと横へ振った。
「残念ながらありません。なので、最終的な判断はブロドリック大臣にお任せします」
確証はない。
本来ならばそれで門前払いのところだが、レフティ・キャンベルという人間の性格を考えるに、そう捉えられるのは十分承知のはず。それでも、わざわざ本人が足を運んで提案しているということは――自信はあるのだろう。その自信を、ブロドリックがどう受け止めるかにかかっている。
「……レフティ」
「はい」
「君の提案じゃが――乗ろう。ソータとアンジェリカの2名にはガドウィンへ行ってもらうとしよう。当然、きちんとした理由をつけて怪しまれないようにしてな」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げたレフティ。
彼としても、この提案は賭けだったのだろう。お辞儀で床に向けられたその顔は無意識に緩んでいた。
「レフティ、お主は外交局の根深い部分をどれだけ知っておる?」
「……今言えるのは彼らが竜騎士団のドラゴンに興味を持っていること。そして――」
「そして?」
レフティは一瞬ためらった。
本来なら、ここから先の情報についてはもう少し国防局との関係性を深めてからにしようと思っていた。
だが、ブロドリック自ら外交局の闇についてたずねてきた。ブロドリック自身も、外交局の動向を気にかけている証拠だ。現に、確証のないレフティの推測話を信用し、即決で颯太たちを他国へ向かわせることを決めた。
この行動力は今の外交局にはない。
そしてそれは――レフティが望む「力」でもあった。
以上のことから、レフティは伏せておくはずだったその先の情報もブロドリックに開示することにした。ハルヴァの歴史を根本からひっくり返してしまうような情報を。
「旧レイノア王都の案件」
「旧レイノア王都?」
「……ブロドリック大臣は、例の国土譲渡の件をどう思われておいでですか?」
「あれはレイノア王家の人間が絶えたのと経済破綻から国政を継続していけないと判断したためと報告を受けたが……違うのか?」
眉間にシワを寄せて問うブロドリックに、レフティは静かに頷くことで答える。
「私はそう睨んでいます。当時まだ私は修学局に勤務していたため、詳しい事情は持っていませんが……先日、あるたしかな筋から入手した情報によると、領地の譲渡にレイノア側は終始反対姿勢だったそうです」
「まさかそんな……陥れたのか? ハルヴァがレイノアの領地を得るために?」
「まだわかりません。……ですが、それこそが、長年に渡り外交局がひた隠しにしてきた、アルフォン王様さえ知らぬ深い闇ではないかと」
もしそうだとしたら――公的発表が偽装されていたということになる。それは間違いなくハルヴァ史上最大の不祥事だ。
「もしそれが真実だとしたら、とても許されることではないぞ。――だがなぜじゃ? レイノア王国はソランと同じく古くから親交のあった国じゃぞ? 経済支援政策も検討しておったというのに、なぜ外交局は領地を奪い取るようなマネを?」
「何もわかっていませんが――どうもそれだけではないようです」
「まだあるのか!?」
「レイノアに比べて小国ですが、かつて近隣にあったバジタキスという国もほぼ同時期に消滅しており、その領地をハルヴァが引き継いでいます」
「バジタキス……聞いたことはあるな。まさかそこもか?」
「現在調査中ですが、恐らく関与しているものと」
確定要素がないため、すべての情報を鵜呑みにするわけにはいかないが――それでも、打ち明けたレフティの勇気を買い、ブロドリックも情報を公開する。
「レフティ、実を言うとな――お主のところのカレン・アルデンハークとも似たような協力体制を取っている」
「カレンくんと?」
「ああ。内密に進めるよう言ってあるが……彼女はこの件を?」
「知りません。情報が情報ですから……もしこれが真実で、我ら革新派が嗅ぎ回っていることを知れば、最悪命を狙われることもありますから」
「それもそうじゃな」
「彼女はまだ若く、有能です。我らが倒れた後、その遺志を引き継いでくれるものと信じています」
レフティのカレンへの信頼は、ブロドリックの颯太への信頼に近いものがあるようだ。
「ブロドリック大臣……あなたに――国防局に協力をしてもらいたい。ハルヴァ外交局が抱えている闇が振り払えないほど強大なものになる前に。今はまだ不確定な情報ばかりですが、いずれその確たる証拠を掴んでみせます。ですから、どうかお願いします」
レフティは再び深く頭を下げる。
「レフティ……」
「国防局の竜騎士団は――ドラゴンたちは国家戦力の要。これが外交局の手に渡ったら、もう誰にも暴走を止められなくなってしまいます」
「……わかった。レイノアに行くならお主も気をつけるのじゃぞ」
「お気遣い、感謝致します。では、失礼します」
外交局の革新派と手を結ぶことを決定した国防局。
ハルヴァの闇を暴き、一掃するための包囲網は着実に狭まりつつあった。
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