おっさん、異世界でドラゴンを育てる。

鈴木竜一

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【最終章①】廃界突入編

第170話  集う勇士たち 

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 午後になると、ダステニア王都には各国の竜騎士団が集結し始めた。
 ハルヴァの竜騎士団を出迎えるため、颯太はカレンとアイザックを連れだってダステニア城の城門前までやってきていた。
 時間が経つにつれて続々と集まって来る各国の竜騎士団。
 王国会議の時との一番の相違点は、なんと言っても竜人族の存在だろう。

「おお……凄いな」

 北方領ベルゼミネの鎧竜フェイゼルタットや南方領ガドウィンの海竜シフォンガルタ――それ以外にも、まだ面識のない各国の竜人族が勢揃いしていた。

「ソータさん!」

 その中にはハルヴァからダステニア入りをしたノエルもいた。

「ノエル、到着したんだな」
「はい! キルカさんやブリギッテさんたちもいらっしゃいますよ!」
「そうか。……キャロルは?」
「キャロルさんも来ていますよ」

 意外だった。
 恐らく、叔父のハドリーが牧場に残るようにキャロルを説得するのだろうと思っていたのだが、ノエルの話だとダステニア入りをしているらしい。
 そんなことを考えていたら、

「ソータさん」

 再び名前を呼ばれる。
 今度は人間の女の子――その声の主は、

「キャロル、こっちへ来たのか」
「はい。ハドリーさんにはかなり無理を言ってしまいましたが……私は廃界へ行くことはできませんけど、少しでも近い場所で颯太さんの帰りを待ちたいと思って」

 息を荒げているところを見るに、走ってここまでやって来たのだろう。それでも、颯太の顔を見つめるその顔は満面の笑顔であった。
 
 ――ところが、その笑顔はすぐに曇ってしまった。

「あの、メアちゃんの容態は……」

 やはり、気になるのはメアのことだった。

「まだ意識は戻っていないんだ。今はトリストンがつきっきりで見守っているよ」
「お見舞いに行っても?」
「あ、私も行きたいです!」

 メアとは古い付き合いのある友人――いや、友竜のメアのことが心配なのだろう。こちらも今になって青ざめた表情をしている。

「問題ないと思うよ」
「じゃあ、私が案内しますよ」

 カレンがそう申し出てくれた。

「悪いな」
「いいえ。さあ、行きましょうキャロルちゃん」
「作戦会議が終わったら俺も病室へ行くから」
「はい」

 今度は控え目に笑ったキャロル。
 颯太はそんなキャロルとカレンを見送ったあとで、

「アイザック、ハルヴァ竜騎士団は到着したみたいだけど」
「そのようですね。キャロルさんが先に来られたのは彼女たちが直接竜騎士団に関係のない人物だからでしょうね。たぶん、ブリギッテさんたちもすでにダステニア入りを果たしているでしょう。歌竜の場合は銀竜の件もあるのでガブリエル騎士団長が気を回したのかもしれませんが」
「じゃあ、竜騎士団自体はまだこっちには?」
「いえ、いるはずですが……きっと武器などの積み荷を下ろしたりしているのでしょう」

 今回はハルヴァ竜騎士団の主力を総動員しているため、これまでにない人数の遠征となっている。だからこそ、装備などのアイテムも大量に持ち込んでいたので、それらを整理するだけでもかなりの時間を食いそうだ。

「ガブリエル騎士団長やリガン副団長あたりはすでにダステニア城へ入っている可能性もありますね」
「到着の報告のためか」
「恐らく。あとは――」
「よお、ソータ」

 またも誰かに名前を呼ばれた。
 聞き慣れているはずなのに、どことなく懐かしさを覚える声だった。

「ハドリーさん」
「元気にしていたか!」

 相変わらず豪快な声量のハドリー。――だが、颯太が気になったのはハドリーの後ろにいる人物たちだった。

「! ドルーさん!? それにパウルまで!?」
「ガドウィンで会って以来ですね、ソータさん」
「今回はエレーヌ女王陛下の命を受け、我らソラン王国竜騎士団も廃界遠征に参加させていただきますぞ」

 ソラン王国のドルー・デノーフィアとパウル・フックスらが率いる新生ソラン王国竜騎士団もこの戦いに参加するためダステニア入りしていた。
 さらに、

「エインさんまで!」
「私は前線から身を退くつもりだったが……どうやら最後の最後に大仕事が舞い込んできたようだ。それに、ダリス女王陛下からも参加するよう命じられては、断れるはずもない」

 こちらも生まれ変わったレイノア王国が結成直後の竜騎士団を率いて廃界遠征に参加するようだ。ただ、レイノアの場合は竜騎士団の中でも竜人族であるジーナラルグとカルムプロスの参加が大きいだろう。
 エインの影に隠れる2匹は颯太たちにペコリと頭を下げた。

「この老体でどこまでやれるかわからぬが、この2匹共々よろしく頼むよ」
「こちらこそ!」

 ハルヴァ、ソラン、レイノア――東方領の3国がその兵力を結集してこのダステニアへと乗り込んで来ていた。

 気合十分のソランとレイノアの騎士たちに負けず劣らず、ハルヴァ竜騎士団の騎士たちも気合に満ちていた。

 騎士団長ガブリエル・アーフェルカンプ。
 副団長リガン・オルドネス。

 分団長ハドリー・リンスウッド。
 分団長ジェイク・マヒーリス。
 分団長ヒューズ・スコルテン。

 竜騎士ファネル・スミルノフ。
 竜騎士ドラン・ドートラン。
 竜騎士テオ・スミルノフ。
 竜騎士ルーカ・ハンテンマイヤー。

 颯太と関わりのある騎士たちはもちろん、竜騎士団の全勢力がこのダステニアへと集まっていた。

「これほどの戦力を割いて、ハルヴァ自体の防衛は大丈夫なのか?」
「ほぼ無防備といっていい状態じゃないか?」

 あっけらかんと言い放つハドリーだったが、

「どの国もそうだ。ペルゼミネだってガドウィンだって、ありったけの戦力をここにつぎ込んでいる。それだけ廃界に住み着く魔族を根絶やしにしてやろうって気持ちの本気度が伝わってくるってもんだ」

 手加減無用。
 一網打尽。

 持てるすべての力を注ぎ込み、魔族殲滅を本気で実現しようとしている。

「言ってみればこいつは……この世界の生存権を賭けた戦いと言っていいな」

 生き残るのは魔族か、それともそれ以外の生物か。
 そこまで極端な振り分けができている構図だった。

 その後、ダステニアからの呼びかけで、作戦会議に参加する者は城内へ進むよう案内があった。

 颯太はハドリーに背を押され、城内へ進むよう促される。

「おまえとブリギッテも会議参加のメンバーだ」
「ブリギッテもですか?」
「ああ、そうだ。あいつはすでに城内にいるはずだから、あっちで合流だな」

 その他、十数名の騎士たちと共に、颯太はダステニア城へと入って行った。
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