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連載
書籍発売記念SS 若かりし頃(?)の黄金世代とオーリン
これは、オーリンがまだ賢者を引退するより一年以上前の話――
「ブリッツ? 用事って何?」
この日、のちに黄金世代と呼ばれる者たちのひとりであるウェンデルは、同期のブリッツに呼びだされて学園の一室を訪れた。
そこには、
「あれ? エリーゼとジャクリーヌも呼びだされたの?」
「えぇ」
「ブリッツったら……わたくしたちを呼びだして何をするつもりなのかしら?」
「それについてはこれから説明しよう!」
全員が揃ったところで、勢いよく部屋へと入ってくるブリッツ。そのまま備えつけてある黒板の前に立つと、チョークを使って何やら文字を書き始める。
その途中で、神妙な顔つきをしながら、
「我々は今……重大な局面を迎えている」
と呟いた。
鬼気迫る思いのブリッツとは対照的に、いきなり呼びだされた三人はポカンとして顔を見合わせる。それから顔を寄せ合って相談を始めた。
「ちょっと、ブリッツは一体どうしちゃったっていうの?」
「僕も知らないよ……」
「いつもとちょっと雰囲気が違う気がしますね」
「変なヤツだとは前々から思っていたけど……とうとう歯止めが利かなくなってしまったというわけね」
ジャクリーヌがため息交じりにそんな言葉を口にした直後、ブリッツが黒板に文字を書き終えた。その文字をバシンと叩きながら、力強く告げる。
「まもなくオーリン先生は誕生日を迎える!」
「「「あっ」」」
その言葉で、三人はブリッツがなぜ自分たちを呼びだしたのかを理解した。
「なるほど……いつもお世話になっているオーリン先生のために、誕生パーティーがしたいというわけですね」
「いいじゃん! 大賛成!」
「わたくしも賛成ですが……それより、よくオーリン先生の誕生日を知っていましたわね」
「……オーリン先生から受けた恩を返すには、俺などまだまだ未熟。――だが、そんな状況でも何か返したいという思いは前々から持っていたのだ」
「それで誕生日を祝おうと……」
言い終えて、チラリとエリーゼやジャクリーヌに視線を移すウェンデル。
他の三人もまったく同じ気持ちではあった。
病弱な体質のため、憧れだった騎士になるという夢を絶とうとしていたブリッツ。
ハーフエルフという血筋のため、幼い頃から偏見の中で生きてきたエリーゼ。
引きこもりがちだったが、陽の当たる場所へと連れだしてもらったウェンデル。
生まれて初めて敗北し、世界にはまだまだ上がいることを教わったジャクリーヌ。
四人がこうして無事に学園へと通えているのは、すべてオーリンのおかげであった。当のオーリンはそんなことなど微塵も思ってはいなく、それぞれの努力の賜物であると語るのだが、紛れもなくきっかけを与えたのは彼だった。
それを重々理解している四人は、学生という今の立場からできる恩返しをするため、早速パーティーの準備に取りかかるのだった。
――数時間後。
「こ、これは……」
エリーゼに呼ばれて会場となる教室へやってきたオーリンは、飾りつけられた室内を目の当たりにして驚く。
「私たち、お誕生日を祝うと同時に、普段のお礼の気持ちを込めたパーティーをしようと考えたんです」
「先生の誕生日をお祝いしたくて、頑張りましたのよ」
「盛大で豪華な料理――とまではいかないけど、いろいろと用意してみたよ!」
「これらの許可はすでに取ってありますので、安心してください」
「みんな……」
四人の心遣いに、オーリンの目頭が熱くなる。
それから五人は楽しいひと時を過ごすのだった。
「ブリッツ? 用事って何?」
この日、のちに黄金世代と呼ばれる者たちのひとりであるウェンデルは、同期のブリッツに呼びだされて学園の一室を訪れた。
そこには、
「あれ? エリーゼとジャクリーヌも呼びだされたの?」
「えぇ」
「ブリッツったら……わたくしたちを呼びだして何をするつもりなのかしら?」
「それについてはこれから説明しよう!」
全員が揃ったところで、勢いよく部屋へと入ってくるブリッツ。そのまま備えつけてある黒板の前に立つと、チョークを使って何やら文字を書き始める。
その途中で、神妙な顔つきをしながら、
「我々は今……重大な局面を迎えている」
と呟いた。
鬼気迫る思いのブリッツとは対照的に、いきなり呼びだされた三人はポカンとして顔を見合わせる。それから顔を寄せ合って相談を始めた。
「ちょっと、ブリッツは一体どうしちゃったっていうの?」
「僕も知らないよ……」
「いつもとちょっと雰囲気が違う気がしますね」
「変なヤツだとは前々から思っていたけど……とうとう歯止めが利かなくなってしまったというわけね」
ジャクリーヌがため息交じりにそんな言葉を口にした直後、ブリッツが黒板に文字を書き終えた。その文字をバシンと叩きながら、力強く告げる。
「まもなくオーリン先生は誕生日を迎える!」
「「「あっ」」」
その言葉で、三人はブリッツがなぜ自分たちを呼びだしたのかを理解した。
「なるほど……いつもお世話になっているオーリン先生のために、誕生パーティーがしたいというわけですね」
「いいじゃん! 大賛成!」
「わたくしも賛成ですが……それより、よくオーリン先生の誕生日を知っていましたわね」
「……オーリン先生から受けた恩を返すには、俺などまだまだ未熟。――だが、そんな状況でも何か返したいという思いは前々から持っていたのだ」
「それで誕生日を祝おうと……」
言い終えて、チラリとエリーゼやジャクリーヌに視線を移すウェンデル。
他の三人もまったく同じ気持ちではあった。
病弱な体質のため、憧れだった騎士になるという夢を絶とうとしていたブリッツ。
ハーフエルフという血筋のため、幼い頃から偏見の中で生きてきたエリーゼ。
引きこもりがちだったが、陽の当たる場所へと連れだしてもらったウェンデル。
生まれて初めて敗北し、世界にはまだまだ上がいることを教わったジャクリーヌ。
四人がこうして無事に学園へと通えているのは、すべてオーリンのおかげであった。当のオーリンはそんなことなど微塵も思ってはいなく、それぞれの努力の賜物であると語るのだが、紛れもなくきっかけを与えたのは彼だった。
それを重々理解している四人は、学生という今の立場からできる恩返しをするため、早速パーティーの準備に取りかかるのだった。
――数時間後。
「こ、これは……」
エリーゼに呼ばれて会場となる教室へやってきたオーリンは、飾りつけられた室内を目の当たりにして驚く。
「私たち、お誕生日を祝うと同時に、普段のお礼の気持ちを込めたパーティーをしようと考えたんです」
「先生の誕生日をお祝いしたくて、頑張りましたのよ」
「盛大で豪華な料理――とまではいかないけど、いろいろと用意してみたよ!」
「これらの許可はすでに取ってありますので、安心してください」
「みんな……」
四人の心遣いに、オーリンの目頭が熱くなる。
それから五人は楽しいひと時を過ごすのだった。
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