異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一

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第11話  冒険者たちの街

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 冒険者たちの集う「ダンジョン」がある街――フォーブ。

 王都に比べれば規模はずっと小さく、人も少ない。
 だが、すれ違う人々の質はだいぶ異なる。

 鍛え上げられた肉体。
 重厚な装備。
 鋭い眼光。

 一癖も二癖もありそうな猛者揃い――そんなイメージを抱かせる人間が多かった。
 人間だけではない。
 獣人族やエルフ族といった亜人の姿もちらほら見える。
 彼らもまた冒険者としてダンジョンに潜り、さまざまな魔鉱石を採取してはこの街の中心部にある買い取り屋へと持っていくのだ。

「さすがに王都に比べるとスケールダウンは否めないけど、街全体を覆う熱気という点では引けを取らないな」
「ダンジョン内にはモンスターもいますからね。王都以上に腕っぷしに自信のある人が多いから、余計にそう感じるのかもしれません」
「ここで商売をする人は大変だな……」

 ダンジョンにいるモンスターを相手に戦って鉱石採掘を行う。
 手にした魔鉱石にはさまざまな用途があり、物によってはかなりの高値がつくらしい。

 そんな魔鉱石の中で、優志が探し求めているのは熱を発するヒート。
 一応、職を見つけるまでの生活費として受け取ったのは10万ユラ(この世界における通貨単位)で、この中から出費することになる。

「ヒートって魔鉱石はどこへ行けば売っているんだ?」
「たしか、冒険者たちが利用する買い取り屋で購入もできるはずです」
「ならそこへ行ってみるか」

 魔鉱石の買い取り屋は街の中心にあるとのことだが、中心地というだけあって他にもいくつか店があり、「さがすのは骨だな」とぼやいた直後――呆気なく見つかった。というのも、騒がしい街中にあって一層騒がしい店が件の買い取り屋だったのだ。

「わかりやすくて助かったな」
「喜ぶべきなのかどうなのか……」
 
 リウィルはあまり乗り気じゃなさそうだった。
 無理もない。
 血気盛んな冒険者たちで溢れかえるその一帯は近寄りがたい。
現代日本で今の状況を例えるならば、深夜に腹が減ったから近くのコンビニに行ったら入口付近でヤンキーがたむろしていて入りづらい――そんな感じだ。

「行こうか」
「……本当に行くんですか?」
「当然だろう。嫌なのか?」
「そりゃあ……」
「なんで?」
「なんかこう……汗臭そうじゃないですか。それと、なんだか飢えた狼みたいな人たちが大勢いて――うぅ、そんなことを考えていたらなんだか凄く不安になってきました」
「大袈裟だなぁ」
「だって、現に周りにいる冒険者の人たちはみんな顔がおっかなくて……店の中に入っただけで妊娠とかしそうで怖いです」
「そんなバカな……」
 
 マイナスイメージが先行し過ぎなリウィル。
 さすがに優志はそんな極端な思考に至ってはいないが、できれば入りたくないという点では同意する。学生時代、どちらかというと陰キャ寄りの優志には、あの集団の中へ身を投じるのはかなりの度胸が必要だった。

それでも、歩を止めるわけにはいかない。

 ヒートの入手はこの世界で手に入れたスキル――【癒しの極意】を使って生き抜いていくのに欠かせない存在。その入手難易度によっては王都からこのフォーブへと移り住んでいいとさえ思っている。

 今後の異世界生活を左右する魔鉱石の入手についての結論を導き出すため、恐怖を押し殺して買い取り屋へと足を踏み入れた。
 
「お?」
「あら?」

 入店したふたりは意外な光景に脱力する。
 店外では険悪なムードが漂っていたが、店内は逆に落ち着いた様子だった。清潔感のある内装からはまるでどこかのオシャレなカフェみたいな感じさえする雰囲気が漂い、掃除も行き届いているようで床にはゴミひとつ落ちていない。

「聞いていた話とだいぶ違うんだけど?」
「奇遇ですね。私もそうです」
「俺は君から聞いたんだけどな」
「そうでしたっけ?」
 
 都合の悪いことは速攻で記憶から抹消するポンコツ(元)神官のリウィルであった。

 気を取り直して、

「あの、ちょっといいですか?」

 空いているカウンターにいた女性に話しかけた。

「なんでしょうか?」
「ヒートって魔鉱石が欲しいんですが、こちらで取り扱っていますか?」
「ありますよ。少々お待ちください」

 女性は店の奥へと入って行き――3分ほど経ってから戻って来た。その手には宿屋で見せてもらったヒートと同じ色をした石が。

「これがヒートですか?」
「はい」
「お値段は?」
「ひとつ4万3000ユラです」
「4万3000!?」

 1つ入手するのに当面の生活費の半分近くが消滅する計算。しかし、これでも仲介業者を挟んでいない分、王都よりも安価だという。
 とりあえず、対応してくれた女性に礼を言ってヒートを一旦下げてもらう。

「そ、想像以上に高価でしたね」
「ああ……こいつをスキル性能の有用さを確かめる実験で使用するのはちょっと厳しいな」

 だからと言って、このまま引き下がるわけにもいかない。
 ステータス的に冒険者稼業も厳しそうだから、店舗を手に入れて回復系の専門店――名付けて「異世界健康ランド」を開こうと計画していたのだが、このままではそれがご破算になってしまう。

「俺としても夢ではあったんだ……自分好みの健康ランドを作るのは」
「ケンコーランド?」
「あ、いや、つまり……回復系アイテムなんかを売ったりする店を持てたらなって思っていたわけで」
「それはいいアイディアですね。……でも、それとヒートはどんな関係が?」
「欠かせないよ……それだけは」
「?」

 優志の思い描く異世界健康ランド――その中枢を担う「温泉」と呼ばれる現代日本屈指の回復スポットを流行らすためには、どうしてもヒートを入手しなくてはならない。それも、温泉規模にするにはひとつやふたつでは足りない。
 だが、1つで4万3000なら、温泉規模に達するのに果たしていくらかかるのか――実績がなく、見通しが不透明な店舗運営での初期費用としては高額過ぎる。

「どうしたものか……」

 優志が腕を組んで唸っていると、

「うん? ――おお! ユージではないか!!!」

 つい先日聞いた暑苦しい声が背後から聞こえてきた。
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