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第157話 真田の狙い
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「完全に意表を突いたつもりだったけど、さすがは騎士団を束ねるおふたりだ」
百戦錬磨のアデムとゼイロを敵に回したのだが、真田の態度に変化はない。
その目は他者を見下し、歪んだ口元はこれから起こす凶行――優志たちへの攻撃を暗示しているかのようであった。
「なぜだ! なぜ我らと敵対する!」
アデムが叫ぶ。
ゼイロは剣を構えたまま無言。
優志はすぐさま起き上がって美弦を背に回した。
「僕が理由を話して、それからどうする気ですか? 説得でもするつもりですか?」
大剣をまるで箸でも扱うかのように軽々と回転させ、呆れたように言い放つ真田。どうやら問答無用というわけらしい。
それでも、「勇者が敵に回った」という事実を受け入れられないアデムはさらに問う。
「君は……他の勇者たちと共に、魔王討伐のため戦うと誓ってくれた……その誓いは嘘だったのか!」
「あの時は確かに魔王討伐を本気で考えていたよ。――ただ、事情が変わったんですよ」
「事情が変わった? 一体なんのことだ!」
「これ以上の会話は無意味ですよ。だって、何を聞かれても答えるつもりは毛頭ありませんからね」
真田が勢いよく剣を振ると「ブン!」という風を斬る音がした。
魔獣との戦いにほとんどの戦力が割かれている中、この場にいるのはごく少数。ニックの説得に当たったアデムとゼイロ。そしてその右腕とも呼べる側近の兵士。そして優志と美弦のふたりだ。
「……美弦ちゃん」
「な、なんですか?」
「真田くんは……強いのか?」
優志が尋ねると、美弦は沈黙した。言葉を語らなくとも、その反応で大体の察しはつく。ところが、わずかな沈黙を破った美弦の口からとんでもない真実が告げられた。
「真田くんは……純粋な戦闘能力なら私たち転移勇者たちの中で間違いなく最強です」
「! さ、最強!?」
「恐らく……アデムさんとゼイロさんは――勝てません」
美弦はそう断言した。
それは当然、対峙している本人たちも承知しているだろう。
だが、そうであってもふたりは立ちはだかる。
勇者真田の真意を知るために。
「サナダくん……君の狙いはなんだい? なぜ、ミヤハラ・ユージに剣を向けた?」
激しい口調だったアデムとは対照的に、ゼイロは静かな口調で語りかける。
「ゼイロ副団長……先ほどの話を聞いていなかったんですか?」
「私はどうにも腑に落ちないんだ。覚えているかい? 君はこの世界に召喚された直後に気を失い、医務室へと運ばれた。そこで目を覚まし、初めて顔を合わせたのが私だ」
「……覚えていますよ」
わずかだが、真田に変化が見られた。
戸惑い――例えるなら、そんな感情が言葉の端々からにじみ出ている気がする。言い換えるならば、動揺しているとも表現できる。
「真田くんはゼイロ副騎士団長と仲が良かったのか?」
「仲がいいというよりも信頼をしていたといった方がいいかもしれません。召喚されてからしばらく経ってからなんですが、真田くんは『ゼイロさんみたいな人がクラスの担任だったらよかったのに』と呟いていました」
「そんなことが……」
美弦の証言から、ふたつの事実が分かった。
ひとつは真田がゼイロに対して好印象を抱いていること。
そしてもうひとつは――真田にとって、元いた世界の学校生活に、担任絡みで不満があっということ。
そのふたつを結び付けて真田の心中を探ろうとした優志であったが、それについて真田自らが真実を打ち明けた。
「……僕は力を手に入れた。この力を、僕は元の世界へ持ち帰ろうと思う。持ち帰って、今まで僕をみくびってきたヤツらに見せつけてやる!」
「!? 力を持ち帰るだと!?」
アデムからの要求には応えなかったが、ゼイロ相手では勝手が違うのか、自分の考えを素直に吐露してみせた。
しかし、それはあまりにも予想外の答えである。
「みくびってきたヤツら……もしかして……」
真田のいた世界に住んでいた優志と美弦にはなんとなく理解できた。
恐らく、真田は向こうの世界で何者かから酷い仕打ちを受けてきたのだ。
あの強大な力を元の世界でも使えるようになれば、以前のパワーバランスは逆転する。真田の狙いはそれだった。
「力を持ち帰るなんて……できるわけがない!」
アデムの言葉に対して優志は無意識に頷いていた。
この世界から元の世界へは戻れない。
だから、召喚された勇者たちには事前にその旨を伝え、それでも転移し、勇者として戦ってくれる若者を募っていた。
それによって集められたのがあの七人なのだ。
「……サナダくん、いくら君が優れていようとも、決して元の世界へは戻れない。そんなことができる人間などこの世界に――」
「存在していますよ」
「「!?」」
真田の言葉を受けたアデムとゼイロは絶句。
そのリアクションに、優志は違和感を覚えた。
「そんなことあるはずがない!」という反応よりも「なぜ君がそのことを知っているんだ」というものに映ったからだ。
「まさか……」
真田が言っていることは事実なのか。
実は黙っていただけで、本当は帰る術があるというのか。
青ざめるアデムとゼイロを嘲笑うかのように、真田はさらに続ける。
「僕は気づいているんですよ? ――あなた方の秘密を」
「な、何のことだ?」
「とぼけても無駄ですよ、アデム団長」
クスクスと小さく笑いながら、真田はその秘密とやらを口にする。
「僕に真実を教えてくれたのは……あなたたちが召喚した八人目の勇者――いや、正確には一番目の勇者です」
百戦錬磨のアデムとゼイロを敵に回したのだが、真田の態度に変化はない。
その目は他者を見下し、歪んだ口元はこれから起こす凶行――優志たちへの攻撃を暗示しているかのようであった。
「なぜだ! なぜ我らと敵対する!」
アデムが叫ぶ。
ゼイロは剣を構えたまま無言。
優志はすぐさま起き上がって美弦を背に回した。
「僕が理由を話して、それからどうする気ですか? 説得でもするつもりですか?」
大剣をまるで箸でも扱うかのように軽々と回転させ、呆れたように言い放つ真田。どうやら問答無用というわけらしい。
それでも、「勇者が敵に回った」という事実を受け入れられないアデムはさらに問う。
「君は……他の勇者たちと共に、魔王討伐のため戦うと誓ってくれた……その誓いは嘘だったのか!」
「あの時は確かに魔王討伐を本気で考えていたよ。――ただ、事情が変わったんですよ」
「事情が変わった? 一体なんのことだ!」
「これ以上の会話は無意味ですよ。だって、何を聞かれても答えるつもりは毛頭ありませんからね」
真田が勢いよく剣を振ると「ブン!」という風を斬る音がした。
魔獣との戦いにほとんどの戦力が割かれている中、この場にいるのはごく少数。ニックの説得に当たったアデムとゼイロ。そしてその右腕とも呼べる側近の兵士。そして優志と美弦のふたりだ。
「……美弦ちゃん」
「な、なんですか?」
「真田くんは……強いのか?」
優志が尋ねると、美弦は沈黙した。言葉を語らなくとも、その反応で大体の察しはつく。ところが、わずかな沈黙を破った美弦の口からとんでもない真実が告げられた。
「真田くんは……純粋な戦闘能力なら私たち転移勇者たちの中で間違いなく最強です」
「! さ、最強!?」
「恐らく……アデムさんとゼイロさんは――勝てません」
美弦はそう断言した。
それは当然、対峙している本人たちも承知しているだろう。
だが、そうであってもふたりは立ちはだかる。
勇者真田の真意を知るために。
「サナダくん……君の狙いはなんだい? なぜ、ミヤハラ・ユージに剣を向けた?」
激しい口調だったアデムとは対照的に、ゼイロは静かな口調で語りかける。
「ゼイロ副団長……先ほどの話を聞いていなかったんですか?」
「私はどうにも腑に落ちないんだ。覚えているかい? 君はこの世界に召喚された直後に気を失い、医務室へと運ばれた。そこで目を覚まし、初めて顔を合わせたのが私だ」
「……覚えていますよ」
わずかだが、真田に変化が見られた。
戸惑い――例えるなら、そんな感情が言葉の端々からにじみ出ている気がする。言い換えるならば、動揺しているとも表現できる。
「真田くんはゼイロ副騎士団長と仲が良かったのか?」
「仲がいいというよりも信頼をしていたといった方がいいかもしれません。召喚されてからしばらく経ってからなんですが、真田くんは『ゼイロさんみたいな人がクラスの担任だったらよかったのに』と呟いていました」
「そんなことが……」
美弦の証言から、ふたつの事実が分かった。
ひとつは真田がゼイロに対して好印象を抱いていること。
そしてもうひとつは――真田にとって、元いた世界の学校生活に、担任絡みで不満があっということ。
そのふたつを結び付けて真田の心中を探ろうとした優志であったが、それについて真田自らが真実を打ち明けた。
「……僕は力を手に入れた。この力を、僕は元の世界へ持ち帰ろうと思う。持ち帰って、今まで僕をみくびってきたヤツらに見せつけてやる!」
「!? 力を持ち帰るだと!?」
アデムからの要求には応えなかったが、ゼイロ相手では勝手が違うのか、自分の考えを素直に吐露してみせた。
しかし、それはあまりにも予想外の答えである。
「みくびってきたヤツら……もしかして……」
真田のいた世界に住んでいた優志と美弦にはなんとなく理解できた。
恐らく、真田は向こうの世界で何者かから酷い仕打ちを受けてきたのだ。
あの強大な力を元の世界でも使えるようになれば、以前のパワーバランスは逆転する。真田の狙いはそれだった。
「力を持ち帰るなんて……できるわけがない!」
アデムの言葉に対して優志は無意識に頷いていた。
この世界から元の世界へは戻れない。
だから、召喚された勇者たちには事前にその旨を伝え、それでも転移し、勇者として戦ってくれる若者を募っていた。
それによって集められたのがあの七人なのだ。
「……サナダくん、いくら君が優れていようとも、決して元の世界へは戻れない。そんなことができる人間などこの世界に――」
「存在していますよ」
「「!?」」
真田の言葉を受けたアデムとゼイロは絶句。
そのリアクションに、優志は違和感を覚えた。
「そんなことあるはずがない!」という反応よりも「なぜ君がそのことを知っているんだ」というものに映ったからだ。
「まさか……」
真田が言っていることは事実なのか。
実は黙っていただけで、本当は帰る術があるというのか。
青ざめるアデムとゼイロを嘲笑うかのように、真田はさらに続ける。
「僕は気づいているんですよ? ――あなた方の秘密を」
「な、何のことだ?」
「とぼけても無駄ですよ、アデム団長」
クスクスと小さく笑いながら、真田はその秘密とやらを口にする。
「僕に真実を教えてくれたのは……あなたたちが召喚した八人目の勇者――いや、正確には一番目の勇者です」
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