88番目のモブメイド、憧れの悪役令嬢になる ~え、待って! 王子にこんな溺愛されるなんて聞いてない!

とんこつ毬藻

文字の大きさ
42 / 58
第三幕(最終章)真実追究編

42 魂の在り処

しおりを挟む
「今、この部屋は俺様の魔力で創った魔法障壁で取り囲んでいる。ここで話す言葉は誰にも聞こえないし、傍受されん。安心するといい」
「……っ……こんな状態で誰が安心すると言うの!?」

 口元を押さえていた手が離れた瞬間、ジルバートを睨みつけるワタクシ。しかし、それまで冷徹な表情しか見せて来なかったように見えた彼は、この時哀しそうな、なんとも言い切れない表情となっていた。

「部屋の防御結界シールドに王宮の警備。そして、陰で動く者の。誰にも見つからずに転移する魔法を編み出すまでに時間がかかった」
「そうだった。あなた、どうやって此処に……って転移魔法ですって」

 指定した場所と場所を結び、遠くまで瞬間移動する事の出来る空間転移魔法は、膨大な魔力を消費する。それは異世界から悪魔を召喚する魔法陣や、自然エネルギーの源である精霊を召喚する儀式の応用とも言われている。下手すると転移した瞬間、身体ごとバラバラになってしまう恐れもあるため、使用出来る者はごく少数に限られるのだ。

 言われてみれば、あの時、クラウン王子とワタクシの前から姿を消した時も、彼は空間転移魔法を使っていた。つまり、相手が空間転移を使える者なら、安全な場所はないという事になるのか。これはひとついい経験になったわ。

「で、ワタクシを暗殺しに来た……って訳ではないみたいね」
「そうだな。今日はお前と話をしに来たのだ。さぁ、何から話そうか」

「その前に、あなたは一体何者なの? ブラックシリウス国の現国王――スレイヴ・カオス・シリウスとはどういう関係?」
「嗚呼、それは俺様の父親の名前だな」

「は? じゃああなた王子様ってコト?」
「そういう事になるな」

 王子がこんな自由に立ち回っていいのか? 何故王子がこんなところに……いや、むしろ関係ないワタクシを王子が護る筈もない訳で。そんな考えを察してか、ジルバートは部屋のソファーへと座り、ゆっくりと話し始める。

「事態はお前が思っているよりもずっと、複雑だと言う事だ」
「どうやらあなた、聖女の存在が邪魔でこの国へやって来たという訳ではないみたいね」
「成程、そこまで調べてはいるのか」

 ブラックシリウス国とクイーンズヴァレー王国との関係性、聖女と英雄の伝説はどうやらワタクシが調べた通りだった。そして、その伝説とカインズベリー侯爵家がどう関係しているのかをこれから調べる予定だったのだ。

「ちなみに、カインズベリー侯爵家と聖女は全く無関係だ。もっと言えば、過去、カインズベリー侯爵家が全焼し、お前が仕えていたヴァイオレッタが殺されたのは、黒幕にとって一番それが好都合だったからだ」
「あなた……、どこまで知っているの? 何故それを知っているの?」

 そう、今目の前に居る、ジルバートは、ワタクシをモブメイドと呼び、ワタクシの過去を知っているのだ。

「簡単なことだ。俺も死に戻った人物の一人だからな。俺は一度死に戻り、そして、転生した。だが、俺は俺としてではなく、ブラックシリウス国の現国王――スレイヴ・カオス・シリウスの子として転生したのさ」
「そんな……まさか!?」

 転生した? 過去に戻るという事実だけでも信じ難いというのに、彼は生まれ変わったのだという。ジルバートによると、そもそも肉体とは魂を入れる器でしかないのだという。そして、その肉体は、魂が宿る前でないと入る事が出来ないのだそう。彼はジルバートとして転生し、ブラックシリウス国の内情を知る。他国との交流を絶ち、悪魔と契約した過去を持つ帝国は決して裕福ではなかった。かつての栄華はなく、荒廃した国。彼は自国を建て直そうと前世での知識を活用し、若くして自国での地位を築く。と同時、過去の悲劇を繰り返さないよう、水面下で時を待った。

「そして、モブメイド……お前を見つけたのさ」
「どうしてワタ……いや、わたしなの?」
「ようやくその口調になったなモブメイド」

 そう、ヴァイオレッタでもなくわたし・・・なのだ。何故、彼はモブメイドであるわたしに拘るのか? おもむろに立ち上がった彼はわたしに近づく。

「お前は自分を何だと思っている? ヴァイオレッタお付のモブメイド。序列は88番目。それ以上でもそれ以下でもないと。そして、過去の悲劇を繰り返さないよう此処までやって来た、違うか?」
「ええ、そうです。ヴァイオレッタ様が再び死んでしまうなんて、考えられない。だから、破滅を回避して……」
「いや、今ヴァイオレッタの中身はモブメイド。お前だろう。じゃあ、クラウン王子が愛しているのもモブメイドではなく、ヴァイオレッタだ、違うか?」
「え? それはそうですが……わたしは、ヴァイオレッタ様が幸せになればそれで……」

 そこまで聞いたジルバートは、ゆっくりと部屋を歩く。まだブルームは気を失ったままだ。そして、少し距離を置いた状態で振り返り、わたしにこう告げたのだ。

「ではモブメイド、お前に問おう。この世界にもし、ヴァイオレッタの魂も転生していた・・・・・・としたら、お前はどうする?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました

富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。 転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。 でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。 別にそんな事望んでなかったんだけど……。 「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」 「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」 強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました

黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」 衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。 実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。 彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。 全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。 さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?

王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~

結田龍
恋愛
「小娘を、ひっ捕らえよ!」 没落令嬢イシュカ・セレーネはランドリック王国の王宮術師団に所属する水術師だが、宰相オズウェン公爵によって、自身の娘・公爵令嬢シャーロットの誘拐罪で王宮追放されてしまう。それはシャーロットとイシュカを敵視する同僚の水術師ヘンリエッタによる、退屈しのぎのための陰湿な嫌がらせだった。 あっという間に王都から追い出されたイシュカだが、なぜか王太子ローク・ランドリックによって助けられ、「今度は俺が君を助けると決めていたんだ」と甘く告げられる。 ロークとは二年前の戦争終結時に野戦病院で出会っていて、そこで聖女だとうわさになっていたイシュカは、彼の体の傷だけではなく心の傷も癒したらしい。そんなイシュカに対し、ロークは甘い微笑みを絶やさない。 あわあわと戸惑うイシュカだが、ロークからの提案で竜神伝説のある辺境の地・カスタリアへ向かう。そこは宰相から実権を取り返すために、ロークが領主として領地経営をしている場所だった。 王宮追放で職を失ったイシュカはロークの領主経営を手伝うが、ひょんなことから少年の姿をした竜神スクルドと出会い、さらには勝手に聖女と認定されてしまったのだった。 毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。 恋愛小説大賞にエントリーしました。

処理中です...