【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
53 / 110
第8章 魔王城跡探索

52話・気付かれない変化

しおりを挟む


将子しょうこは変わらないように見えますが」
由宇斗ゆうとほどじゃないけど以前とは違う。覚えてるか?二度目に召喚された日の夜に開かれた祝宴」
「ええ、もちろん」

 貴族も交えての歓迎の宴。それぞれ用意されていた衣装を身に纏って出席した。

「あの時、将子はドレスのデザインが気に入らないからってその場で直させたんだよ」
「!そうだったんですか」
「ああ。前までの将子ならドレスに手を加えさせるなんて絶対にしない」

 将子は年頃の女の子で人並みにお洒落にも興味関心があるが、同時に常識もわきまえている。だからこそ、専門の服飾職人が丁寧に仕立てた衣装のデザインを素人判断で変更するなどという失礼極まりない真似はしない。

「それに、元の世界で連絡を取り合ってる時にも違和感があった。将子は告白を断る口実にするために『付き合ってる相手がいる』と周りに公言したんだ。詳しく聞かれたら困ることくらい分かってるはずなのに」
「……確かに、彼女にしては後先を考えない言動ですね」

 学校の友人くらいならば誤魔化せるだろうが、もし家族の耳に入れば言い訳は出来なくなる。由宇斗と交際をしているのは嘘ではないが、元の世界では一度も直接顔を合わせたことはない。どこで知り合ったのかと聞かれても答えようがないのだ。賢い彼女がそんな迂闊な真似をするとは考えにくい。

「もしかしたら、オレもどこかおかしくなってるのかもしれない」

 由宇斗と将子の変化に気付いた時、諒真りょうまは真っ先に『自分も何か変わったのでは』と疑った。
 英雄だなんだと持て囃されて調子に乗ったつもりはないが、数ヶ月の間に人生観が変わるほどの経験をした。そのせいで若いふたりは感情や衝動を抑えられなくなっているのではないか。そして、自分も。

「諒真くんは最初に会った時から変わりませんよ。お人好しで優しいままです」
「そ、そうか?」
「ええ。僕が保証しますよ」

 穏やかに微笑みながらキッパリと言い切る創吾そうごに、諒真は胸がきゅうと締め付けられるような感覚を覚えた。抱えていた不安が今の言葉で薄れ、心が少し軽くなる。

「僕はどうです?何か変化はありますか」
「創吾も変わらないよ。優しくて、いちばん頼りになる男だ」
「わあ、照れますね」

 照れ隠しで小突き合っているうちに、先頭を歩いていたラミエナが立ち止まった。

「皆さま、ここから地下に入ります。階段はないので、足元に注意しながら降りてください」

 目的の『呪いの核』は地下にあるが、魔王城の階段はほぼ機能しておらず、瓦礫の山と化している。

「前回調査に来た時は辛うじて通れたのですが、あれから更に崩れておりますな」
「地下の空間が埋まってないといいですね」

 身軽なラミエナと由宇斗、将子は不安定な足場も気にせずどんどん降りて行く。体格の良いハルクとイルダートはどうしたものかと躊躇している。魔王城は天井が高く、一階ぶん降りるにも十メートルほどの落差がある。もし足を踏み外せば大怪我は免れない。

「オレの飛翔魔法で下まで運ぶよ」

 諒真が残ったメンバーに対し順番に魔法を掛けていくが、創吾は辞退した。

「諒真くん、僕には必要ありません」
「大丈夫か創吾」
「これくらい平気ですよ」

 そう言って彼は足元に防御盾を生み出した。平面部を上に向けた状態で固定された盾に乗り、少し下がった場所にまた盾を作る。それの繰り返しで、あっという間に階下へと降りた。

 ハルクとイルダート、リエロと共に諒真は飛翔魔法で降りる。魔法で身体が浮く感覚に慣れず着地でよろめくリエロに、諒真が咄嗟に手を差し伸べて身体を支えてやった。

「あ、ありがとうございます」
「お礼なんかいらないって」

 屈託なく笑う諒真越しに見える創吾の姿に、リエロはビクッと身体を揺らした。彼の表情はいつもの穏やかな笑顔だというのに、何故か背筋に冷たいものが走る。

「顔色が悪いですよリエロくん。大丈夫ですか?」
「い、いえ、大丈夫です」

 気遣うような優しい言葉さえ恐ろしく感じられて、リエロは額に浮かんだ脂汗を手の甲で拭った。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。

夏笆(なつは)
BL
 公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。  ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。  そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。  初めての発情期を迎えようかという年齢になった。  これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。  しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。  男性しか存在しない、オメガバースの世界です。     改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。 ※蔑視する内容を含みます。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

処理中です...