【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

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本編

第9話:手掛かりを求めて

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 始業時間を待ち、謙太けんたは会社に電話して休みを申し出た。直属の上司からはかなり渋られたが、嫁の急病だと押し切って三日間の休みをもぎ取った。週末も合わせ、五日間の猶予を得たことになる。
 これまで有休をほとんど使ってこなかったので、当日申請ではあるが有休扱いにしてもらえた。

「……はぁ~、意外と取れるもんだな休み」

 今まで謙太は自分都合で休みを取ったことがないらしい。フリーランスの龍之介りゅうのすけには理解できないが、いわゆる社畜と呼ばれる人種なのだろう。

「朝メシ、トーストでいい?」
「うん。陽色ひいろも食べれそうなら何かあげたいけど」
「パン食うかな?」

 食パンを細切りにして差し出すと、陽色は自分で掴んで口に入れた。

「お、食うぞ」
「……いや、よく見てろ」

 しばらくして、陽色はペッと白いかたまりを吐き出した。食パンを飲み込まず、そのまま口の中でボール状にまとめたのだ。皿の上に出されたボールを見て得意げな表情をしている。

「…………まじか」
「まだ早かったみたいだな」

 とりあえずまたミルクを飲ませておいた。

 明け方からずっと遊び相手をしたからか、陽色は龍之介を警戒しなくなった。それでも、時々母親の姿を探すようにキョロキョロと部屋の中を見回している。

「ケンタは何とかして寧花ねいかさんに連絡取れよ」
「でもオレ、着信拒否されてる……」
「うーん……俺のスマホから連絡しても、おまえに頼まれたってバレバレだよな」
「ママ友とかいないかな」

 謙太は寧花の交友関係を全く把握していない。どうしたものかと悩んでいると、昨晩見つけた子育て雑誌の存在を思い出した。パラ見した記事の中にヒントになりそうなものがあったからだ。

「寧花さん、育児サークルとかに参加していたかもしれない」
「え、何それ」
「市の施設とか公民館とかでやってるんだよ平日の昼間に。子ども遊ばせたり、母親同士の交流や情報交換とか」
「ふーん」

 近所でやっている育児サークルをスマホで検索してみると、運良く今日開催予定のものを見つけた。

「ここで聞き込みだ。陽色連れて行ってこい」
「エッ、オレが!?」
「当たり前だろ。男ふたりで行ったら確実に浮くじゃねーか」
「男ひとりでも浮くに決まってんだろ!」
「おまえは父親だから問題ない」
「リュウが代わりに行ってくれよ。オレ子育ての話とか寧花の話とかどう振ればいいか……」

 涙目の謙太に懇願され、いつもなら大抵のワガママをきいてやる龍之介だったが、これだけは聞き入れない。

「駄目だ。おまえが行け」
「うう……」

 寧花に帰ってきてほしいのならば謙太が努力すべき。龍之介はそのスタンスを貫いている。
 だが、彼が育児サークルに行かない……行けない理由はそれだけではない。

「おまえが陽色とそっちに参加してる間、俺は一旦家に帰る」
「なんでだよ!」
「着替えとかノートPCとか取りに行くだけだ。俺にも仕事があるんだよ」

 請け負っていた案件は大体片付いているが、サポートや新規の依頼があるかもしれない。とりあえずPCさえあれば何とかなる。

「……帰ってくる?」
「ここ俺んちじゃないんだけど」
「合い鍵持ってって」
「この件終わったらすぐ返すからな」

 冷たく返され、謙太はまたしょんぼりと肩を落とした。
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