【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

文字の大きさ
10 / 86
本編

第10話:聞き込み開始

しおりを挟む


 マザーズバッグに必要なものを詰め込み、出掛ける支度をする。

「まず紙オムツだろ、おしり拭きだろ。使用済みオムツ入れるビニール袋。あと着替え二セット。腹減るかもしれないからミルク用のお湯を水筒に入れて……うーん、何か忘れてる気がする……あっ、母子手帳!」
「え、待って待って。既にカバンがパンパンなんだけど? 更に陽色ひいろ抱っこしていくんだろ? 総重量何キロだよ!」
「知らないのか。世の母親はみんな出掛ける時にこれくらい持ってんだぞ」
「マジか……」

 龍之介りゅうのすけが用意した荷物を試しに持ってみて、謙太けんたは思わず天を仰いだ。中身が書類とタブレットPCのみの仕事用カバンとは比べ物にならない重さだったからだ。
 続けて抱っこ紐のベルトを調整して装着する。

「エッ、これどうやって外すの?」
「こことここの留め具を外せばいい。ちゃんと陽色の身体をもう片方の手で支えながらだぞ?」
「難易度高い……!」
「たしかに、慣れるまでは使いにくいかもしれん。育児サークルに着いたら係りの人に手伝ってもらえ」
「わ、わかった」

 なんとか支度を終え、一緒に部屋を出る。
 いつもより目線の高さが違うからか、陽色は抱っこ紐の中でキョロキョロと落ち着かない様子だった。エレベーターで下まで降り、マンションのエントランスを出る。

 平日の午前十時少し前。
 住宅街は人通りもまばらだ。

「じゃあ、俺は駅だからこっち行くわ。ケンタは市民館だからそっちな。頑張って聞き込みしてこいよ」
「……オレひとりで行くの?」
「陽色が一緒だろ。じゃあな」

 マンションを起点に別れ、龍之介は自宅へ、謙太は育児サークルの会場である市民館へと向かった。

 龍之介の手には先程謙太から渡された合い鍵がある。どこのゆるキャラかよく分からないキーホルダーがついたそれが何故かとても大事なものに思えて、駅に向かう道中何度もポケットの中で握りしめた。






 謙太は重い足取りで市民館へと向かっていた。
 平日の昼間である。
 普通なら成人男性はみな仕事をしている時間帯だ。それなのに、自分は私服で子どもを抱っこしている。道行く人全員からジロジロ見られているような気がして、謙太はずっと落ち着かなかった。

 徒歩十分ほどの場所に市民館はあった。
 選挙の投票をする時くらいしか足を踏み入れたことがない場所だ。謙太は恐る恐る自動扉をくぐり、内部へと入った。掲示板の『本日の利用状況』欄に目的の育児サークル名を発見し、ホッと息をつく。

 場所を確認してから会場に行くと、そこでは既に数組の親子が遊んでいた。
 入り口にいた受付係の年配女性に声を掛けると、陽色に見覚えがあったようで笑顔で出迎えられた。

「あらぁ、今日はパパが一緒なのね! 良かったわね、ひー君」
「えーと、オレは初めて来たんで色々教えてもらっていいですか」
「もちろん! あ、抱っこ紐外せる? 手伝うわね」

 人の良さそうな係員に助けられ、無事陽色を下ろすことが出来た。その後、利用者名簿に名前を記入する。

「妻はよくここに来てるんですか」
「ええ、毎週水曜に集まるんだけど、ひー君が生後四ヶ月くらいの頃から毎回来てくれてますよ」
「じゃあ、仲の良い人とか……」
「常連さんとは大体仲良しだけど、一番お話してたのは緒田おださんかしら。ほら、あの人」

 そう言って教えてもらったのは、陽色と同じ月齢の子どもを持つ母親だった。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

処理中です...