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本編
第12話:育児の極意
しおりを挟む弁当を食べた後、陽色のおかゆを用意する。と言っても、寧花が作っておいた冷凍ストックをレンジで解凍するだけ。小さい小鉢の底にこびりつく程度の量だ。
「こんなんで足りるのかな。他には?」
「良さげな材料が冷蔵庫になくてな。あとで買い物行くか」
おかゆを冷ましてから陽色に食べさせてやると、一応口には入れるがなかなか進まない。ほんの僅かな量を食べさせるのに結局三十分以上掛かってしまった。
その間、謙太は龍之介に育児サークルでの聞き込み結果を報告した。
「寧花さんは陽色の成長具合で悩んでたってこと?」
「うん。検査までしてたらしい」
「言われてみれば小柄だよな。でも、それ六ヶ月検診の話だろ? だいぶ前だよな。出てった理由とは関係なくないか?」
母子手帳を見れば、確かに六~七ヶ月児健康診査のページに『要検査』と赤字で記入されていた。陽色の身長体重が成長曲線のギリギリ下だったからだ。しかし、特に病気があったわけでもなく、『異常なし、要経過観察』と追記されている。その日付は一ヶ月以上前だ。
「……そうだよなあ。やっぱオレが何も手伝わなかったから見捨てられたのか……」
「後悔先に立たずだな」
「ウッ……」
聞き込みは無駄足に終わった。
だが、たった数時間とはいえ謙太は陽色を一人で面倒を見た。昨日までを思えば大きな進歩だ。
「この調子で良い父親になれよ。そうすりゃ寧花さんもきっと戻ってきてくれる」
「そ、そうだよな」
龍之介からの励ましに、謙太が笑顔を見せた。
──しかし。
「……でさぁ、さっき陽色のうんち交換したの俺なんだけど」
「だ、だって、背中にも足にもうんち付いてたし、どこから手ェ付けていいか分からんし」
「やかましい! とにかく綺麗になるまで拭きまくるしかねーんだよ。うんちまみれの服を手洗いしたのも俺だよな、ああ?」
「……すまん」
凄む龍之介の前で正座し、ひたすら頭を下げる謙太。
そう、彼は我が子のオムツ交換を全て龍之介に丸投げしたのだ。しかも大量にうんちが漏れて洋服まで汚している状態のものを、だ。
「次は絶対おまえが替えろよ」
「わ、わかった」
「よーし。じゃあ早速替えてこい」
そう言って龍之介が指差した先では、陽色が顔を真っ赤にして力んでいた。おしりからファンシーな音が聞こえてくる。
「エッ、嘘。さっきあんなに出したのに!」
「今度は漏れてないからラクだな? おい」
「あっ陽色暴れるな! リュウ足持って!」
「……仕方ねーな」
結局龍之介が手を貸し、謙太は苦戦しながらも我が子のオムツ交換【うんち】を無事終えた。
「意外と臭いよな」
「離乳食始まると臭くなるらしいぞ」
「なるほど」
リビングは再び換気のために窓が全開となった。
流石に弁当ばかりが続くのは良くないから、と午後は三人で近所のスーパーに出掛けて食材を購入した。
「リュウ、料理出来るの?」
「ずっと一人暮らしだからな」
「今日の晩メシなにー?」
「待て。自然な流れで俺に作らせようとするな。おまえもやるんだよ」
「インスタントラーメンしか作ったことない」
「……えっ……おまえ、大学ん時から結婚するまで一人暮らししてたよな???」
「野菜と卵は入れてたぞ」
「……そっか……」
帰宅後、龍之介はカボチャの煮物を作った。陽色には柔らかい部分を取り分け、スプーンで粗く潰して与えてみた。これは気に入ったようで、おかゆより食いつきが良かった。
「味、薄くね?」
「陽色の離乳食用に作ったからな。俺たちの分は後で調味料足すから。あとは適当に肉でも焼いて……って、つまみ食いすんな!!」
「いいじゃん味見味見」
夕食後、謙太は陽色を風呂場で洗った。龍之介が湯上がりの陽色を受け取って身体を拭いて保湿クリームを塗り、服を着せ、湯冷ましを飲ませたり綿棒で耳掃除をしたりしている間、謙太は悠々と湯船に浸かっていた。
───────────────
「子どもを風呂に入れる」ってのは
服を脱がせるとこから湯上がりの世話まで!
「風呂場で洗う」だけじゃないぞ!!(龍之介
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