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第8話:決意の朝
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*同居開始~最終話ラストに至る迄の物語*
翌朝、身動きが取れない体に違和感を覚えて龍之介は目を覚ました。既に日が高いようで、遮光カーテンの隙間からは太陽の光が射し込んでいる。寝返りを打とうとするが思うように動けない。
「……ん?」
そこでようやく自分を抱くようにして回されている腕の存在に気が付いた。横向きに寝ている龍之介を、後ろから謙太が抱き締める体勢となっている。
苦労して腕を退かし、上半身を起こした。
昨夜は飲み過ぎたようで、どうやって寝室に来たのか全く覚えていない。二日酔いのせいか軽く頭痛もする。謙太を起こさぬよう、そっとベッドから降りて寝室を出る。
散々飲み食いしたはずだが、リビングは綺麗に片付いていた。恐らく、先に潰れた龍之介の代わりに謙太が後片付けをしてくれたのだろう。使用済みグラスや皿もきちんと洗ってあった。
となると、龍之介をベッドまで運んだのも謙太だ。そのまま寝入ってしまったからあんな体勢だったのだ、と龍之介は納得した。
時刻は朝と言うより昼に近い。謙太が起きてきたら朝昼を兼ねて何か食べようと考える。
顔を洗い、着替えを取りに寝室に戻る。
まだ目を覚まさないのかと枕元に手をついて覗き込むと、伸びてきた腕に掴まれてベッドに引きずり込まれた。仰向けに倒れた龍之介に謙太が覆い被さる。
「おい、ケンタ──」
慌てて体を起こそうとする龍之介の上に、ぱたりと謙太が伸し掛かった。単に寝ボケていただけのようで、規則正しい寝息が聞こえてきた。肩口に乗っている顔を横目で見れば、安らかな寝顔が目に入った。
昨晩は後片付けをしてくれた訳だし、もうしばらく寝かせてやろうかと思ったが、これでは身動きが取れない。何より重い。
「退け」
容赦無くベッドから叩き落とす。
「……いってえ」
「寝相悪いんじゃねーの?」
「あ~、飲み過ぎたかなあ」
床に転がったままボヤく同居人を見下ろし、龍之介は意地の悪い笑みを浮かべた。
「寝癖ひどいぞ。顔洗ってこいよ」
「え、マジで」
バタバタと洗面所に駆けていく謙太を笑って見送る。寝室で一人になった途端、龍之介は自分の枕に顔を埋めた。
「…………びっくりした」
同居を始め、同じベッドで寝るようになって一ヶ月。ふざけてじゃれ合う以上の接触はなかった。酔って寝たのも昨夜が初めてではない。寝ボケていたとしても、今みたいに抱き着かれたりすることはなかった。
同居を始める前、謙太から婚姻届を差し出されていた。あれは一緒に暮らすための手段のひとつに過ぎないと思い、その時は笑い飛ばして有耶無耶にした。
『まだ離婚も成立してないくせに!』
そう言って一蹴したのだ。
しかし、昨日離婚は成立した。
──もし、あれが本気だったとしたら?
龍之介にとって、謙太は大切な親友である。
同じ布団で眠ることに抵抗はない。
互いの抱える複雑な事情も知っている。
加えて『一人では寝られない』という共通の悩みがある。
一緒に住むだけならば問題ないが、それにもし友情以上の感情が絡むとしたら話は別だ。
「このままじゃダメだ」
龍之介は謙太を切り離す決意を固めた。
翌朝、身動きが取れない体に違和感を覚えて龍之介は目を覚ました。既に日が高いようで、遮光カーテンの隙間からは太陽の光が射し込んでいる。寝返りを打とうとするが思うように動けない。
「……ん?」
そこでようやく自分を抱くようにして回されている腕の存在に気が付いた。横向きに寝ている龍之介を、後ろから謙太が抱き締める体勢となっている。
苦労して腕を退かし、上半身を起こした。
昨夜は飲み過ぎたようで、どうやって寝室に来たのか全く覚えていない。二日酔いのせいか軽く頭痛もする。謙太を起こさぬよう、そっとベッドから降りて寝室を出る。
散々飲み食いしたはずだが、リビングは綺麗に片付いていた。恐らく、先に潰れた龍之介の代わりに謙太が後片付けをしてくれたのだろう。使用済みグラスや皿もきちんと洗ってあった。
となると、龍之介をベッドまで運んだのも謙太だ。そのまま寝入ってしまったからあんな体勢だったのだ、と龍之介は納得した。
時刻は朝と言うより昼に近い。謙太が起きてきたら朝昼を兼ねて何か食べようと考える。
顔を洗い、着替えを取りに寝室に戻る。
まだ目を覚まさないのかと枕元に手をついて覗き込むと、伸びてきた腕に掴まれてベッドに引きずり込まれた。仰向けに倒れた龍之介に謙太が覆い被さる。
「おい、ケンタ──」
慌てて体を起こそうとする龍之介の上に、ぱたりと謙太が伸し掛かった。単に寝ボケていただけのようで、規則正しい寝息が聞こえてきた。肩口に乗っている顔を横目で見れば、安らかな寝顔が目に入った。
昨晩は後片付けをしてくれた訳だし、もうしばらく寝かせてやろうかと思ったが、これでは身動きが取れない。何より重い。
「退け」
容赦無くベッドから叩き落とす。
「……いってえ」
「寝相悪いんじゃねーの?」
「あ~、飲み過ぎたかなあ」
床に転がったままボヤく同居人を見下ろし、龍之介は意地の悪い笑みを浮かべた。
「寝癖ひどいぞ。顔洗ってこいよ」
「え、マジで」
バタバタと洗面所に駆けていく謙太を笑って見送る。寝室で一人になった途端、龍之介は自分の枕に顔を埋めた。
「…………びっくりした」
同居を始め、同じベッドで寝るようになって一ヶ月。ふざけてじゃれ合う以上の接触はなかった。酔って寝たのも昨夜が初めてではない。寝ボケていたとしても、今みたいに抱き着かれたりすることはなかった。
同居を始める前、謙太から婚姻届を差し出されていた。あれは一緒に暮らすための手段のひとつに過ぎないと思い、その時は笑い飛ばして有耶無耶にした。
『まだ離婚も成立してないくせに!』
そう言って一蹴したのだ。
しかし、昨日離婚は成立した。
──もし、あれが本気だったとしたら?
龍之介にとって、謙太は大切な親友である。
同じ布団で眠ることに抵抗はない。
互いの抱える複雑な事情も知っている。
加えて『一人では寝られない』という共通の悩みがある。
一緒に住むだけならば問題ないが、それにもし友情以上の感情が絡むとしたら話は別だ。
「このままじゃダメだ」
龍之介は謙太を切り離す決意を固めた。
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